“生き残る者の天命”きよの死と蔦重の覚悟が問いかける「生きる理由」【NHK大河『べらぼう』第38回】

2025.10.07 LIFE

*TOP画像/歌麿(染谷将太) きよ(藤間爽子) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」38話(10月5日放送)より(C)NHK

 

吉原で生まれ育ち、江戸のメディア王に成り上がった蔦重の人生を描いた、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合)の第38話が10月5日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

 

ふわふわ生きられるのは受け入れてくれる人の存在あってこそ

人は厳しい縛りに耐え切れなくなると、心を解放したくなるもの。江戸において倹約による不景気から治安が乱れ、悪玉提灯(ちょうちん)を手に暴れまわる若者も出てきました。

江戸の若者 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」38話(10月5日放送)より(C)NHK

現代においても社会が不安定になると、街には鬱憤をつのらせた若者たちが溢れ、彼らの中には“悪”に通じる言葉に心惹かれ、モットーにする人もいますが、人間の言動は時代を問わずさして変わりません。

 

蔦重(横浜流星)は老中首座・定信(井上祐貴を)が定めるこうした世に苛立ち、春町(岡山天音)の自害のショックを引きずり、周囲にもきつく当たっています。

 

蔦重は上方の板元から出版された政演(古川雄大)の「心学早染草」を見ると、面白すぎる点や、“ふんどし”こと定信への抗いが戯け者として足りない点について厳しく問い詰めます。政演は「面白くなきゃ どのみち 黄表紙は先細りになっちまうよ!」と蔦重に強く出ていました。政演はふんどしに抗う蔦重に抗い、「蔦重さんとこでは 一切 書かねえっす!」と一蹴。

蔦重(横浜流星) 政演(古川雄大) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」38話(10月5日放送)より(C)NHK

政演の「俺ゃ ずっと ふらふら生きていてえんですよ 浮雲みてえに」という言葉に共感した視聴者は少なくないと思います。現代の日本は国民が一丸となって乗り越えなければならない問題が山積みではあるものの、「俺一人 雲一個くれえ なんとかなんじゃねえですかねぇ?」と思っている人は珍しくないはず。例えば、少子化についても(結婚出産は本人の意思にゆだねられることが前提であるが)“自分一人くらい結婚せず、好きなことして生きててもなんとかなるっしょ”と思ったり、働き手の不足についても“私くらいは食ってける程度にバイトでもなんとかなんじゃねえ”と思うものです。

蔦重(横浜流星) 政演(古川雄大) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」38話(10月5日放送)より(C)NHK

蔦重が「てめえが その生き方できたのは 先に その道を 生きてきたやつがいるから 周りが許してくれたからだろうが!」と政演を諭したように、自由気ままに生きられるのは先人の存在と周囲の寛容さがあるからこそです。

 

政演はこの言葉を言われた直後は心に響かなかったものの、最終的に蔦重の高い志に影響を受け、蔦重に協力することを決めていました。史実では、政演は黄表紙や洒落本を吟味(=ルールに反していないかチェック)をパスし、出版した結果、手鎖の処罰を受けることになりますが、この決断が政演にどう影響するのか懸念もあります。

 

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