「呪いが呼ぶのは破滅か、それとも救いか」誰袖の悲しみの果てに見えた“江戸の笑い”と蔦重の原点【NHK大河『べらぼう』第29回】

2025.08.05 LIFE

蔦重は誰袖と意知の仇を黄表紙で打つ 

喜右衛門が意知を斬った佐野政言(矢本悠馬)に手拭の男が似ていると口にしたことがきっかけで、蔦重は本のアイデアを思いつきました。そこで、喜右衛門に政言について尋ねてみたところ、多くの姉を抱えて苦労している様子だったとのこと。さらに、真面目な人柄であったため、今回の事件を気の毒に思っていました。

 

蔦重は「気の毒じゃ 笑えねえですね…気の毒じゃなきゃ 笑えるってことか?」とひらめき、今回の黄表紙の主人公は政言を“裏返しにした”人物にしようと考えました。仇気屋艶次郎の誕生です。人びとの笑いを誘うため、この男は大金持ちの一人息子で、甘い汁しか吸ったことのないという設定にします。

歌麿(染谷将太) 蔦重(横浜流星) 政演(古川雄大) 南畝(桐谷健太) 喜三二(尾美としのり)大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」29話(8月3日放送)より(C)NHK

蔦重が艶次郎という主人公にどのような苦い汁を飲ませるか悩んでいると、政演は「そりゃ バカ旦那が どういう欲を持つかによるんじゃねえですかねぇ」と言います。「欲があって それが…ねぇ? しくじるから面白えわけでしょ?」と。

 

“政言の欲は何だったのだろう”という蔦重の疑問に対し、春町は命を懸けてでも家名をあげたかったと答え、女遊びが好きな喜三二は「俺ゃ 家名をあげるよりも浮名を流したいけどな」と答えました。

 

蔦重と政演は“浮名”にピンときます。そして、艶次郎がモテ男や色男と周りからもてはやされるために、数々のバカな言動を繰り返す筋書きに決まりました。

 

お金持ちで、世間知らずのおぼっちゃまが周囲から“モテ男”だと思われるために、涙ぐましい努力をするものの、世間から見向きもされない姿を描いた作品はくだらないけれど、おかしい。また、金持ちの息子は身近にはおらず、その実態を把握するのは難しいですが、”羨ましい”という気持ちを抱くことがあります。自分が羨望の眼差しを向けている人物がバカなことばかり考え、自分の利益のためにくだらない努力をし、失敗を繰り返していれば、いい気味とも思い、スカッとします。

 

艶次郎が主人公を務める『江戸生艶気樺焼』は蔦重が誰袖に読んで聞かせるかたちで、劇中劇として視聴者に披露されました。

蔦重(横浜流星) 誰袖(福原遥) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」29話(8月3日放送)より(C)NHK

艶次郎はモテることに憧れ、金はいくらかかってもいいからと浮名がたつ仕打ちを考えます。腕に堀った女の名を灸で消し、その上に新しい女の名を彫り、女たちに浮気な腕と思わせるため痛みに堪えます。

政演(古川雄大) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」29話(8月3日放送)より(C)NHK

政演(古川雄大) 春町(岡山天音) 喜三二(尾美としのり) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」29話(8月3日放送)より(C)NHK

また、近所の芸者を50両で雇い、女房にしてほしいと近所に聞こえるように大声で懇願させるものの、努力はむなしく、隣人さえも気に留めることはありませんでした。

 

誰袖がついに… 次ページ

スポンサーリンク

スポンサーリンク

スポンサーリンク