オバサンでもいいじゃないという開き直りではなく、年を経たからこその価値を真に感じるその理由とは
女性の生と性の権利について考察を続けるライター、三浦ゆえさん。40代に入ってから機会を得てストリップに通うようになったと言います。そこで気づいたことを語った前編に続く後編です。
前編▶私たちが考える「スタイル抜群」の漠然とした像はいったい「何を基準に」しているのだろう?40代女性ライターがストリップに通って考え込んだこと
【私の更年期by三浦ゆえ】#4後
私の肉体は客を興奮させるためには存在しない、私が私たるためにある
なぜ女性がストリップを観るのか、とよく問われる。女性といってもひと括りにはできない。ショーとして十人十色の華やかなパフォーマンスを純粋に楽しむ人もいるだろう。熱心に“推し活”する人もいる。
だから、自分を主語にした回答しかできないが、それは「自分も、彼女たちと同じ肉体をもっているから」だと思う。その肉体が、目の間でこんなにも輝いていることが、ひるがえって私の栄養になる。
私が好きなのは、「自分の肉体を、自分のものにしている」と感じる踊り子さんだ。ダンスパフォーマンスの一挙手一投足に神経が行き届いていたり、どの客席から自分の肉体がどう見えるのもかまで計算していたり。演目ごとに課題があり、新しいことに挑戦し、日々のレッスンを経て自分のものにしてから、ステージで披露する。自分の肉体の主体は自分にあるのだと物語っている裸を、観る側は消費できない。「見せてもらっている」というぐらいの、ありがたい気持ちになる。
生理とか体重とか、知らないあいだに病気になっていた卵巣とか、私は人生の大半、自分の肉体の主体は自分ではないという感覚を持ちつづけてきた。自分の肉体なのに、ままならない。自分の肉体の主(あるじ)になれない。だから、自分の肉体を自分が支配して、意のままに動かしている姿を観ると、ある種の爽快感を覚える。
ただ誰にとってもままならないものがあって、それが年齢なのだと思う。
若さもエネルギーである一方、時を経た経験も等しくエネルギーとなる
私の肉体はもう若くないので、若い踊り子さんの肉体からのリフレクションは、強すぎて受け止めきれないことがある。自分の年齢が上がるほど、若さとは問答無用にまぶしいものだと感じるようになったが、ストリップ劇場ではそれを痛切に感じる。サングラスがないと直視できないんじゃないかと思うほど、まばゆい。
落ち着いて栄養摂取できるのが、年齢を重ねた踊り子さんたちである。
私が推している踊り子さんは、活動期間が長い人が多い。短い期間で引退する人も多いなか、20年を超える踊り子人生はそれだけで尊敬に値する。肉体的にも精神的にも、タフさが求められる仕事だ。
推し以外にもベテラン、レジェンドといわれる人たちを何人も見てきた。まったく年齢を感じさせない肉体の持ち主もいいる一方で、あきらかな加齢を感じる人もいる。胸まわりや腰まわり、肌や顔だって若いころと同じというわけにはいかない。そりゃそうだ、生身の肉体なのだから。同じ人を10年見ていれば、変化もわかる。「一緒に老いてきたね」と勝手に感慨を抱くこともある。
ただ、それは魅力がなくなるという意味ではない。ベテランの肉体には、色気がある。ストリップにおいて、パフォーマンスの巧拙と色気とは、必ずしも比例しない。若さと色気も、たびたび比例しない。肉体の見せ方、間のとり方、目線の使い方……年齢を重ね、場数を踏んできたからこその色気がある。人生の厚み=色気というと、陳腐な言い方だと思われるかもしれないが、そうとしか表現できないものがある。
私たちは生身の肉体で生きていて、老いない人は誰ひとりいない。年齢を重ねると、いろんなことがままならなくなる。病を抱え、それを公表しながら踊っている人もいる。でも、年を重ねてはじめてたどり着ける境地もある。ベテランの“いまの裸”も、表現しつづけている彼女らの勇姿(と、あえて言いたい)も、やはり私にはまぶしくて、たっぷりの栄養をもらう。
残念ながら、減りゆく劇場。いろいろな人が多様な表現をできる世の中であってほしい
惜しむらくは、いまストリップ劇場が全国的に減っていること。私が観はじめてからも、いくつもの劇場が閉館し、現在も諸事情により休館している劇場が複数ある。そうなると必然的に、ベテランの出演が減ってしまう。ストリップのよさである、年齢、体型、これまでの人生……多様な背景をもったパフォーマーがステージに立ちつづけるためには、それなりの劇場の数が必要なのだ。
これ以上、劇場がなくならないよう祈ると同時に、興味がある人いますぐにでも観に行って!と伝えたい。40、50代女性に「効く」ことを、私が約束しますから。
前編▶私たちが考える「スタイル抜群」の漠然とした像はいったい「何を基準に」しているのだろう?40代女性ライターがストリップに通って考え込んだこと
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