下剋上に憧れる藤吉郎と踏みとどまる小一郎。嘘と覚悟のあいだで試される兄弟、第5話で描かれた「補佐役の真価」とは【NHK大河『豊臣兄弟!』5話】

2026.02.04 LIFE

信長との会談を終えた元康を、藤吉郎は国境まで送ることを信長に命じられます。信長から「サル」と呼ばれる藤吉郎に疑問を抱いた元康に対し、藤吉郎は「殿に飼われているサルにございますれば…。」「ウキ!いや はああっ!」とユーモアたっぷりに応じます。一方、小一郎(仲野太賀)はやや怯え、“この場でふざけるのは勘弁してくれよ”という心の声が表情にあらわれています。

信長(小栗旬) 元康(松下洸平) 小一郎(仲野太賀) 藤吉郎(池松壮亮)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟』5話(2月1日放送)より(C)NHK

人はチャンスが目の前にあっても、つかみきれなかったり、一歩を踏み出せなかったりするものです。しかし、藤吉郎は違います。

 

藤吉郎は「あの草むらに何やら人影が!」と元康を送る道中で叫び、ほかのお供の者たちを散らばらせ、元康と話す機会を得たのです。

 

藤吉郎は「ところで どうすれば 松平様のように お偉くなれますでしょうか?」と率直に尋ねました。

 

元康は「たやすいことよ。信長殿を信じることじゃ。 そして 誰にもできぬことを やってのけるのじゃ。恐れず 己を信じて突き進むのじゃ」と助言を送った上で、「大事なのは ここじゃ」「熱意が人を動かす 勝敗を決する」と言いながら、自分の胸を叩きます。藤吉郎にとってこれらの言葉は、人生を切り拓く大きな励みとなりました。

 

しかし、元康は藤吉郎と小一郎と別れてすぐ、重臣と声を合わせて笑い、「全て逆のことを言うてやったわ」「織田の下侍に 何で わしの考えを教えねばならんのじゃ」と一蹴。

 

小一郎も元康が兄に贈った言葉を「あんな言葉」と信じていない様子でしたが、筆者には元康が藤吉郎に贈った言葉がすべて“真逆”とは思えません。藤吉郎は自分が従っていた今川義元(大鶴義丹)を倒した信長側の人間ですが、藤吉郎の熱意に心を動かされ、いくらかは本心から言葉を贈ったようにも感じるのです。

 

藤吉郎VS利家

小牧山城に拠点を移した信長は、織田家中で御前試合を開催。この試合で藤吉郎が勝てるようにひそかに手をまわしたのが、小一郎でした。小一郎は試合に出る人たちの力量を踏まえて、組み合わせをつくり、藤吉郎が自分よりも弱い相手と対戦できるように手をまわしたのです。

 

藤吉郎は勝ち進み、最後の敵である“槍の又左” 前田利家(大東駿介)との対決に……。相手を軽々と打ち倒してきた藤吉郎ですが、利家を前にして手こずります。

利家(大東駿介) 藤吉郎(池松壮亮)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟』5話(2月1日放送)より(C)NHK

利家(大東駿介) 藤吉郎(池松壮亮)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟』5話(2月1日放送)より(C)NHK

藤吉郎は木刀(ぼっけん)を弾き飛ばされ、素手になると、「素手の相手に そこまでして勝って うれしいか?」「わしなら そんなまねはせん!」と挑発します。利家は納得し、「ならば 挙でしとめてやるわ」と木刀を捨てると、藤吉郎は素早くそれを拾い上げます。しかし、利家の力は圧倒的で、素手でも藤吉郎を「参った 参った 参った!」と即座に降参させました。

 

とも(宮澤エマ)とあさひ(倉沢杏菜)が「だまし討ちしといて 負けるなんて…ぶざま」と嘆くように、藤吉郎の姿は情けないものでした。しかし、この試合こそが、藤吉郎と小一郎を思わぬ道へと導くきっかけとなったのです。

 

次郎左衛門の妻を思う気持ちに胸が熱くなる

信長は藤吉郎と小一郎が組み合わせに細工したことを見抜き、「戦は 戦う前にして いかに勝つかが肝要じゃ」と高く評価します。二人の知恵を買って、美濃攻略のため鵜沼(うぬま)の調略を命じます。

 

信長軍が鵜沼で苦戦するのは、大沢次郎左衛門(松尾諭)の存在があるから……。彼は斎藤道三(麿赤兒)に見出され、素浪人から城主にまで上り詰めた人物です。

 

信長は次郎左衛門を自分の味方に付けるため、藤吉郎と小一郎にこの男を自分のもとに連れて来るよう命じました。この任務を成功させれば、小一郎は侍大将に昇格できると約束されます。

 

小一郎が考えた策は、城を出入りする者たちに“次郎左衛門が織田と通じている”という噂を広めることでした。一カ月後、斎藤龍興(濱田龍臣)は次郎左衛門を呼び出し、噂の真偽を問います。次郎左衛門は「天地神明に誓って 織田と通じていることなどございませぬ」と否定しますが、龍興はこれまでの意見の相違や道三の名を出したことを挙げて激怒します。そして、「そちの妻をこの城に連れてこい できなければ お前は改易じゃ」と脅しました。

篠(映美くらら)  次郎左衛門(松尾諭) 大河ドラマ『豊臣兄弟』5話(2月1日放送)より(C)NHK

次郎左衛門は我が家の行く末と妻・篠(映美くらら)の身を案じています。篠は夫のそんな思いを察し、心を寄せます。

 

野蛮で恐ろしい男という印象の強かった次郎左衛門ですが、篠と城を手に入れた喜び合う姿、妻を思いやる優しい姿、そして自分の才能を見抜いて取り立ててくれた道三への深い感謝の念を知ると、義理堅く人情味にあふれた人物だと分かります。彼に感情移入するにつれ、今置かれている状況があまりにも切なく、胸が締め付けられる思いです。

 

次郎左衛門が悩んでいる最中、藤吉郎と小一郎が訪れ、織田家に従うよう説得します。しかし次郎左衛門は首を縦には振りません。小一郎はそうした中で彼の迷いを察し、「一度かかった疑いを晴らすのは 並大抵のことではない。いや 待てよ。それなら いっそ 本当のことにしてしまうというのは どうでござるか? 『嘘から出た実』ということもありまする」と切り込みます。

 

説得の最中、小一郎の頼みで稲葉城下に噂を流した男が連行され、証拠の紙も出てきました。次郎左衛門は激怒し、小一郎を斬りつけようとしますが、藤吉郎が「責めはこのわしが負いまする」と弟をかばいます。

 

しかし、藤吉郎は“死にたくない”という本心に気づき、「わしは この大仕事をやり遂げて 侍大将になるのじゃ!」「侍大将になって 寧々殿と祝言を挙げるのじゃ!」「わしは 下から 這い上がらねばならん!わしのような者を信じて このお役目を与えてくださった信長様のご期待を裏切るわけにはいかぬのじゃ」と思いの丈をぶつけました。

 

次郎左衛門は藤吉郎に過去の自分を重ね、熱意に心を動かされ、信長のもとに出向く決意をします。一方、藤吉郎は主水(杉田雷麟)の疑いを晴らすため、次郎左衛門が信長のもとに行き、帰ってくるまで自分が人質として残ることを選びます。

 

ところが、信長の前で次郎左衛門が仕える意思を表明した直後、彼の従者の荷物から毒のついた刃物が見つかりました。次郎左衛門は容疑を否定しますが、信長は「(次郎左衛門を)始末せよ」と命じます。次郎左衛門が殺されれば、この男の城で帰りを待っている藤吉郎の命も危うくなります。

小一郎(仲野太賀) 次郎左衛門(松尾諭)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟』5話(2月1日放送)より(C)NHK

次郎左衛門と藤吉郎の運命が気になるところですが、次週の『豊臣兄弟!』は『衆院選開票速報2026』のためお休みです。

 

今回の歴史公証はこちら▶▶女性の人質は磔にされ、槍を口や体に差し込まれた。戦国時代の“約束破り”がまねく、恐ろしすぎる結末とは

 

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