『べらぼう』に描かれる、人間の光と闇。悪徳高利貸し・鳥山検校の幸せをも願ってしまう、その理由とは【NHK大河『べらぼう』第13回】

2025.03.31 LIFE

鳥山検校は繊細すぎる男なのかもしれない

源内(安田顕)が「本屋ってなぁ 随分と人にツキを与えられる商いだと 俺ゃ 思うけどね」と口にすると、蔦重は「本が運んでくれる幸せにゃ俺も覚えがあります」と答えていました。

 

瀬似(小芝風花)と一緒に朝顔(愛希れいか)に本を読んでもらった思い出も、瀬似と一冊の本に未来を託した日々も、蔦重を形成する要素となっています。

 

しかし、今回は、蔦重と瀬似は本によって困難な状況に追い込まれることになりました。目が見えなくても、人の心を読む力に長ける鳥山検校(市原隼人)は、瀬似の心が自分にないことに気づきます。

 

瀬似(小芝風花) 鳥山検校(市原隼人)  大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」13話(3月30日放送)より(C)NHK

 

瀬似が蔦重と話すときと自分と話すときでは声色が違うことに気付き、彼女の心は自分ではなく、蔦重にあると考えたのです。瀬似がもつ本を調べさせ、これらの本はいずれも蔦重が携わったものであると知ると、自身の憶測に確信を得ました。

 

瀬似の本  大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」13話(3月30日放送)より(C)NHK

 

怒り狂った鳥山検校は蔦重を屋敷に呼び寄せ、彼が話す内容によっては命を奪うことを決めました。瀬似は激昂する鳥山検校に自分の胸の内を伝えます。

 

「重三は わっちにとって光でありんした。あの男がおるならば 吉原に売られたことも悪いことばかりではない。[中略]けんど…分かっておるのでござりんす。主さんこそ わっちを この世の誰より大事にしてくださるお方であることは…。人の心を察し過ぎる 主さんを わっちのいちいちが傷つけているということも!」

 

瀬似のこれらの言葉は本心と解釈してよいでしょう。瀬似は蔦重が最愛の人であるものの、鳥山検校が自分に抱く愛情をありがたく受け取っています。誰よりも愛し、大切に思ってくれる彼に好意を抱いているだけでなく、最愛の人ではないことに申し訳なさも感じています。

 

鳥山検校は経済的に成功したものの、暗い闇の中で一人孤独に生きている男です。彼のまわりには人が大勢いるけれど、雇われた人たちや彼の権威にぶら下がる人ばかり…。

 

鳥山検校は人の心を察するのに長けていますが、それは彼の繊細さゆえなのかもしれません。多くの人たちから恐れられている存在であるものの、彼こそが誰よりも他者に対して疑心暗鬼であり、人を恐れているようにも見えます。

 

暗闇の中で視覚以外の感覚を絶え間なく働かせて生きてきた鳥山検校にとって、瀬似は“光”でした。鳥山検校は悪徳な高利貸しですが、誰かを一途に愛し、その人の幸せを自身の喜びとする心をもつ男でもあります。

 

本作には鳥山検校の悪どさ、彼に搾取された人たちの苦しみが描かれています。しかし、筆者は鳥山検校の幸せをそれでも願っています。

 

老中・意次(渡辺謙)は検校の高利貸しを問題視し、座頭金の実情を明らかにするために動き出しました。

 

意次(渡辺謙)  大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」13話(3月30日放送)より(C)NHK

 

史実では鳥山検校は処罰の対象となり江戸を追放されたといわれていますが、本作ではどのように描かれるのでしょうか。

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