もう「大人」な年齢になった、発達障害のわが子。息子の未来のために、母としてやめたこと・始めたこと【体験談】

2025.03.20 LIFE

息子が一人で生きる未来のために。我が子の手を放し、自らの人間関係を育むことを見守る日々

全幅の信頼をおける夫との再婚。それまで育んできた互いの家族間の交流はどのようなものなのか聞いてみると――その答えには、美佐子さんならではの「家族のカタチ」が滲み出ていました。

「実は、夫の親族には、息子を紹介していません。というのも、息子は人懐っこい特性があるから。私たちが旅立った後、息子が悪気なく過剰に夫側の親族を頼ってしまうかもしれない。だったら、新たな家族との関係性を育むのではなく、息子は息子で自らの関係性を作ってもらうことを大切にしたいと思いました」。

そういった考え方もあり、「息子には現在は一人暮らしをさせています」。

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「息子が40代になった今も、心配は尽きません。頻繁に食事を作りに行っていた時期もありました。でもね、きっと親が先にこの世から旅立つ以上、それを見据えていつか思い切らなきゃいけない。だから、口や手を出すことを、思い切って辞めたんです。

ある人から、『獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす――そんな気持ちも必要では』と言われたことがあります。『年齢的に大人なんだから、大人のように扱った方がいいですよ』とも。それで目が覚めましたね。

それでもやっぱり、今でも口を出してしまうことはありますよ(笑)。そういう時は『あら、お母さんついつい言い過ぎたわ、ごめんね』と伝えています。大人同士の付き合いを意識して切り替えているつもりです」。

 

 

大事にすべきは、「わかりやすい共通項」ではなく、「信頼」。丁寧に関係を育てていくことが、未来につながる

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1年前にわかった乳がんの治療を機に、現在は保育園での仕事を辞し、絵本作家として活動を始めたという美佐子さん。そんな節目に、OTONA SALONE読者へのメッセージを伺うと、特に困難を抱えるお子さんを育てる親御さんへの思いを語ってくれました。

「子どもって、あっという間に大きくなってしまうもの。当事者の方ならもう十分心を砕いて動いているとは思いますが、やはり早めにいろいろな支援を探しておくことは大切ですよね。

我が家の場合は、いつヘルパーさんに入ってもらうか、訪問看護師さんやデイサービスはどうするか……息子本人が調べて計画を立て、私に相談が来たときには耳を傾ける、という形ができつつあります。お子さんの状況によって方法や視点は様々でしょうけれど、子ども自身が周りと関われるのであれば、子どもの意志や状態を尊重してくれるところはどこなのか、親側の視点と共に、子ども本人と確認しながら関係を育てていけるといいのかな、って」。

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さらに、こんなことも。

「何より『信頼できる相手』を見つけ、大切にしてほしいとも思いますね。

昔、ショックだったことがありましてね。療育グループの親御さんたちに対して、私は仲間のような気持ちでいたのですが……お相手にとってはそうじゃなかったんですよね。たとえば警察を巻き込んで我が子を捜索することもあるような家庭の一方で、うちの息子は大学などにも進学した。相手からしたら「仲間?何言ってんの、全然違うでしょ」という見方をされていたことが最後にわかったんです。でもね、これは誰かが悪いとか、何かがいけないとか、そういう話ではなくて……障害がある同士でも、事情や捉え方は人それぞれで、冷静さは必要なんだと学びました」。

「苦労や辛かったことは山ほどあったし、なかなか良い出会いに恵まれない期間もあった」と振り返りつつ、美佐子さんは最後にこう語ってくれました。

「うまくいかない期間や経験を経て思うのは、わかりやすい『共通項』で結びつくのではなく、信頼できる相手との出会いに気づき、大切にすること。そして、その絆を将来に向けて育んでほしいということ。それを一つ一つ握りしめ、培ってきたのが、我が家の『家族のカタチ』なのかもしれませんね」。

 

 

【編集部より】

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【編集部より】

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