「俺はいつも本気」女遊びをやめない夫(44歳)と離婚。たった2年で養育費ストップ。「給料の差し押さえなんてまだ甘い!」サレ妻の覚悟とは?

今回は、多くの夫婦から相談を受ける行政書士、ファイナンシャルプランナーの露木幸彦が「離婚時の養育費」という問題に迫ります。

共同親権が導入されるのは2026年6月(予定)。新しい制度が開始されるまで残り1年ですが、未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、今までは夫と妻のどちらが親権を決めなければなりませんでした(民法819条。単独親権)。これはどちらかが親権を得る代わりに、どちらかが親権を失うという非情なルールでしたが、来年の今頃には様変わりします。具体的には共同親権(離婚しても夫と妻がどちらも親権を持ち、協力して子どもを育てていく)と単独親権のどちらかを選択できるようになります。

 

ところで単独親権の場合、非親権者は親権者に対して毎月、決まった金額の養育費を支払わなければなりません(民法766条)。一方、共同親権の場合、養育費はどうなるのでしょうか?例えば、妻が週に5日、夫が週に2日、子どもを預かるとして、金銭的な負担が大きいのは夫より妻です。そのため、夫が妻に養育費を支払うことに変わりはありません。

 

しかし、子どもの世話をする場合、食事を与えれば食費が、移動をすれば交通費が、遊びに行けば遊興費がかかります。また子どもが自宅内で過ごせば、毎月の電気代、ガス代、水道代等が増えます。そのため、夫が妻に支払うべき養育費から差し引くのが妥当でしょう。

 

この議論に参加できるのは、きちんと養育費を払う気がある夫だけです。逆に金(養育費)は出さないけれど、口(育児)は出すのは論外でしょう。

 

ところで昨年、国会で共同親権法案が審議されている際、同時に養育費の確保についても法改正すべきではないかという意見がありました。具体的には養育費の不払い者に対して罰則を科した方がいい、いったん国が養育費を立て替え、国が代わりに非親権者から養育費を立て替えるべきだなどですが、それもそのはず。半分以上の父親(元夫)は養育費を一度も支払ったことがないのが現実だからです。

 

統計(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)によると母子家庭のうち、養育費を現在も受け取っているのは28%、一度でも受け取ったことがあるのは14%しかいません。一方、一度も受け取ったことがないのは57%に達しています。

 

共同親権を導入するには少しでも養育費の支払率を向上させなければなりません。養育費なしで子どもを育てるのは金銭的に厳しいでしょう。そもそも養育費を払わないのは元夫が悪いのに、泣きを見るのは元妻だなんて不条理です。養育費をあきらめず、元夫に払わせるには、どうしたら良いのでしょうか?

 

今回の相談者・山崎由羅さん(40歳、美容師)も、離婚の危機をむかえた一人です。当時、夫は「ソロキャンプだから」と言い、車で出かけるのですが、行先はキャンプ場ではなく、女性宅だということが明らかになったのです。由羅さんは「遊びじゃない。俺はいつも本気だ!なんて…どの面さげて言うんだか!」と怒りを爆発させますが、由羅さん夫婦に何があったのでしょうか?養育費を確保するため、まず離婚後に十分な準備をし、そして離婚後に必要な対策を講じることが大事です。具体的に見ていきましょう。

 

<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)>

夫:山崎拓弥(44歳)→美容師(年収500万円)
妻:山崎由羅(40歳)→美容師(年収350万円) ☆今回の相談者
子:山崎綺羅(6歳)
夫の母:山崎節子(72歳)→年金生活

 

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また夫婦や子どもの年齢、離婚の原因、養育費の金額、元夫の転職や独立の経緯は各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

 

 

【行政書士がみた、夫婦問題と危機管理 #10】

 

 

GPSで明らかになった夫の嘘…

交際当時、由羅さんと夫は同じお店の美容師同士。由羅さんの妊娠をきっかけに結婚した「授かり婚」です。そのため、夫は由羅さんと結婚したという意識も、子どもの父親になったという意識も薄く、まるで独身時と変わらない自由な生活を送っていました。例えば、同じお店の後輩(女性)を口説いたり、フェイスブック(現・X)で高校時代の女性の旧友と再会したり、婚活アプリに「独身」として登録したり…ありとあらゆる手を使って女遊びを続けたのです。

 

由羅さんも「私だって、ただ指をくわえて見ていたわけじゃありません!」と振り返ります。例えば、夫が就寝中、スマホの画面と夫の親指を重ね合わせてロックを解除。LINEのメッセージや写真や動画、そしてフェイスブックのメッセンジャーなどを確認。夫のLINEから後輩の女性へメッセージを送り、アポをとり、「私が育休中に何やっているの!」と一喝。そして夫のフェイスブックから友達登録されていた旧友を削除。メッセンジャーの内容も消去したのです。さらに夫との不倫デートをSNSに投稿しているセフレの女性に対しては、SNSのコメント欄に「あなた、何をしているか分かっているの!」と書き込んだのです。

 

このように由羅さんは打つべき手を打ったのですが、筆者が「大丈夫でしたか?」と尋ねると首を横に振ります。夫が不在の食卓でのこと。子どもと一緒に二人で食事をしていたところ、突然、涙が止まらなくなり、ティッシュで顔を覆ったそう。子どもが「どうしたの?」と心配するのですが、由羅さんは「何でもない」と鼻声で嘘をつくしかありませんでした。

 

由羅さんが心身のバランスを崩すたびに、その不調は子どもに「伝染」するようでした。ショッピングモールで走り回って迷子になったり、突然、「*×#?+――――――!」と奇声を上げたり、6歳になったのにおねしょを繰り返したり。ほかにも様々な不調をきたすようになり、小児診療内科で診てもらったところ、「チック症ではないか」と診断されたそうです。子はかすがいと言います。子どものために父親が必要という一心で由羅さんは我慢に我慢を重ねてきたのです。

 

そんななか決定的な出来事が起こります。夫は休日、「ソロキャンプだから」と言い、車にキャンプ道具を積んで出かけたのですが、過去の経緯を考えると、夫の言う行先を信用することはできません。由羅さんも抜かりなく、車内にGPSを設置し、行先を特定したのです。翌日、車内のGPSを確認したところ、行先はキャンプ場ではなくホテルでした。

 

結局、由羅さんがどんな手を使って阻止しようとしても、不倫の証拠が雨後の竹の子のようにうじゃうじゃ湧いてくる始末。「私と主人が喧嘩しているのを子どもも見ています。あの子がチック症になったのは主人のせいだと思っています」と前置きした上で、「これ以上、子どもの調子が悪くならないように、もう離婚するしかありません」と覚悟を決めたようです。

 

由羅さんもさすがに堪忍袋の緒が切れ、夫を呼び出し、「今日という今日はもう許せない。離婚してください!」と切り出したのです。夫は相変わらず、「本気じゃない。遊びなんだから許して欲しい」としおらしい態度をとるのかと思いきや、「はいはい、お前はいつも正しいよ」と開き直ったのです。

 

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