「おまえのせいで家がめちゃくちゃだ」責任転嫁する夫。暴力の連鎖を止める“母の決断”とは
暴発と涙のあいだで揺れる子ども
いつも部屋にこもっていた息子が、久しぶりにリビングに顔を出した日、夫がまた怒鳴りました。
「お前の教育のせいで、この子はダメになった!」
その声がさらに荒くなった瞬間、夫の怒鳴り声よりも大きな声で、息子が叫びました。
「うるさい! お前なんか大っ嫌いだ!」
机を蹴り、コップを床に叩きつけたのです。それは父への反発というより、もうこれ以上自分を抑えられない“心の爆発”でした。やがて力が抜けるように座り込み、息子は小さく震える声でつぶやきました。
「……もう、いやだ」
Fさんはその背中を抱きしめながら、息子が“泣けないほどの怒りと悲しみ”を心の奥にため込んでいたことを知りました。
暴力のある家庭では、子どもが加害者と被害者の両方を演じてしまうことがあります。恐怖を支配するために、無意識のうちに加害者の行動を真似してしまうのです。怒鳴ることで恐怖を追い出し、そして直後に訪れる虚しさが、さらに心を削っていく。それは「怒り」ではなく、「助けて」という叫びなのです。
その夜、Fさんは思いました。
「この子を守れるのは、私しかいない」
翌朝、夫が出勤したあと、女性相談センターに電話をかけました。震える声で、やっと「家庭のことで相談したいことがあります」と伝えることができました。これまでの経緯を泣きながら話すと、電話の向こうの相談員が静かに言いました。
「よく頑張りました。あなたは悪くありません。」
その言葉で、Fさんは初めて孤独から解放されたのです。
暴力や暴言は、家族の心を壊します。怒鳴り声や沈黙が、尊厳を少しずつ奪っていきます。そしてその恐怖は、子どもへと確実に伝わります。
母親が安心できない家で、子どもが笑うことはできません。
暴力の連鎖は、止めることができます。誰かに話すこと。助けを求めること。その一歩が、支配の輪を断ち切るはじまりです。
Fさんは今、別居に向けて準備を進めています。息子もカウンセラーのもとで、少しずつ自分の気持ちを言葉にできるようになりました。
今、夫の暴力やモラハラで悩んでいる方へ。
どうか一人で抱え込まないでください。
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