「その子らしさ」を尊重するために、小児患者サポートのプロが絶対に守っているたった2つのこと
「その子らしさ」を尊重するために。プロが意識する2つのポイント
―― その子らしくいられるために何をするか。日常でも忘れたくない視点ですね。「その子らしさ」を尊重するために、天野さんが日頃から心がけていることはありますか?
「絶対に否定しないこと」ですね。「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれませんが、私はCLSになった1年目に、実体験をもって深く心に刻み込みました。
―― 一体どんな体験が?
実は、本作の第3話で、そのエピソードが登場するんですよ。
パパが大好きだった6歳の女の子が、入院中のあるタイミングから「パパきらい!あっち行って!」と父親を拒絶し始めました。原因がなかなかわからず、お父さんや周囲の大人は戸惑いばかりで……ところが、私が彼女と遊んでいる最中に、急にパパと遊ぶのを避けるようになった理由が判明したんです。
詳細は本作をご覧いただくとして……その謎が解けた瞬間、「子どもには子どもなりの理由がちゃんとあって、行動を選んでいるんだ!それがきちんと分かるまでは、否定も肯定もしちゃいけない!!」と思わされましたね。それはそれは強烈なインパクトでした。あれから13年経つ今も、彼女とのあの出来事が、私のCLSとしてのあり方の土台になっています。
だから、何をどう言われても、絶対に否定しない。勝手な推測もしない。すぐに納得できないことを言われたとしても、「へぇ~、そっかぁ」と一度受け止め、心の声を拾いあげるように心がけています。
―― シンプルでありながら、難しいことですよね。
そうなんです。しかも思いがうまく言葉にできないこともありますからね。だから、同時に非言語の部分も、実はかなり細かく観察していますよ。これが2つめに心がけていることです。
―― 具体的にはどんな点を?
たとえば、姿勢や視線の動き、顔の上げ下げ……。
こちらが話をしようとしても、ゲームやスマホから目をそらさず、なかなか話に乗ってこない子もいるんですよね。そういう時、私が勝手におしゃべりを続けてみたり、先に親御さんと話したりしていると、ゲーム機を握っていた手から、ふっと力が抜ける瞬間があるんです。そうすると、「あ、これについて気になっているんだな」とか、「ちょっと話してもいいモードに切り替わったかな」とわかる。
大人はつい言葉にばかり頼って、「何も話してくれない」「ちゃんと聞いてるのかしら?」と思いがちです。でも、その子が何に悩み、何を大切にしているかを理解するための材料は、意外と目の前にたくさんあるものなんですよね。
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天野香菜絵/埼玉県立小児医療センター チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)
2010年米国ルイジアナ州ルイジアナ工科大学チャイルド・ライフ学部卒。卒業後、ミズーリ州Children’s Mercy Hospitalにてインターンを経て、2012年より地方独立行政法人埼玉県立病院機構埼玉県立小児医療センターにてチャイルドライフプログラムの立ち上げ・運営を行い、現在に至る。
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