もしかして彼、既婚者かも…確認できない40代独女の孤独【不倫の精算 13】
「結婚している人だったらどうしよう」
— 待ち合わせの時間にいつものカフェに行くと、奥の席でM子(43歳)がスマホを片手に電話している姿が見えた。
飲み物を買う列に並んでその様子を見ていると、目を細めて笑う表情に曇りはなく、リラックスしているのが伝わる。
お待たせ、と彼女がいる席に着いたとき、ちょうど通話が終わったM子はスマホをテーブルに置くと
「あの人、お昼から有給取ったんだって。会ってくる」
と弾んだ声で言った。
バツイチで子どものいない彼女は、現在両親と暮らしながら大きなスーパーで正社員として働いていた。平日の休みに会うことが多かったが、最近の話題は一貫して「あの人」のことだった。
良かったね、と答える代わりに、まず
「大丈夫?」
と尋ねると、M子の目が一瞬泳ぐのがわかった。視線を外しながら「うん」と答えるが、組んだ手は力なくテーブルから膝へと落ちる。
ゆったりした淡いベージュのニット。浅いVラインからのぞく鎖骨に光るのは、彼から贈られたトップにダイヤモンドをあしらったネックレスだ。ボルドーのタイトなスカートにヒールを合わせた姿からは、彼と会う予定が入ることを予想していた内心が見える。きれいに巻かれた髪に見とれていると、
「やっぱり、直接訊くしかないのかな……」
とM子はため息をついた。
「それしかないと思うよ。不安なままじゃ楽しくないでしょ」
このやり取りも何度目だろうと思いながら答えると、
「もし結婚していたら、私どうすればいいんだろう」
M子は肩を落としてうなだれた。
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