『義母と娘のブルース』の綾瀬はるかに見た、バツイチ子持ち男性との可能性

2018.07.30 LIFE

仕事、結婚出産。私たちはこの3語にどれだけ振り回されきたか。実際、そのひとりではあるのですがすべて夏のせいにして避けているスナイパー小林です。

 

その結婚の形にバツイチ男性との再婚があります。もしかしたら結婚だけではなく、子連れということもあるかもしれません。いきなり知らない子どもの母になることをあなたは想像したことがあるでしょうか。そんなシチュエーションを再現するような夏ドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系・毎週火曜22時)が始まりました。

 

私は主演の綾瀬はるかじゃない。まあまあそう言いたい気持ちもわかります。でも主役を自分に憑依させろ、とまで大きな課題は申しませんので「あ、私、再婚もいいかもしれない」という、生き方の選択肢が増えるドラマだと思って見てほしいのです。その内容について追ってまいります。

 

『義母と娘のブルース』公式サイトより

 

実直にそして失敗を恐れない、新・専業主婦論

 

岩木亜希子(綾瀬)は光友金属株式会社の若き部長として働くスーパーキャリアウーマン。ところが小学生の娘・みゆき(横溝菜帆)を持つ宮本良一(竹野内豊)と結婚し、家庭の主婦であることに目覚めて退社。突然“義母”となった亜希子が進む、母親道とは……?

 

キャリアウーマンとは言っても、ビジネススーツに白シャツ、メガネにまとめ髪と真面目一辺倒で昇進を重ねてきた亜希子。でもそんな肩書きも小学生には通用しない。死んだママ(奥山佳恵)のこと忘れられるはずがないと、小学校3年生の構える牙城はとてつもなく硬く、そして高い。

 

愛した人には娘がいた、できればまとめて愛したい。そんな亜希子はビジネス理論を家庭に持ち込みはじめる。そこから亜希子劇場のスタート、そして彼女の愛情をつぶさに感じることができるこの作品の醍醐味だ。

 

「どうやら私は(みゆきちゃんに)嫌われてしまったようです。初手の5分で心を掴めなければ、そのプレゼンは失敗です。一度 引き上げ、アプローチを立て直します」

 

そして粗相があればすぐに土下座をして謝罪。小手先じみたことはせずに対等にみゆきと向き合おうと懸命に努力する亜希子を見ていると「ああ、親になることもいいかもしれない」という気分に。

 

母親になることがリスク、そんな胸糞悪い風潮がある現代。さらに血が繋がっていない親子像なんて考えてもいなかったけれど、血縁がないからこその可愛さもあるのではないかと気持ちが母親へとシフトアップ。私の母性が目覚めた。

 

出てくるだけで笑いを起こすような綾瀬はるかの演技もいい。ほんの少し前まで専業主婦を装いながら、むちゃくちゃ強かったスパイとは思えない変身ぶりだ。これが女優というものなのね。

 

と、視聴しているうちに自分のビジネススキルを振り返る。そんなに大したものでもないし、そもそも一生及第点であることが働く原動力になると思いながら、この原稿を書いている。それから明日辞めることになったとしても悔いはないように、日々全力を尽くすようにしている。念のため言っておくがいい子ちゃんぶっているわけではない。

 

亜希子もそんな気持ちになったのだろうか。キャリアを捨てることをものともせず、ストン、と専業主婦の道を選ぶ。

 

「別の世界で生きた経験は大変な武器になるということです。したがって、私は専業主婦の世界を知ることを新たな武器を得ることだと捉えております」

 

こういうことだよな、と腑に落ちた。もし今、先述の結婚、仕事、出産と迷っている人がいるのなら見て欲しい。新しい綾瀬はるかの道(演技)に必ずヒントがあると思うから。

 

「うちの娘はべらぼうに可愛いのです」このセリフ、言ってみたい

 

少しずつではあるけれど、亜希子とみゆきの距離が縮まっていくシーンもいい。この間まで根絶拒否をしていたのに「亜希子さん、亜希子さん」「ねえ(お菓子の箱を)開けていい?」「一緒におうち会の企画を考えるの!」と実の親子が自宅内で半径5メートル内を離れない様子と同じように心を開くようになる。

 

亜希子も

私の娘はべらぼうに可愛いのです。その笑顔には、少なく見積もっても1000万の価値があります。私が年に100回、彼女を笑わせれば10億になります。(社内に在籍して)それを棒に振れとおっしゃるなら、(年俸は)10億でお願いします」

と、いい意味で臆面もなく娘の愛を宣言。

 

ふと最近、ばったりと再会した先輩が不妊治療をあきらめて養子をもらったと話していたことを思い出した。まったく子どもにも興味のなさそうだった先輩が幸せそうに母親の顔、見たこともない優しげな表情を携えていた。亜希子もそのうち無表情の仮面を外して、笑顔を見せることがあるのかもしれない。

 

自分の子宮で育てた期間だけが母性を育むわけではないと教えてくれる『義母と娘のブルース』。気を抜いて見ていたらうっかり感激の嵐で大変なことになってしまった。さすが火10放送枠、女性の気持ちを捕まえるのがお見事。恐れ入ります。

 

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