「銭をよこせ」小一郎は直の死を乗り越えられるのか。彼を立ち上がらせた“500文の賭け”【NHK大河『豊臣兄弟!』9話】

2026.03.11 LIFE

*TOP画像/藤吉郎(池松壮亮) 小一郎(仲野太賀) 半兵衛(菅田将暉) 大河ドラマ『豊臣兄弟』9話(3月8日放送)より(C)NHK

 

戦国時代のど真ん中を舞台にした『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の主人公は仲野太賀が演じる豊臣秀長。兄弟の絆で“天下統一”という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描いた大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第9話が3月8日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

 

この世に残された者の苦しみ

本作の8話で、直(白石聖)は幼い女の子を守ろうとして、小一郎との祝言を前にしてこの世を去りました。

お墓と直が持っていた風車 大河ドラマ『豊臣兄弟』9話(3月8日放送)より(C)NHK

登場人物たちはそれぞれ直の死を悼み、悲しみに耐えています。ともの「このままじゃ あんたまで死んでしまうよ」という言葉と手つかずの食事が映し出されたシーンでは、小一郎(仲野太賀)が食欲を失い、寝込んでいるのかと思いきや、布団から出てきたのは弥助(上川周作)でした。

 

弥助は直を守れなかった自責に苛まれ、死んだ方がましと思うほど追い詰められていたのです。直の最期を目の前で見た彼の苦しみは痛ましい限りです。

 

一方、小一郎は直の死を受け入れたかのように振る舞い、猟師に扮して美濃へ。竹中半兵衛(菅田将暉)に織田信長(小栗旬)の仲間になってもらえるよう調略に向かいます。

 

小一郎が表面上は平静を保てているのは、兄・藤吉郎(池松壮亮)の気遣いのおかげでした。藤吉郎は弟に無理難題を押し付けて、直のことを考える暇を与えないようにしていたのです。

 

道中、藤吉郎が「無理難題を押しつけて 生きる張り合いを与えるのじゃ そんなことしかできぬ 情けない兄じゃ」と蜂須賀正勝(高橋努)に心境を明かすシーンは、とても切ないものでした。藤吉郎もまた無力な自分に弥助と同じように苦しんでいたことは、彼の不安げな表情からもうかがえました。

 

個性と聡明さが光る竹中半兵衛の登場

小一郎、藤吉郎、正勝が半兵衛の家を訪れると、戸を開けた瞬間に矢が飛んできました。なんと、半兵衛は戸口に罠を仕掛け、訪問者から身を護っていたのです。

 

半兵衛は理路整然とした話し方が特徴で、動きはテキパキしており、聡明さと器用さを一見しただけで察せます。また、家の中は本や紙類で埋め尽くされ、策略を練る日々を物語っています。

 

半兵衛は「幼き頃より病弱で 戦場に出ることはかなわず こうして考えることしかできなかったゆえ。侍としては使い物にならない半端者です。半兵衛の半は 半端者の半じゃ」と、謙遜しつつも、ユーモアを交えて自己紹介。

 

ちなみに、半兵衛が山奥で暮らしているのは、斎藤龍興(濱田龍臣)と亀裂し、蟄居(ちっきょ)を命じられたためです。

 

半兵衛は「戦場に出ることもないくせに策を練り そのとおりに事が運び 戦に勝つ。それが 何事にも代え難い喜びなのです」と語り、策士としてのやりがいもまた初対面の三人に明かしていました。

 

『三國志秒』に登場する軍師が「三たび 礼を尽くして 初めて誘いを受け入れまする」というように、半兵衛は自分に礼を3回尽くしてくれたら、信長の味方につく話を受け入れるとします。

 

小一郎らが半兵衛の頼みを聞き入れ、雉(きじ)を探していると、美濃三人衆の一派に捕らえられました。彼らが小一郎らを捕らえたのは、龍興の目を盗んで味方になる意向を伝えるためでした。

藤吉郎(池松壮亮) 小一郎(仲野太賀) 半兵衛(菅田将暉) 大河ドラマ『豊臣兄弟』9話(3月8日放送)より(C)NHK

藤吉郎(池松壮亮) 小一郎(仲野太賀) 半兵衛(菅田将暉) 大河ドラマ『豊臣兄弟』9話(3月8日放送)より(C)NHK

美濃三人衆の心を動かしたのは、藤吉郎の戦場での言葉でした。彼らも今の美濃の在り方に悩み、龍興が治めるこの国が、道三や義龍が目指した強く新しい国なのか疑問を抱いていたのです。そうした中で、藤吉郎の「織田信長様なら…。新たな面白き世を 必ずおつくりになると。斎藤龍興様には それができまするか」という問いかけが、心にずっしりと響きました。

 

人の心を動かしたのは、墨俣城が一夜にして現れたことでも、激しい攻防でもなく、言葉でした。侍はただ武器を振りまわしているだけでなく、それぞれが思いを胸に戦っているのです。

 

信長は龍興の本拠である稲葉山城を取り囲み、半兵衛の煙を使った策略も功を奏して、見事勝利をおさめました。これにて、美濃は信長のものとなり、信長は勢力を拡大しました。

藤吉郎(池松壮亮) 信長(小栗旬)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟』9話(3月8日放送)より(C)NHK

ちなみに、史実における信長は国づくりに長けており、民が住みやすい環境を整えたと伝わっています。

 

小一郎を救った喜左衛門の言葉

稲葉山落城後、小一郎は直の墓前で「ついに美濃が 信長様のものになったぞ。わしら たんまり褒美がもらえるわ。全くうれしいと思わん(中略)お前がおらんのやったら どうでもええ。わしも 少し休みたい」と弱音を吐きます。

小一郎(仲野太賀) 喜左衛門(大倉孝二) 大河ドラマ『豊臣兄弟』9話(3月8日放送)より(C)NHK

そこへ坂井喜左衛門(大倉孝二)が現れました。小一郎は「申し訳ござりませぬ!」と、直を中村から連れ出したことを深く謝罪しました。小一郎は直の死だけでなく、その責任は自分にあるとし、苦しんでもいたのです。

喜左衛門(大倉孝二) 大河ドラマ『豊臣兄弟』9話(3月8日放送)より(C)NHK

喜左衛門は帰省中の直と賭けをしていたことを静かに明かし、直が自分に話してくれた思いを小一郎に託しました。

 

「戦だって 争いごとは なくならないかもしれないけど 無駄な殺し合いは なくすことができるって。とことん話し合って 考えて 考えて 考え抜けば 必ず道はあるって。できる方に500文!」

喜左衛門(大倉孝二) 直(白石聖) 大河ドラマ『豊臣兄弟』9話(3月8日放送)より(C)NHK

直は、小一郎なら無駄な殺し合いのない世を作れると信じていたのです。喜左衛門は弱気になっている小一郎に「銭をよこせ」と言い放つことで、彼なりの方法で小一郎を奮い立たせました。

 

小一郎は直と喜左衛門の思いを受け止め、「まだ終わっておりませぬ。その賭け…必ずや 直に勝たせてみせまする!」と覚悟を決めました。

小一郎(仲野太賀) 大河ドラマ『豊臣兄弟』9話(3月8日放送)より(C)NHK

ラストシーンにおける小一郎が「わしは 兄者と共に もっと強うなる。強うなって お前の見たかった世をつくってみせる」と誓い、直が「私 すごいなあ」と返す姿は、大河史に刻まれた名場面だと思います。

 

直や直が守った少女も戦火に巻き込まれた犠牲者であるように、戦では無辜(むこ)の民が命を落とすのが常です。人間社会では争いや戦いは完全に避けられないでしょう。今も中東情勢は緊張が続き、戦死者の数は日々増えていますが、かれらの死は本当に意味があるのかと疑問を抱いてしまいます。戦死者の多くが直のように争いに巻き込まれてしまった人たちだから……。

 

中東情勢が悪化する中、今の日本には“国際問題は話し合いで解決できない”という思潮も高まっています。小一郎ならこの複雑な状況をどう導くのだろうかと、筆者はふと思いました。

 

本編では、直の死を乗り越えようともがく小一郎の姿、そして直が父と交わした「500文の賭け」が小一郎を再び立ち上がらせた場面についてお伝えしました。

▶▶侍女を務める直(白石聖)。侍女は花嫁修業だけでなく、武器を持って戦うこともあった。戦国女性たちの力強い生き方とは【NHK大河『豊臣兄弟!』9話】

では、直が寧々に仕えていた「侍女」という存在に注目し、戦国時代の女性たちがどのような役割を担っていたのかについてお届けします。

 

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