バツイチ独身女がハマった「都合の良い不倫」のドロ沼【不倫の精算 7】
恋人が家族と幸福に過ごす時間をひたすら耐え、連絡を待ち続ける「不倫女性」。
どうして彼女たちは妻ある男を愛してしまったのか。
彼女たちは、幸福なのか。不幸なのか。
恋愛心理をただひたすら傾聴し続けたひろたかおりが迫る、「道ならぬ恋」の背景。
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「不倫で構わない」理由
— G子(43歳)は長い髪がよく似合う細身の女性で、仕事は派遣社員として大手企業の事務をしている。
「年齢より老けて見られるのが悩み」と言うが、それは彼女のまとう柔らかい雰囲気が俗に言う「癒やしキャラ」を思わせるせいだ。落ち着いた声色は、電話で話しているとどこの受付嬢だろうかと思うときがある。
高校生の娘がひとりいるが、文字通り目に入れても痛くないような可愛がりぶりで、派遣社員をしているのも「娘のために定時で家に帰りたいから」。若い頃に結婚に失敗してからずっと自分の両親と同居してきたのも、ひとえに娘に寂しい思いをさせたくないからだった。
G子の「彼」は既婚者だ。付き合いはもう5年を超える。
「今さら再婚とか考えられないしねぇ」
とよくG子は口にしたが、彼のほうは違っていた。
妻の浮気が発覚して以来ずっと冷めきった夫婦だという彼の側は、離婚してG子とやり直すことを考えていた。
その日、待ち合わせのカフェでG子から聞かされたのは、「彼がついに離婚届を奥さんに渡したって。私、どうしよう」という話だった。
G子は彼から再婚の申し込みを受けてもずっと断ってきていた。普通、不倫相手が配偶者と別れて自分を選んでくれるなら、それは喜ばしいことのはずだった。だが、G子の場合はあくまで不倫のまま関係を続けることを望んでいた。
彼のことは好きじゃないのか、と訊くといつも「ううん。好きよ」と言う。なら、どうして再婚を考えられないのかというと、それは「娘に申し訳ないから」だとG子は決まって返した。
前の夫から暴力を振るわれていた彼女は、そのせいで娘の心がひどく傷ついたことを今でも悔やんでいる。
「男を見る目がない私のせいで」娘にトラウマを負わせてしまったのに、再婚なんてするとまた苦しめることになる。だから娘が嫁ぐまでは自分の恋愛は優先しないことを、離婚して以来G子は誓っていた。
「じゃぁ、彼にもそう言って別れないと」と何度か言ったが、G子の答えは「言っているんだけど、聞いてくれない」といつも煮え切らないものだった。
だが、本当にそうなら彼が離婚を真剣に考えるだろうか。
自分が妻と別れたところで、G子の娘が独立しない限り自分たちに再婚の未来はない。それがわかっていてなお彼が離婚という精神的にも体力的にもきつい選択をしようとすることに、どこか違和感を覚えていた。
「あのね、実は私……」
G子が視線をテーブルに落としながら小さな声でつぶやいた。
「彼に嘘をついたの」