【酒井美紀さん(47歳)インタビュー】「迷いはまったくなかった」俳優としてのキャリアがありながら40代で厳しいオーディションに挑戦。その理由とは?
2022年に東京公演が開幕し、ロングラン上演中の話題の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』。2025年の新キャストとしてハーマイオニー・グレンジャー役を演じている俳優・酒井美紀さんにインタビューしました。オーディションから始まった挑戦を楽しむ日々のお話を通して、40代になってもなお酒井さんが軽やかに輝く秘訣を伺いました。
【関連記事/こちらも読まれています】
▶▶【酒井美紀さんインタビュー】41歳で大学院へ、43歳で不二家の社外取締役に。「おかげで骨密度がびっくりするほど高い」挑戦し続ける揺らがない体の秘訣は運動習慣と食事にあり!?
俳優としての原点は、舞台で味わった感動

写真提供:TBS/ホリプロ 撮影:渡部孝弘
――しばらくぶりの舞台となりますが、どんな感慨にひたりましたか?
「開幕の直前に舞台袖に立っていると、当日のお客様の雰囲気が伝わってきて、『今日も盛り上がりそうだね』なんて役者同士で共有するんです。毎回違う冒頭のLIVEならではの空気感がすごく好きです。
会場全体の空気が一つになって、『これから始まる』という静けさに包まれる。いざ音楽がバーン!と始まると、演じる私たちも高揚感に包まれて、自分が物語の入口にいるんだと実感します。
ハリー・ポッターの舞台は、一方的にお芝居を観ていただくというよりは、客席を含めて劇場全体を使った演出がふんだんに盛り込まれているので、よりお客様たちと一体になって作品を作り上げている感覚があります」
――酒井さんのキャリアの始まりも“舞台”だったそうですね。
「地元・静岡市制100周年の記念イベントとして、市内の小中学生の参加が募集されたんです。小学校で配られた応募用紙を持ち帰って、『やってみたい』と思い応募しました。
稽古は毎週日曜日と夏休みで、半年間みっちり本気で取り組みましたが、演出家は劇団四季出身の方で、悪役にはプロの俳優さんも入っていて、舞台は2000人規模のホール。とても本格的だったんです。そのときの感動が忘れられなくて、今でも強烈に覚えています」
オーディションで出会った“楽しい緊張感”

写真提供:TBS/ホリプロ 撮影:渡部孝弘
――本作はオーディションから参加されたとか。挑戦するに至った経緯や当時の心境は?
「もちろん緊張しましたが、大好きなハリー・ポッター作品に携われるチャンスなので迷いはまったくありませんでした。もう覚えていないほど何年ぶりかのオーディションでしたが、演出家さんがすごくいい空気を作ってくれたんです。
私が芝居をしている最中にも、笑ったり、声を出して反応してくださったりと、まるで観客のように観てくださる。『あ、楽しんでくれている』と分かると、こちらも自然と力が抜けたんですよね。
ムーブメント審査という、動きでお芝居を表現する審査があったのですが、それもまた楽しかったです。6人くらいのチームで振り付けをやって、和気あいあいとした雰囲気で。ずっと緊張はしていたけれど、最終的にはすごく楽しい時間を過ごせたな、と満ち足りた気持ちになったんです」
――酒井さんが演じるのは大人になったハーマイオニー。どのように役を解釈されたのでしょうか?
「まず、魔法大臣になった現在の姿に、『ハーマイオニー、さすがだな』って感動したんです。彼女は魔法使いの血筋ではないマグル(魔力を持たない人間)出身。マグル出身の魔法大臣は彼女で2人目で、偏見の強い魔法界でトップに立つのは相当な努力が必要だったはずです。
表には描かれていないけれど、彼女はきっと見えないところでたくさんの壁を乗り越えてきたんだろうなと。学生時代からとてつもない努力家だったので、まっすぐに自分の手で勝ち取って行ったんだろうな、でも弱い立場の人の気持ちはきっとわかるような気がする…とイメージを膨らませていきました。
演出家と話していても、『あなたが考えるハーマイオニーでいい』と言ってくれて。空白の部分をどう埋めるのか、私の中にある彼女像を丁寧に構築していきました」
舞台の裏で受け継がれる“知恵というバトン”

写真提供:TBS/ホリプロ 撮影:渡部孝弘
――現在、上演の真っ最中ですが、酒井さんの中で特に印象に残っている出来事は?
「これまでハーマイオニーを演じてきた先輩たちから受け継いだ“メモ”の存在が印象深いですね。舞台裏の動線って実はとても複雑なんです。大きなセットが動いたり、照明が落ちて目の前が真っ暗な中を移動をしなければならなかったり危険がいっぱい。
だから、どこで止まってどう動くか——。代々の先輩たちが細かくメモを書き残してくれているんです。舞台ではケガをしないことがとても重要なので、安全面の配慮も含めて。一つのメモにみなさんそれぞれの直筆で書き込まれていて、まるでバトンを受け取ってるような感覚になりました。
実際、あるシーンの後にすぐ袖に戻ると、大きなセットが移動しているので気をつけないとぶつかる恐れがあるんです。そのシーンには“ここで2秒待ってから動く”とメモがあったおかげでスムーズにすれ違うことができた。先輩がたの知恵が、今の私たちを守ってくれているんです」
――最後に、全世界で愛され続ける本作の見どころは?
「私自身は、“愛”がテーマになっている作品だと受け取りました。でも、愛というのは難しくて、思っているようには伝わらないものなんですよね。ハーマイオニーが娘との関係性を改めて見つめ直すようなシーンがあるんですけれど、大切にしているつもりだけど大失敗をしてしまう。
決して疎かにはしていないけれど、仕事にも一生懸命だし、歯車がうまく回っていかない不器用さも垣間見える。そういった人間らしい愛がいくつも散りばめられているので、ぜひ舞台を観て感じ取っていただけたらうれしいです」
【PROFILE】
酒井美紀/俳優
1978年2月21日生まれ、静岡県出身。1995年、岩井俊二監督の映画『Love Letter』俳優女デビューし、同年に日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。1996年のドラマ『白線流し』で脚光を浴び、数々の映画、ドラマ、舞台、CMなどに出演。俳優業以外では、2007年、国際NGOワールド・ビジョン・ジャパンの親善大使に就任。2019年、41歳で国際協力活動の知識を深めるために大学院に進学。42歳で株式会社不二家 社外取締役に抜擢されるなど幅広く活躍中。現在はハーマイオニー・グレンジャー役を務める舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』がTBS赤坂ACTシアターでロングラン公演中。インスタグラム : @mikisakai.mua
【INFORMATION】
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』
TBS赤坂ACTシアターにてロングラン上演中。

写真提供:TBS/ホリプロ 撮影:渡部孝弘
世界的に有名な小説「ハリー・ポッター」シリーズの作者であるJ.K.ローリングが、舞台のために書き下ろした8作目の物語。長年、自身の小説の舞台化の話を断ってきたJ.K.ローリングが「家族、愛、喪失をテーマに、小説の最終巻から19年後、父親になった37歳のハリー・ポッターとその息子・アルバスの関係を軸に描かれる新たなストーリーを舞台化する」という提案に初めて共感してスタートしたプロジェクトで、2016年のロンドン初演以降、世界中で大ヒットを記録。日本公演は2022年開幕以降、ロングラン上演中で、2026年1月末までの公演延長が正式決定。ハリー・ポッターの世界感にどっぷり浸れる圧倒的な舞台美術、演出、音楽、キャストの熱演で魔法を体感できるとあって、多くの観客を魅了し続けている。
公式サイトはこちらから
続きを読む
スポンサーリンク









