もしも「がんです」と言われたら、どんな病院に駆け込むべきか?40年以上がんと向き合ってきた医師が語る「少しでも理想に近い病院」の見分け方は
国内におけるがんの治療は日進月歩。医療費の高額化、治療の長期化、医療の地域偏差などさまざまな問題を依然として抱えているものの、かつての致命的な印象は薄まり、今や「治す」あるいは「共存しながら暮らしていく」病の一つになりました。
外科医・免疫研究者・漢方医、トリプルメジャー医である新見正則先生は、オックスフォード大留学を経て日本にセカンドオピニオンを導入。40年以上に渡るキャリアのすべてでがんに向き合い、がん根治を目指して外科から免疫、漢方と探求範囲を広げました。
そんな新見先生が「いまだから言える」がん治療とは? さまざまなご配慮が必要な勤務医には書けない「ここだから言える医師の本音」が満載の最新刊が『患者さんのためのがん治療ハンドブック どの病院、どの治療、どの医師、そして最も大切なものは?』(新興医学出版社)です。中でも「これは本当に言えなかっただろうな」というご意見をセレクト、再編集しお伝えします。この記事は3本中の1本目です。(1/2/3)
あってくれたらいちばんいいのは、「治療費が無料の病院」。そんなのないよ?と思いきや
治療費が無料の病院があれば理想的ですね。実は、なんとそんな病院が存在します。
セントジュード小児研究病院(St. Jude Children’s Research Hospital)は、アメリカのテネシー州メンフィスにあります。1962年の設立当時から今日に至るまで、世界中から「人種や信条を理由に拒むことなく」患者を受け入れています。治療費や食費は無料です。さらに患者には渡航費や滞在施設まで与えられます。
この病院は、レバノン系アメリカ人のコメディアンであるダニー・トーマス(D. Thomas)の努力によって設立されました。売れないコメディアンであった頃に、「もしも成功したら恩返しをする」と誓ったそうです。そして彼は大成功し、この病院を作りました。
トーマスはいろいろな人に寄付をお願いし、この病院がスタートしました。125人のスタッフで始まった病院は、今や数千人の職員が働き、年間の運営費は数百億円にのぼります。
上記はアメリカのお話ですが、アメリカでは病気になると破産する人が少なくありません。医療費がとんでもなく高額だからです。そのため、民間保険会社の医療保険で自分の医療費をカバーします。ですから病院側は、治療開始前に「どのランクの医療保険に入っているか」の確認が必要なのです。
その点、日本は国民皆保険制度です。「国民」と付いてはいるものの、日本に在住して保険料を納付している人すべてに適用されます(日本国民である必要はありません)。医療費の支払いは最大でも3割です。残りの7割以上は社会保障費から補填されます。その上、高額療養費制度があるため、平均的な収入の方の場合、1カ月あたりの支払い上限額は約10万円、収入が高い方でも数十万円に収まります。
そして日本では、子どもの医療費の負担額は2割ですが、その自己負担分を市区町村が補助している場合も多いです。実はセントジュード小児研究病院と同じように、医療費にはほとんどお金がかからない仕組みがこの国ではできあがっています。日本の医療提供体制は、費用負担の少なさと医療技術の水準の両面において、世界のトップレベルです。
技術も大切だけれど、前向きに治療に臨むには「いくらでも話を聞いてくれる病院」も必要です
日本では皆保険制度があるほかに、医療機関への「フリーアクセス制度」も敷かれています。誰でも希望すればどこの医療機関でも受診できるのです。そのため医療機関の外来は大変混雑しており、「日本の医療は3分診療だ」とも揶揄されます。これはある意味、フリーアクセスの欠点でもあります。話を聞いてほしい患者さんの立場に立てば、いくらでも話を聞いてくれる病院が理想に映りますね。
セカンドオピニオンは自費診療で行っている病院がほとんどですが、その場合は数万円を支払えば30分から60分の時間をとって十分に話を聞いてもらうことができます。しかし、保険診療の範囲内で、誰に対してもいくらでも話を聞ける体制を作るのは難しく、日本でそんな病院は私の知る限りありません。
先ほども述べたように、アメリカは医療費が高額です。私は免疫学の共同研究で、長くアトランタのエモリー大学の教授宅に滞在しました。実験の傍ら、時々は臓器移植のドナー摘出のお手伝いをし、教授の外来も見学しました。そこでは1人の診察に30分から1時間をかけていました。
つまり、迷ったり悩んだりしたときは医師に相談したい。「いつでも主治医に気軽に連絡できる病院」
患者さんやその家族が不安なときに、主治医に電話で連絡できれば安心ですね。しかし、病院単位で主治医といつでも連絡できる体制を作っているところを私は知りません。個人的に、主治医が携帯番号を記載した名刺を渡しているケースを数人知っている程度です。
これはあくまで個人的な配慮であり、病院のシステムとしては困難です。通常、病院は主治医個人ではなく、担当部署で対応する形を取ります。
もし、いつでも主治医に連絡できれば、外来で話すことはほとんどなくなります。困ったときに電話をすれば済むからです。私が院長を務める新見正則医院の患者さんは、みなさんいつでも私に電話連絡が可能になっています。私の携帯電話の番号を患者さんが知っているのです。
医師の言葉を信頼できるのか? 間違いなさそうなのは「偏差値の高い大学病院」かもしれないが
もし偏差値以外がまったく同じ大学病院があれば、多くの人は偏差値の高いほうを選ぶでしょう。大学の教員は、自分の業績を増やせる大学に移動します。研究資金が潤沢で、若い医師も研究や臨床にやりがいを感じ、英文論文も出しやすく、学会でも活躍しやすい……。こうした恵まれた環境に身を置きやすいのです。その移動の方向性のわかりやすい指標が、医学部の受験偏差値です。教員の多くは、この偏差値が高い方へと移動します。
(ここからは随時、「私ならこう言い訳する」と「でも実際は」をはさんでいきます。私が挙げた理想の条件を満たす病院ばかりではありません。いや、むしろ少ないのが現実でしょう。そのような病院に私が勤務しているとしたら、患者さんにどう伝えるかを考えたのが「私ならこう言い訳する」です。そして「でも実際は」のところに、私の本音があると受け取ってください)
【私ならこう言い訳する】
「偏差値が低いと言っても医学部ですから、問題ありません」
【でも実際は……】
偏差値が低い大学は開業医の子弟が多いため、開業を目指して多くの医師が退職します。対して偏差値が高い大学では、大学の医局や関連病院にずっと残る人が大半です(同じ大学病院でも、本院と分院で歴然とした差があるのですが……)。
もちろん比率の問題ですから、偏差値が低い大学病院にも素晴らしい人はいますし、偏差値が高い大学病院に相当変な人もいます。しかし、偏差値を基準に選べば、やはり高いほうが選ばれるのです。偏差値の低い大学では、臨床も学問もできず、論文もほとんどないような人がそれなりのポジションにいることも少なからずあります。これは偏差値の高い大学ではあり得ないことです。誰も口にはしませんが、医師なら誰もが思っていることです。
つづき>>>「残念ながらがんです」と言われたとき、病院は変えるべき?そのままにすべき? 医師が教える病院選びのポイント「気にしても意味のない項目」が意外すぎた
そんな「これまで医師が口にしてこなかった」本音・現実が満載の1冊
■新見正則先生
慶應義塾大学医学部卒業。卒業後、慶應大学病院外科に勤務。1993年より1998年までオックスフォード大学医学部博士課程。1998年オックスフォード大学博士課程学位(Doctor of Philosophy)取得。1998年より帝京大学外科。2002年より准教授。その後、帝京大学医学部博士課程移植免疫学、東洋医学、血管外科学の指導教授。2020年より新見正則医院院長。テレビ出演、講演のほか、著書多数。
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