「ご出席された」でいいの?丁寧すぎる日本語のNG
丁寧過ぎることを「馬鹿丁寧」と言いますが、時々出席する会議に、馬鹿丁寧に話をする方がいらっしゃいます。
「次の議題でございます。内容に関しましてはお手元の資料にございます通りでございます。検討事項に関しましては、先日の会議の際、決定させていただきましたように、こちらの方で進めさせていただきたいと思う次第でございますので、予めご承知起き下さいますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます」。
ずっとずっとそんな感じでして、むしろ本末転倒、会議の中身が頭に入ってきません。
すっきりした方がよほど良いことが分かります。
「次の議題です。内容に関してはお手元の資料にある通りです。検討事項に関しては、先日の会議の際決定したよう、こちらで進めますので、予めご承知おき下さい」。
でも実際、失礼のないように伝えようとすると、ひとつひとつの名詞や動詞を丁寧に言ったり、二重敬語や三重敬語になってしまいがちですよね。そんな時はどんな工夫をすると良いのか、今日はその秘訣についてお話しします。
1 「お」をつけるべき「最初の1つ」を見極める
例
お食事をお作りになってからお宅を出られたそうです。
この文章に出てくる名詞は、次の2つ
- お食事
- お宅
動詞部分は次の2つです。
- お作りになる
- 出られた
これ、全部敬語になっていますよね。
一旦元に戻します。というか、そもそも何と言いたかったのかに立ち戻るわけです。
- お食事→食事
- お宅→家
- お作りになる→作る
- 出られる→出る
最後の「出る」は「出発する」でも構いません。
さあ、シンプルになりました。
食事を作ってから家を出たそうです。
本当はこれで十分です。特に急いで用件を伝えなくてはならない場合はこの方が良いでしょう。
「到着、遅いですよね。」
「食事を作ってから家を出たそうです。」
さあ、これが例えば家を出たという相手が偉い方の場合は大変です。敬語を使わなくてはいけませんからね。
でも最初の文のように、すべての名詞、すべての動詞を敬語にすると馬鹿丁寧な言い方になってしまいます。
ではどうしたらよいかというと、最後に出てくる動詞、つまり結局その人が何をしたのか?という部分だけ敬語に直せば良いのです。この文章の場合は、「出たそうです」ですね。それを「出られたそうです」と敬語にします。あとの部分はそのままで構いません。
食事を作ってから家を出られたそうです。
どうでしょう? 内容がしっかりと、そしてスッと伝わりますし、敬語も最後にきちんと使っているので、全体の印象が良いですよね。
2 「ご」も同様に省略していく
同じように「ご」も省略できます。先ほどの例で覚えたことを、ちょっと試してみましょうか。
先生は、ご本のご出版をご記念されるパーティにご出席された。
この文章に出てくる名詞は、次の4つ
- 先生
- ご本
- ご出版
- ご記念
「先生」はそのままで敬語です。
「パーティ」は外来語なので、「お」や「ご」は付きません。たまに「おビール」「おパンツ」などと、外来語に「お」を付ける独特の世界もあります。
動詞部分は次の1つです。
- ご出席された
これ、全部敬語になっていますよね。
一旦元に戻します。というか、そもそも何と言いたかったのかに立ち戻るわけです。
- 先生→先生
- ご本→本
- ご出版→出版
- ご記念→記念
- ご出席された→出席した
気がついた人がいるかと思いますが、「ご出席された」は二重敬語です。
さあ、シンプルになりました。
先生は、本の出版を記念するパーティに出席した。
本当はこれで十分ですが、これを敬語表現にしてみます。先ほどの通り、最後の述語だけ、敬語にします。二重敬語ではなく、ただのシンプルな敬語です。
先生は、本の出版を記念するパーティに出席された。
どうでしょう?失礼な感じもしませんし、押しつけがましい印象も、馬鹿丁寧な印象もありませんね。
このように、色々盛らなくても大丈夫なのですよ。
3 場合によっては、むしろシンプルに
ここに、お名前とご住所とお電話番号をご記入なさってください。
カードの申し込み、銀行の手続きなどの際によく耳にする言葉です。接客業の方はよく口にする言葉なのではありませんか?
これも馬鹿丁寧な言い方をすると耳障りになります。
実はそれほど盛らなくても大丈夫だということが、過剰な「お」や「ご」を取り外してみると分かると思います。
特に、目的が相手を持ち上げることではなく、とにかく記入してもらうことですから、ここはグッとシンプルにいきましょう。
ここに、名前、住所、電話番号を記入してください。
さあ、ここで大切なのは、実は非言語情報です。文章力養成コーチの私が言うのも変ですが、書き言葉の中には込めにくい感情が、話し言葉では込めることができます。要は言い方ですね。言い方に「尊敬」の気持ちを込めることが大切です。
また「お手数ですが」のような枕詞も効果があります。それだけで相手への思いやりを感じますよね。
このように、シンプルに考えること、最後の述語だけ敬語表現にすることで、随分と文がスマートになります。女性にはぴったりの表現だと思います。
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