子どもが「学校に行きたくない」とき、親は「アシスタント」に。不登校を「人生ALL」で捉えることの大切さ

2025.05.11 LIFE

「点」ではなく、「人生全体」で考える。心にゆとりが生まれ、新しい選択肢が見えてくる。

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学校に前向きではない我が子を前にすると、「この判断を誤ると、何か大変な事態が起こるのでは?」といった「白か黒か」の極端な思考に陥りがち。そんなときは、「今日」から「人生全体」へと、視座を変えてみませんか?

家庭科の授業を1年間受けなくても、生きていけますよね。運動会に参加しなくても、人生が台無しになるわけではありません。前回お話した「学校に行かずに失われる経験や機会を、別の場所・機会で補填できるのであれば、今日休むのは大きな問題ではない」というのも、「人生全体」という視座で捉えているから浮かんでくる考え方です。

 

◀◀関連記事を読む  <<<前回記事の「親子の話し合い編」はこちらから

 

大人が未来を心配するのは、子どもよりも見通しがつくからこそ。だったら、その「見通し」を別の方向に活かせば、「人生全体をより良くするために、今本当に必要なのは何かな」と、学校の枠を取っ払って考えることもできるはずです。

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ちなみに、私はかつて中学校の講師として数学の授業を担当していましたが、クラスの40人中、授業の1時間でしっかり理解している印象の生徒は5人程度でした。この5人は、きっと学校に来なくても、自分で教科書を読めば理解できる子たちです。一方、練習問題などを繰り返して「なんとなく理解できているレベル」になるのが15人。「もっと練習が必要だ!」と思われる子が10~15人。残りの5~10人は、小学校や前の学年まで遡ってやり直す必要がある印象でした(地域差や、私の力量による部分もあるかもしれませんが……!)。

お伝えしたいのは、「学校に行っている子も、実はこんな感じ」という事実。もちろん、学校だからこそ享受できる経験やメリットはあります(関連記事「親子の話し合い編」参照)。その一方で、学校に行かなくて致命的に失われるものは、親御さんが心配するほど多くはないのかもしれません。

 

 

「うまくいっているなら、変えようとするな。うまくいかないなら、なにか違うことをせよ」

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ここまでお伝えした様々な考え方やヒントを参考に種をまいても、すぐ結果が見えず、大きな不安に苛まれる瞬間があるかもしれません。親が問いかけても、提案しても、子どもはつれない態度……なんて日もあるでしょう。

でも、「響いていない」「子どもが考えていない」わけではありません。ポーンとボールを投げられた瞬間、相手の心の中には、小さなアンテナが立ちます。ボールを投げたときは一見無反応だったけれど、思いもよらないタイミングで答えが投げ返されるかもしれません。あるいは、「答えはあるけれど、親には伝えない」場合もあるでしょう。
これまで何度もお話してきた通り、子どもの人生の責任は子ども自身が取るもの。親である私たちは、舞台監督でも脚本家でもありません。主役の子どもが、どんな答えを出すか、どう乗り切るかは、自由なんですよね。

みんなに合わせるのが苦手なら、合わせない人生を試してみてもいい。苦手なりに、ちょっと合わせてみてもいい。いずれにしてもうまくいけば自信がつくし、うまくいかなくても何か学びがあるでしょう。親はそんな試行錯誤を見守る「人生の実験アシスタント」だと考えてみませんか?

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そんな「人生の実験」を見守るみなさんに向けて、最後にご紹介したいのが、心理学の「解決志向アプローチ」で用いられている「3つのルール」です。

  • ルール1:うまくいっているなら、変えようとするな
  • ルール2:一度でもうまくいったなら、またそれをせよ
  • ルール3:うまくいかないなら、何か違うことをせよ

「学校に行かない!」というと大事件に思えますが、それはいわば「食べ放題で食べない選択」と限りなく似ています。体調や好みに合わせて量を調節したり、デザートだけを堪能したり……お腹がはちきれるまで堪能するのも、腹八分目で抑えるのも自由ですよね。どれも「今の気分・感情・価値観×過去の成功・失敗」を踏まえて行動をチューニングしながら、自分の権利をどう行使するかを考えているはずです。

同じように、「学校に行かないでうまくいっている」ならそのままでいい。良かれと思って試した方法の結果が「思っていたものと違った」なら、別の方法に切り替えればいい。絶対的な唯一解を目指すストイックな「原理主義」よりも、やってみてどうだったかという「実験主義」で我が子を見守ってみませんか?「アシスタント」として我が子を見守る親御さんを、今日も明日も、心から応援しています。

 

 

▶▶▶「不登校の答え合わせ」シリーズの記事はこちらから

 

 

《解説》

植木希恵(うえき・きえ)

不登校・発達障害専門個別学習指導 きらぼし学舎代表・公認心理師。カウンセリングルーム勤務や中学校の非常勤講師を経て、「不登校・発達障害傾向の子ども専門家庭教師」として独立。2014年、広島市で「きらぼし学舎」を開業。「心理カウンセリング✕学習」というスタイルで多くの生徒、保護者とセッションを20年以上続けている。2018年からは、母親に子育ての視点を提供する「お母さんのための心理学Web講座」を開講。「子どもの見方が変わった」「子どもへの接し方、言葉のかけ方が変わってきた」と評判を呼び、現在は毎期100人以上の受講生を誇る。2023年、自著「おうち学習サポート大全」(主婦の友社)を上梓。

 

 

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