絶望のふちで灯る“再生”の光。てい・蔦重・源内が動き出す! 写楽誕生へ向かう物語の転換点とは【NHK大河『べらぼう』第44回】
歌麿の“恋心”が投影された絵
歌麿(染谷将太)と蔦重の関係にはヒビが入ったまま。二人の心のすれ違いを大文字屋市兵衛(伊藤淳史)のように“兄弟喧嘩”という人もいるけれど、歌麿がりつ(安達祐実)の問いに「長い間には いろいろとありまして」と重い口調で答えていたように一時的な感情のもつれではないようです。
ていは歌麿の想いに蔦重に少しでも応えてもらおうと、蔦重が歌麿から受け取った下絵を完成させ、売り出すことを提案します。蔦重は「けど ありゃ 絵も柄も 決められてねえ 絵だし」と後ろ向きで、ていの胸の内を察することも相変わらずありません。それでも、ていは「旦那様なら 歌さんが使いそうなお色 好む柄など 手に取るように お分かりになるのではないですか?」と、蔦重を説得します。
蔦重は歌麿の気持ちには鈍感ですが、歌麿の意図を汲み取り、彫師に的確な指示を出す姿からは歌麿の絵への深い理解がうかがえました。歌麿にとっては自分の心を理解してくれない一方で、ビジネスパートナーとしての抜群の相性もまたもどかしさを感じる要因なのかもしれません。

歌撰恋之部 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」44話(11月16日放送)より(C)NHK
ちょうど同じ頃、歌麿は蔦重や吉原の女郎屋の主人に誓ったように、彼なりの方法で吉原に恩を返していました。歌麿が本屋に接待させ、“座敷で派手に遊んだ順に仕事を受ける”と乱暴に言い放つ姿におどろいた視聴者は少なくないはずです。

歌麿(染谷将太) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」44話(11月16日放送)より(C)NHK
「紙花まくやつぁ いねえのかい!?」「まかないと 何年後になるか 分かんないよ!」
本屋の主人たちに紙花をまくよう促す姿には苛立ちと悲しみが滲み、かつてのほんわかとした雰囲気はもはや感じられません。多くの人から絵師として賞賛され、蔦重と距離を置いても、心に平穏が戻ったわけではないようです。
座敷が賑わう中、鶴屋の主人・喜右衛門(風間俊介)が姿を現しました。蔦重が完成させた絵「歌撰恋之部」を歌麿に手渡しましたが、歌麿はそれを受け取ってすぐ、破り捨ててしまいました。歌麿はこの絵を見て、何かに気付いたかのように表情を一瞬変えました。自分の名前が相変わらず、耕書堂の“下”であることに気付いたのか。蔦重が絵に託した想いを拒んだのです――蔦重に期待を繰り返し裏切られてきたように…。
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