絶望のふちで灯る“再生”の光。てい・蔦重・源内が動き出す! 写楽誕生へ向かう物語の転換点とは【NHK大河『べらぼう』第44回】

2025.11.18 LIFE

 「死を呼ぶ手袋」再び

蔦重が源内探しに奮闘していたある日、耕書堂の店先に誰かが置いた包みがありました。その中には源内が意次を助けるために書いた源内軒と七ツ星の物語の原稿が入っていました。さらに、原稿とともに「安徳寺にお越しあるべく候」と書かれた紙が添えられていたのです。

 

蔦重は源内との久々の再会に胸をふくらませ、安徳寺を訪れましたが、そこには松平定信(井上祐貴)や高岳(冨永愛)、長谷川平蔵宣以(中村隼人)といった想定外の顔ぶれが待ち受けていました。さらに、この場には徳川家基(奥智哉)を殺した“死を呼ぶ手袋”も。

高岳(冨永愛) 庄司(原田泰造) 蔦重(横浜流星) 平蔵宣以(中村隼人) 栗山(嶋田久作)  定信(井上祐貴) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」44話(11月16日放送)より(C)NHK

高岳が蔦重に話した内容によると、この手袋は高岳が意次に頼み、家基にわたったものです。しかし、高岳の手元にあったときには異変はなく、毒が仕込まれたのは家基に献上されるまでの間だといいます。高岳はこの事件の黒幕は大崎(映美くらら)とその背後にいる定信も追い落とした者だと語っていました。

高岳(冨永愛) 蔦重(横浜流星) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」44話(11月16日放送)より(C)NHK

定信らは自分たちも源内や家基を葬った者の手に傀儡(かいらい)とされ、もてあそばれていたことを認め、手を組んで仇を討つことに決めたのです。

 

前回の放送回では、老中首座の地位を自ら失うこととなり、涙を流していた定信でしたが、彼も絶望のどん底から這い上がっており、安心感を抱いたのは筆者だけではないはずです。厳しい政策により市井の人びとから疎ましがられていた定信ですが、彼は悪いやつではない…。むしろ、民の幸せを意次同様に願っていました。だからこそ、理不尽な思いをしても、自身の怒りや悲しみを不特定多数の者に向けることもなかったのです。

定信(井上祐貴) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」44話(11月16日放送)より(C)NHK

定信の台詞にあった「傀儡」ですが、この言葉には“あやつり人形” “転じて、人の手先となってその意のままに動く”といった意味があります(*1)。あやつり人形といえば、一橋治済(生田斗真)が思い浮かぶのは筆者だけではないはずです。治済が黒幕なのだろうか…。

 

*1 広辞苑 電子辞書第六版 岩波書店 参照

 

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