鬱々とした世の中だからこそ、江戸の“家族”観を超えていく。蔦重とてい、そして母との再会が描く「本当の絆」とは?【NHK大河『べらぼう』第26回】

2025.07.08 LIFE

蔦重とつよの久々の再会 似た者同士の二人に思わずクスッ

つよ(高岡早紀) 三和(山口森広) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」26話(7月6日放送)より(C)NHK

 

本放送では、蔦重の母親・つよ(高岡早紀)が初登場しました。蔦重は自分の店で戯作者や絵師たちが食事を楽しんでいる様子を眺めていると、見慣れない顔に気付きます。しかも、この人物は「はあ~ おいしいねぇ! やっぱり 白い飯はいいねぇ!」と声を響かせ、目立っています。そばに偶然にも駆け寄ってきた燕十(加藤虎ノ介)に「あの人 誰?」と尋ねると、「髪結さんじゃねえのか?」との返事でした。

 

この後すぐ、蔦重はこの人物が母親であることに気付きました。もちろん、つよも蔦重を見て、自分の息子だとすぐに気付きます。長年にわたって離れていても、年を重ねて見た目が変わっていても、互いに気付けるのが親子ならではの絆です。

 

それでも、蔦重とつよの再会は感動的なものにはなりませんでした。蔦重は「てめえ!今更 何しに来やがったんだ!」と声を荒げ、つよを追い出そうとしました。つよを外に出す蔦重の表情はこれまでに見たことがないほど険しく、平常心を失っているようでした。一方、つよは蔦重に謝罪は一言もなく、「私のこと ずっと待ってたろ?」「あんた 鬼かい!?」と相手の感情を顧みないかのような言葉を投げかけていました。

 

蔦重の気持ちを落ち着かせたのはてい(橋本愛)でした。両親とはやくに死別したていは「僭越ではございますが、「孝行したい時に親はなし」と申します」と蔦重を説得し、姑にあたるつよに対してはあたたかく迎え入れていました。父から愛情を存分に注がれて育ったていだからこそ、蔦重に伝えられた言葉です。

 

今の蔦重にとってつよは「おっかさん」ではなく、「ババア」ですが、“蔦重はつよの息子だわ~!”と思うシーンがいくつもありました。蔦重は「(つよは)人の懐に入るの恐ろしく うまくねえですか?」とふじ(飯島直子)に同意を求めていましたが、視聴者の多くが“あたなもでしょ!”とツッコミを入れたはず。さらに、つよはビジネスにも長けており、客を無料の髪結いで店に誘い、結い直している間に品を売り込む手法を考え、息子の商売に早々と貢献していました。子どもにとって親と似ているのは必ずしもうれしいものではないものの、実の親子ゆえのかけがえのないつながりは良くも悪くも存在します。

 

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