腹を切り、豆腐に頭をぶつけて死を選んだ戯作者。命がけで笑いを生み続けた江戸の出版現場の悲劇耕書堂開業以来の最大危機とは【NHK大河『べらぼう』第36話】

2025.09.23 LIFE

蔦重や彼のお抱えの作家たちが危機に瀕しているが…史実では?

最近の「べらぼう」では、蔦重が39~42歳頃のエピソードを基にした内容が描かれています。アラフォーと呼ばれる年齢層にあたるこの時期、蔦重に勢いはあったものの、出版統制令の下で厳しい状況に直面していました。

 

蔦重お抱えの作家の中には「手鎖」の罰を受けた者が何人も…

史実においても、蔦重や京伝らは本の出版により罰せられる可能性があることを覚悟しつつ、取り締まりの目をかいくぐる工夫を凝らして本の制作をしていました。次週、37話のタイトルは「地獄に京伝」ですが、蔦重お抱えの作家が去る中、京伝は蔦重の期待を背負うことになりそうです。史実でも、この頃、京伝は耕書堂の若きエースでした。彼は『仕懸文庫』『錦之浦』『娼妓絹籭』を人気絶頂期に出版。これらの作品は秩序を乱すと判断され、いずれも絶版になっただけでなく、蔦重は財産を半分ほど没収され、京伝は手鎖50日の処罰を受けることになりました。

 

京伝が受けた手鎖とは両手に手錠をかけられ、手錠を嵌めたまま生活を強いられる罰です。手鎖には「30日」「50日「100日」の3種類があり、京伝は二番目に重い罰を受けました。この期間においても自宅での生活が許されたものの、役人の監視の下に置かれます。30日と50日の場合は5日おき、100日の場合は1日おきに手鎖を外していないか役人が確認にやってきます。

 

当時において、手鎖は罰金を払えない者や微罪を犯した者に言い渡される罰でした。とはいえ、京伝の後、歌麿も手鎖の罰を受けましたが、彼にとってそのときのショックは大きかったようです。手鎖の処罰を受けてから2年ほど後にこの世を旅立っていますが、この罰で消耗したと考える識者もいます。

 

ちなみに、政治をテーマにしたものを書いた絵師の中には、江戸払い(=江戸から追放)、絶筆(=原稿の執筆を停止するよう命じられる)といった罰を受けた者もいました。

 

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