「腐れ縁」を断ち切れなかった独女の後悔【不倫の清算6】

2018.01.03 LOVE

正直、嘘にしか感じない。数年前にその話を聞いたとき答えると、「そうだよね」とF子は笑っていた。

いま、あのときの余裕はF子にはない。

彼と別れてからも、仕事に時間を費やしてきたF子は今も独身で過ごしている。収入は順調に上がってひとり暮らしを満喫できているが、彼氏のいない生活が何年も続いていた。

彼の「下心」はすぐにわかった。それには気づかないフリで約束し、いざ会ってみると彼は昔と少しも変わっていなかった。結婚についてノロケ話はされたが、すでに彼が妻に関心をなくしていることは、写真を見せられたときに明らかになった。

「結婚してからどんどん太っちゃって」

と彼は困ったような顔を作ってため息をついたが、スマホの画面にいる「妻」は確かに大柄な女性だった。F子は彼の好みがスレンダーな女性であることを知っている。だから昔自分に声をかけ、交際に至ったのだった。

「な、『友達』として、ダイエットのメニュー作りに協力しくれよ」

「元カノ」の自分に対してあっけらかんと「友達」という単語を持ち出してくることに、F子は抵抗を感じた。「そういうのって、お互いに了解を得てなるもんじゃないの」、と。だが、自分のスキルを利用して彼のほうから近づいてきたことには、優越感を覚えていた。

「完全に言い訳だよね、私とまた仲良くなるための。しかも既婚者だって最初にバラしておいて、不倫になったのはこっちの責任って思わせたいのがバレバレ」

その頃のF子は、元カレからのアプローチに興奮していた。太った妻に興味を失った彼は、好みの女性と付き合いたくなったのだろう。その相手に選ばれたことは、決して女性として喜べることではない。だが、

「結婚してからも忘れられない女性」

として彼の中に自分が残っていた事実が、男性との交際から離れていたF子の心を高揚させていた。

そしてこのときに「そうね、協力してあげる」と彼の術に飛び込んだことが、今のF子を大きく苦しめている。

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