医師の夫が浮気して別居。「婚姻費用が振り込まれない!このままじゃ娘は私立小を退学に!?」夫から生活費を回収する方法とは【行政書士が解説】

ついに夫が離婚調整を申し立ててきた

そして別居2年目。夫の方から「離婚調停」を申し立ててきたので、話し合いの場は家庭裁判所へ。夫は何度となく「離婚して欲しい」と迫るのですが、美琴さんは「あのこと(不倫)を謝るまでは考えられない」と一蹴。そんな不毛なやり取りが2ヵ月に1度のペースで繰り返されたのです。

 

さらに4ヵ月前、振込は完全に止まってしまいました。美琴さんが何度、「お願いします」と頭を下げても、何の音沙汰もなし。夫からの返事はなく、口座に振り込まれる気配もありません。娘さんが通っている小学校は大学付属の私立。幼稚園のときに受験させたそうですが、毎年かかる学費はそれだけ高額。年間でおよそ150万円もかかりますが、生活費が止まった状態で納めるのは無理です。このままでは学費滞納で中途退学をせざるを得ません。美琴さんはどうしようもなくなり、筆者の事務所へ相談しに来たのです。

 

 

頼みの綱である「婚姻費用」。 決定額は必ず振り込まれるもの?

ところで夫の年収が2,000万円を超える場合、家庭裁判所が公表している算定表ではなく「新しい算定方式」(判例タイムズ1111号291頁)で婚姻費用の金額を計算します。計算方法は以下の通りですが、美琴さんいわく、夫の年収は少なくとも3,000万円を超えているとのこと。それをもとに筆者が計算したところ、婚姻費用は毎月61万円となりました。

 

  1. 算定方式における基礎年収(年収の0.4倍)を算出する。
  2. 大人は100、子どもは62とし、妻+子÷夫+妻+子の係数を算出。元夫の年収に係数を掛けると「妻子の生活費」になります。
  3. 妻子の生活費×夫の基礎年収÷夫の基礎年収+妻の基礎年収が妥当な養育費の金額です。

 

美琴さんは調停の場で必死に訴えました。「もし、せっかく幼稚園を受験し、合格したのに親の都合で公立の学校への転校を余儀なくされたら、娘はどうなるでしょうか? 今まで通い慣れた学校、仲良くなった先生や友達を失います。さらに転校先の学校で偏見の目で見られ、いじめに遭ったらどうするんですか?」と。

 

このように美琴さんは「娘のため」と言い続けたのですが、夫はうんともすんとも言わず、美琴さんの言い分を聞くばかり。特に反論がなかったので、美琴さんの言い値で決まったのです。具体的には裁判所で「夫は妻に婚姻費用として毎月61万円を払え」と書かれた調書が発行されたので、美琴さんは61万円が確実に振り込まれる。そう安心し切っていました。

 

この話を聞いたとき、筆者は「さすがに上手くいきすぎ」と怪しんだのですが、翌月に嫌な予感が的中しました。これで一件落着かと思いきや、裁判所で決まった金額にもかかわらず、夫は1円も振り込んでこなかったのです。どうすれば良いのでしょうか?

 

 

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