【サレ妻の「ローン負担ゼロ」交渉術】離婚後も持ち家に住み続けたい。でも、毎月の返済も頭金500万円も払いたくない!さぁ、どうする?
夫婦の共有財産、離婚するとどうなる?
ところで夫婦が結婚期間中に築いた財産は共有です(民法762条の1)。そして夫婦が離婚するとき、お互いに共有財産を分け合わなければなりません(民法768条)。自宅は結婚期間中に建てたので夫婦の共有財産です。現在、夫が10割の所有権を持っていますが、綾香さんは所有権を分けるように求めることも可能といえば可能です。
そこで筆者は綾香さんに2つの選択肢を用意しました。まず1つ目ですが、自宅の所有権を得ることです。これで自宅は正式に綾香さんの財産になりますが、一方で義父の言う「家を奪われた」という点については図星となります。
次に2つ目ですが、所有権は夫が10割を持ったまま、「妻子が居住すること」だけを認めてもらうことです。そうすれば自宅は夫の財産なので、義父の言う「家を奪った」ことにはなりません。居住の期間を息子さんが自立するまでに区切れば尚更です。
綾香さんはどちらを選んだのでしょうか?「私はこの家の権利が欲しいわけではありません。ただ、息子をこの家で育てたいだけなんです!」と答え、2つ目の選択肢を選んだのです。しかし、夫はまだ重箱の隅をつついてきました。「住宅ローンだけじゃなく、養育費も払えって言うのか?!」と食ってかかったそうです。
この場合、自宅は「妻子が住む」以外に選択肢はあるのでしょうか? 自宅は最寄りの駅から車で25分。徒歩で行ける距離ではありません。綾香さんが近所の不動産屋を訪ねたところ、駅から遠いという理由で買い手がつくか分からない、売り出しの価格は高くとも3,800万円だろうという見立てでした。現在、住宅ローンの残高は4,500万円なので、700万円の赤字。筆者は「不足分を現金で補填しない限り、売却することはできませんよ」と補足しました。
売却できないのなら、このまま所有し続けるしかありませんが、もし妻子が住まなかった場合、どうなるでしょうか?綾香さんが別の賃貸に住んだ場合、自分で家賃を負担しなければなりません。生活に余裕はないので当然、夫に対して息子さんの養育費を請求するでしょう。
参考までに家庭裁判所が公表している養育費算定表にお互いの年収を当てはめると、養育費は毎月5万円が妥当な金額です。一方、誰が自宅に住んでも住宅ローンの債務者は夫なので、夫が返済することに変わりはありません。
筆者は前もって「旦那さんは養育費に加え、住宅ローンも負担しなければならず、毎月の負担は13.5万円に達しますよ」と助言しました。そのことを踏まえた上で綾香さんは「私たちがお家に住んであげるのは、みんなのためなんだよ」と丸くおさめようとしたのです。
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