はしか(麻しん)が流行中らしいけれど、40代はどうすればいいの?

4月中旬に入って、「はしか(麻しん)」という言葉をよく耳にします。現在局地的に流行していることは報道の通り。平成19・20年に10~20代を中心に流行しましたが、同様に今回のように海外から持ち込まれて感染する例はまだまだあります。いっけん子どもの病気という印象ですが、実は今回の流行でも感染者の大半は大人。いま40代は何を気をつければいいのでしょうか?

 

旅行の予定があるけれど、どうすれば…?

 

はしかは猛烈な感染力を持つ感染症です。感染すれば90%が発症、かつ発症すると「治癒を待つ」しかありません。医療の発展により1950年代の「流行のたびに数千人死亡」というような事態ではなくなりましたが、残念ながら現在でも死亡例はあり、また約30%は肺炎などの強い合併症を伴います。空気感染もするので、手洗い、マスクのみで予防はできません(症状の概要は厚生労働省「麻しんについて」をご覧ください)。

 

はしかのワクチンが予防接種法に基づく定期予防接種に導入されたのは1978年10月で、対象は幼児。ですので、私たち40代は「予防接種を受けたか受けてないか微妙」な世代でもあります。正直、明らかに感染した記憶のある人以外は自分がどのくらいリスクを負っているのかわからないのではないでしょうか? しかも報道では危険危険と言われますから、「GWの旅行の予定はキャンセルしたほうが?」という気分にもなりますが……。

 

 

「それはいささか過剰な反応です。ただし、唯一の確実な防御策はワクチン接種。ワクチンが品薄という話も聞きますが、完全に足りないというほとでもないので、まずは問い合わせてみてください。また、私たちのクリニックでは、子どもの定期接種用の混合ワクチンは確保しています」とみいクリニック代々木(東京都渋谷区)の三島果子先生。

 

 

「もともとワクチン製剤は子ども向け、大人向け、という物ではなく、子どもに接種するワクチン製剤と大人に接種するワクチン製剤は同一の物です。現在麻しんが流行しているため、おそらく急に麻しんのワクチン接種を希望される方が増え、麻しん単独ワクチンの供給が間に合わない状態になっているのではと思います。いっぽう、子どもは1歳で定期接種として風しん・麻しん混合ワクチン(MRワクチン)を接種しますので、MRワクチンについては定期的な需要があり、供給体制も安定しクリニックも常備しているというわけです」

よかった、ちょっといろいろ焦っていましたが、そんなに慌てることもないのですね。

 

「現在の40代、50代は定期接種が整備される途上の世代。逆に、麻しん・風しん(3日ばしか)ともに自然感染して抗体を獲得した人がかなりいます。とはいえ、GWに国内で感染が広がるリスクはあります。不安があるならワクチンを打っておくに越したことはありません」。

 

なるほど。念のためワクチンを打っておきたいという場合、どうすれば?

 

「国内外問わず、流行が明らかな地域に旅行するのであれば、打っておいたほうがいいでしょう。まずはかかりつけの医院に電話でワクチンの在庫を確認してください。一般には抗体検査をしてからワクチンを接種しますが、もう旅行が迫っているので急ぐという場合はそのように相談してください」。

 

ただし、抗体検査もワクチンもともに自費です。気になる費用ですが、医院ごとにまちまち。おおよその目安が、抗体検査5,000円、麻しん単独・風しん単独のワクチンがそれぞれ5,000円、2種混合のMRワクチンが10,000円前後です。

 

沖縄県では30‐39歳の感染がピークだった

クリックで拡大/沖縄県「麻しん(はしか)患者の発生について」より 2018年4月26日現在 最新情報は同サイトを確認のこと

 

沖縄県では今回の感染者のうち74名の「ワクチン接種歴」も公表していますが、「30‐39歳」の患者数が有意に多く、かつ20歳以上は「ワクチン接種歴 不明」が多数派です。40代は接種した記憶がなくても特に不思議はないのですね。また、1回接種での罹患者がいる点にも注目してください。一般に95%の人々は1回接種でも抗体を獲得できるものの、5%は2回目も必要とされています。現在の定期接種は2回が標準です。

 

こんな人はワクチン接種をしたほうが!

国立感染症研究所によれば、定期接種対象の子ども以外で「可能な限り早めの MR ワクチン接種が推奨される者」 は以下の通り。

 1 か月以内に海外旅行・国内旅行を予定している者

 (可能な限り 2 週間以上前に接種を済ませる。旅行直前に接種する場合は、接種後 5~14 日の体調変化に注意が必要)

医療関係者(救急隊員、事務職員等を含む)

 保育関係者

 教育関係者

 不特定多数の人と接触する職業に従事する人

 近隣で麻疹患者の発生が認められる、生後 6-11 か月児(緊急避難的な場合に限る)

 0 歳児の家族

 麻疹抗体価陰性あるいは低抗体価の妊婦の家族

 麻疹抗体価陰性あるいは低抗体価の麻疹含有ワクチン接種不適当者の家族

 2 歳以上第 2 期定期接種対象期間に至る前の幼児で、麻疹含有ワクチン未接種あるいは接種歴不明者

 小、中、高、大学、専門学校生等で、麻疹含有ワクチン未接種あるいは 1 回接種あるいは接種歴不明者

(国立感染症研究所「麻しん風しん混合(MR)ワクチン接種の考え方」 )

 

 

 

MRのもうひとつ「風しん」の予防接種は?

麻しんと同様に感染すると脅威となる風しん(3日ばしか)については、逗子市が掲載している「風しんワクチン接種歴の学年・年齢のめやす」が「私はワクチンを打ったのかしら?」の参考になります。40代に該当する部分を引用します。これより若い世代は上記リンクからサイトをご覧ください。

 

なお、風しんも麻しんも未接種なのでこの機会にMRワクチンをと希望する場合、風しんの抗体価が低い人で妊娠を希望する女性(おおむね49歳以下)にはMRワクチンの接種費用を助成する自治体も増えてきました。お住まいの自治体の例を「自治体名 風しん 助成」で検索してみてください。

 

昭和54年4月2日~昭和62年10月1日生まれの年齢

 平成5年(1993年)にMMR(麻しん・おたふく・風しん)ワクチンが中止され、未接種であった年齢です。平成7年(1995年)の予防接種法の改正により経過措置として、この年齢の人に対して平成15年(2003年)9月30日の間まで風しんの予防接種が実施されましたが、接種率は低いと言われています。

昭和54年4月1日以前に生まれた男性

 定期予防接種の機会はありませんでした。

昭和37年4月2日生まれ~昭和54年4月1日生まれの女性

 中学生時に学校で集団定期予防接種を行っていました。

昭和37年4月1日以前に生まれた女性

 定期予防接種の機会はなく、自然流行という形で免疫を獲得する時代でした。
今回の流行でたまたま感染しなかったとしても、次回がどうかはわかりません。気になる人はこの機会に接種をお勧めします!

国立感染症研究所 麻しんQ&A〔麻疹(ましん、はしか)について〕

国立感染症研究所 感染症情報センター 麻疹の現状と今後の麻疹対策について(平成14年)

 

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