「嘘から出た真じゃ」兄を溺愛しながらも長政に嫁いだ「お市の方」、策略結婚から読み解く“戦国の愛と宿命”【NHK大河『豊臣兄弟!』10話】
「天下布武」では満足しない信長
本放送を観ていると、男たちの野望は果てしなく、常に上を見続けていると感じました。そんな欲があるからこそ、自身は出世し、世には変化をもたらせるのだと思います。
蜂須賀正勝(高橋努)は竹中半兵衛(菅田将暉)の屋敷が自分のものより大きいことに納得できず、「解せぬ!」と小一郎(仲野太賀)に怒りをぶつけていました。半兵衛を味方に引き入れた自分たちよりも、半兵衛が織田信長(小栗旬)から高く評価されているのが気に食わないようです。地位が上がって立派な屋敷をもらっても、同僚の待遇が良いと腑に落ちない――普遍的な人間らしい嫉妬が描かれていました。
一方、小一郎は「わしは独り身じゃし 広すぎてもかえって手入れが面倒じゃ」と平然としていました。小一郎は熱心に仕事に励んでいましたが、直(白石聖)を亡くし、日が浅い小一郎の「わしは独り身」という何気ない言葉が、筆者は心にひっかかりました。
家臣間の待遇の差に無頓着な小一郎ですが、身なりも一段と立派になり、さらには馬に乗ることが認められるほど出世を果たしていました。

小一郎(仲野太賀) 大河ドラマ『豊臣兄弟』10話(3月15日放送)より(C)NHK
小一郎は莫大な褒美相応に仕事をきちんとこなしています。本作では、足軽組頭の要望を聞いたり、家来の諍いを仲裁する役割を担ったりする場面がありました。弥助(上川周作)が「お主、家来どものことを全て覚えておるのか?」とおどろくと、小一郎は「当たり前じゃ。でなければいざという時 素早く指図ができぬではないか」と返答。
戦国時代、主君の命令は絶対で、家来を一個人として見ない者も多かった中、小一郎は家来の尊厳を重んじているようにも見えますし、それぞれとの対話を大切にします。小一郎のように、家来に日々気配りをしていれば、将来の自分を助けることができるのです。
織田信長(小栗旬)は岐阜を手中に収め、「天下布武」の印を打ち出しました。しかし、現状に満足せず、さらに上を目指しています。
そうした中で、明智光秀(要潤)が現れ、主君・足利義昭(尾上右近)を擁して上洛するよう、信長に依頼しました。彼が「三好一族は先の将軍を亡き者にした大悪人 討ち果たし 世の乱れを正さねば」と訴えると、信長はこれを引き受けます。
信長が光秀の頼みを受け入れた背景には半兵衛の活躍がありました。半兵衛は光秀の従者が義昭本人であることを見抜いていたのです。正勝よりも大きな屋敷を与えられた半兵衛ですが、褒美に値する働きをしっかりしています。

藤吉郎(池松壮亮) 半兵衛(菅田将暉) 信長(小栗旬) 柴田勝家(山口馬木也)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟』10話(3月15日放送)より(C)NHK
義昭は「将軍の血を引いたばかりに命を狙われておる」と信長らの前で嘆いていましたが、信長の妹・市(宮崎あおい)もまた、織田家に生まれたばかりに運命に縛られていました。
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