独身男性との不倫におぼれる40代既婚女性の誤算【不倫の精算 12】

2018.01.31 LOVE

家庭では尊重してもらえない自分

産休後すぐに仕事に復帰したL子は、もともと仕事が好きだった。同じ会社員として働く夫の収入はあまり多いほうではなく、共働きは必須だったが、それでも「私が稼げばいいことじゃない」と笑い飛ばす力強さがL子にはあった。

ふたりの子どもにも愛情を注ぎ、一見家庭は上手くいっているように見えた。だが、

「私のほうが稼ぎがいいことが気に入らないのよ、うちの旦那。残業で遅くなっても『ご飯が出来てない』『洗濯を干してない』って文句ばっかり。少しは手伝ってもバチは当たらないのにね」

最初は仕事と家事を両立させるためにがんばっていたL子だったが、一向に協力する姿勢を見せない夫に次第に冷めていった。

子どもが小さいうちはまだ会話もあったが、小学校にあがる頃になると手のかかる部分が減り、夫は学校のこともL子に丸投げするようになった。

「こっちは家族を養うために一生懸命仕事してるのにさ、悔しかったら自分も稼げってね」

まるで男のような言い方で、L子は夫を切り捨てる。L子はひとりで朝ごはんの用意から子どもの学校の支度、晩ごはんの準備までこなし、対して夫は淡々と会社に行っては帰宅後寝室にこもってスマホをいじる日々を送っていた。

「離婚しないの?」

多くの友人が、彼女の体調や子どもたちのことを心配した。すると、

「するよ。あの子たちが大学に行ったらね。それまではあの人の稼ぎも必要だし、耐えるつもり」

きっぱりとした口調でL子は言い切り、事実今の結婚生活で夫がいかに協力的でないか、つまり夫婦関係が破綻している証拠をしっかり手帳に書き記していた。

そんな中で、独身者である部下の男性はL子にとって大きな癒やしだった。

あまり要領が良いほうではなく、仕事ではミスも目立つけど決して「悪い人じゃない」。親身に指導しているうちに情が湧き、退社後にふたりで飲みに行く機会が増えてからは、個人的な話もするようになった。

「ひとり暮らしでね、ある日彼の家で飲もうって話になって」

彼と寝た、と報告を受けたときには、L子はすっかり彼の部下というポジションを忘れていた。

自分の話をちゃんと聞いてくれて、また感謝もしてくれる。メイクや服を褒めてくれるし、ベッドでも情熱的に愛してくれる。

家庭では尊重されない自分が、彼にとっては大切な女性である、と自覚する瞬間が、L子から不倫への罪悪感を奪っていた。

彼とのデートの帰り、たまにこうしてL子から電話を受けることがあった。いつも機嫌よくふたりのことを「報告」してくる裏には、家に帰ればまた虚しい夫婦生活が待っていることからの逃避が垣間見えた。

少しでも、彼との幸せな情事の余韻に浸っていたい。そのためには、彼との時間を反芻させてくれる相手が、L子には必要だったのだ。

スポンサーリンク

スポンサーリンク