いよいよ「天下取り」目前。ビジネスマンとして強気の蔦重、狂歌でまさかの赤っ恥!【NHK大河『べらぼう』第20回】
蔦重、狂歌の才は控えめか!?
蔦重と南畝の交流は、蔦重が南畝のもとに『菊寿草』のお礼に出向いたことをきっかけに始まります。史実における南畝は狂歌について大衆の中で楽しく読むことを信念としていましたが、本作における南畝も茶目っ気あふれる明るい性格で、楽しいことが好きなようです。

蔦重(横浜流星) 南畝(桐谷健太) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」20話(5月25日放送)より(C)NHK
蔦重は次郎兵衛(中村蒼)とともに狂歌の会に参加しました。想像していたよりもかしこまった雰囲気に包まれた会に恐縮したのも束の間。今回のお題は「鰻に寄する恋」というユーモアたっぷりのものでした。

南畝(桐谷健太) 元木網(ジェームス小野田) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」20話(5月25日放送)より(C)NHK
蔦重が詠んだのは次の歌でした。
「あ。あな鰻 あぁうまそうな蒲焼の 山芋とろとろこりゃうまそう」
蔦重の狂歌に対する評価は「歌にも何もなっておらぬではないか」といわれてしまうほどお粗末なもの。筆者は瀬川(小芝風花)への思いを鰻に重ねるのかと勘ぐってもいたのですが、蔦重は何事においても恋しき人と結びつけたり、1つのことをひたすら引きずったりする性格ではないようですね。
史実においても、蔦重は「蔦唐丸」という狂名を名のり、狂歌を詠んでいましたが、彼の作品はうまいとはいえなかったようです。狂歌集に選ばれることもあまりなかったよう…。面白いものが好きで、発想力がある蔦重は狂歌と相性がよさそうですが、狂歌はそう簡単なものでもないのでしょう。
ちなみに、狂歌とは、五・七・五・七・七の音で構成した諧謔形式の短歌です。ルールはあるものの、当時においては堅苦しいものではなく、皮肉や滑稽などを盛り込んだもの。
南畝は江戸時代における狂歌師として高い評価を得ていましたが、本作に出てきた鰻を題材にした狂歌を本当に詠んでいます。
「あなうなぎ いづくの山のいもと背を さかれて後に 身を焦がすとは」
上記の狂歌は、恋人同士が引き裂かれ、恋に身を焦がす様子を鰻が背をさかれて焼かれるのに見立てたものです。当時、鰻は庶民に親しみのある食べ物のひとつでしたが、鰻と恋人を重ね合わせる発想は独特で、興味深いですね。
私たちにとって、狂歌は「古めかしい」「難しそう」というイメージもありますが、江戸時代においては人びとがにぎやかに楽しむものでした。
参考資料
晋遊舎『100%ムックシリーズ 完全ガイドシリーズ398 蔦屋重三郎完全ガイド』晋遊舎、2024年
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