好きでもない男に色を売り続ける女郎に救いはあるのか? そして、吉原大門の外へ出た花魁の将来は【NHK大河『べらぼう』#10】
若造の夢とそれを肯定する年長者
蔦重(横浜流星)は市中の本屋から締め出され、吉原でも西村屋側につく人が出るという問題を抱えています。八方塞がりの蔦重の相談にのったのが源内(安田顕)と書物問屋の市兵衛(里見浩太郎)でした。

蔦重(横浜流星) 源内(安田顕) 市兵衛(里見浩太郎) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」10話(3月9日放送)より(C)NHK
市兵衛は蔦重が思うほど事は悪くないと伝えた上で、「ものはな 引いて見るっていうことは大事なんだよ」と助言をしていました。
また、源内は「もう やりてえことやったら?」と一言。“我が心のままに生きるきつさ”を蔦重に第5話では教え説いていましたが、彼の底力を信じているからこそ背中を押したのでしょう。
さらに、源内は「お前さんのやりたいことって何よ?」と、蔦重に問いかけます。蔦重はこの問いに目を輝かせながら、次のように答えていました。
「俺は 吉原を 昔のように江戸っ子が憧れるとこにしてえです[中略]そこにいる花魁なんてなぁ 男にとっちゃ 高嶺の花で だから すっげえ大事にされて そこにいる女郎たちにとっちゃあいい出会いに恵まれて つれえことよりも 楽しいことの方が多い 俺は 吉原を そんな場所にしてえです。で…… あいつを喜ばせてえ」
女郎は吉原に望んで来たわけではなく、店で“商品”として扱われ、好きでもない男に色を売り続ける日々…。とはいえ、この仕組みがあるからこそ、救われる家族や生きていける人がいるのも事実。また、いね(水野美紀)が話していたように、女郎にとって吉原は人生をガラリと変えられる可能性を秘めた場所でもあります。だからこそ、蔦重は女郎のために吉原を活性化しようと決意したのです。
そして、蔦重は同じ夢を抱いている“あいつ”、つまり瀬川(小芝風香)を喜ばせることを何よりも願っています。
江戸時代は身分がほぼ固定されていましたが、現代の日本は自分の生き方を自ら決められます。それでも、大きな夢を抱いている人、目をキラキラと輝かせてビジョンを語る人は多くないと見えます。
夢を抱ける若者が少ないのは源内や市兵衛のように、若造の“べらぼうな夢”を「いいじゃねえか」と肯定する年長者が少ないからかもしれません。
また、吉原の女郎屋の主人たちは蔦重に吉原を任せています(“仕事を丸投げしている”ともいえそうだが)。損を嫌う彼らが蔦重に吉原の運命を左右する重要なことを委ねるのは、蔦重を信頼しているから。

蔦重(横浜流星) 女郎屋の主人たち 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」10話(3月9日放送)より(C)NHK
不安が強ければ寝付けないものですし、”馬鹿みてえな夢”を見ることもできないでしょう。蔦重は家なし、親なしではあるものの、「馬鹿みてえな昼寝の夢」を見られる世界で生きてはいたといえるのかもしれません。
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