「学校に行きたくない」と言い出せなかった不登校児の精一杯のSOS。学校と母への本音【2025年度ベスト記事セレクション】
オトナサローネでは、2025年もさまざまな記事を掲載してきました。その中から今回は特別に、「大反響だった記事」をピックアップ! 「不登校」をテーマにインタビュー取材をしているフリーライターの矢島美穂さんの連載のうち、登校への困難を抱えたことがある方々の経験を深掘りするシリーズをご紹介。不登校当事者が「あの頃」を辿って、当時の心境、今思うことを赤裸々に語る記事は大きな反響を得ました。(集計期間は2025年1月~12月まで。本記事の初公開2025年2月25日記事は取材時の状況です)
「空っぽのランドセル」――それは「行きたくない」と言えない私の精一杯の意思表示だった
「学校に行きたくない」――さゆりさんがはっきりそう思ったのは、小学校4年生の時。とあるクラス活動がきっかけでした。
「所属していた委員会で、各クラスで話し合っておくように言われた事柄があったんです。確か担任の先生は用事があって、『みんなで進めておいてね』と言い残して席を外しました。同じ委員だったクラスメイト2人と私で教壇に立って、会をスタートしたものの……クラスメイトは大騒ぎ。私はハキハキ発言する優等生タイプで、正義感も強かったので、『静かにしてくださ~い!』と、大きな声で何度も働きかけましたが、無視。『あいつ、うるせえな』という声も聞こえてきました。
でも、それより何よりショックだったのは、休み時間に仲良く遊ぶ友達が協力してくれなかったこと。逆の立場だったら、私はきっとみんなに話を聞くよう促したり、助け舟を出したりするのに、なんで?って」。
ところが、一緒に教壇に立った委員仲間は、そんな風景を前にしても、ケロリとした様子。
「『……ってことは、こんなことで傷つく私がおかしいのかな?』と思ってしまって誰かに相談もできず、一人でモヤモヤを抱えたんです」。
直後に2~3回巡ってきた同様の場で待っていたのは、いつも同じ展開。小さな傷が積み重なったさゆりさんの心は、息切れを起こしていました。
「憂鬱な会があるのが、木曜日。私は、一番傷つくその時間から、とにかく逃げたかった。だから、ある水曜日の夕方、『明日は学校に行かない』って決めたんです。でも、自分から親や先生には言えなくて……次の日の準備を何もせず、ランドセルを空っぽにしたまま、木曜日の朝を迎えることにしました」。
翌朝。一見普段と変わらぬ食卓で、朝食を取るさゆりさん。その脇で、ランドセルを何気なく手に取った母親が、その軽さに気づきます。
「『あれ?今日、ランドセル軽くない?』と、母から聞かれたんですよね。その時、やっと口にできたんです。『私、今日、学校に行きたくない……』って」。
30年近くの時を超えてもなお、声を震わせながら、あの朝を振り返るさゆりさん。孤独と葛藤を詰め込んだ空っぽのランドセルは、精一杯のSOSでした。
「親にしてみたら、『突然どうしたの?』『うちの子に限って……』という思いだったでしょうね。でも、私も含め、不登校の扉を開くお子さんの多くは、その一言を口にするまでに、とても時間がかかっているんじゃないかな。大人が想像する以上に、いろんなことを考えて、迷って、やっと口にしていると思う。それを、わかってあげてほしいです」。
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