「大丈夫です」はNG日本語?トラブルの原因になる敬語と丁寧語
「奥さん、この商品をお買い求めになりますか?」こう聞かれて、「大丈夫です」と言ったら、自宅に商品が届いた。そんな詐欺の話を聞いたことがある人もいるかと思います。
これは消費者相談センターで解決すべきトラブルですが、ビジネスの世界でも、この「大丈夫」は曲者。言った言わないのトラブルに発展することはなくても、微妙な表現なので、メールを交わす中で何だかニュアンスが違うのを感じるはめになります。また、そもそも、きちんと表現しないから、何度もメールを交わすことになるのです。そしてお互いのゴールがずれていることに気づかず話が進み、どうもおかしい、ということになった時に「先ほどのメールにあった『大丈夫』ってどっちの意味で使っていますか」なんてことはなかなか聞けませんよね。そもそも、相手にこんな気遣いをさせていること自体が、相手に思いやりがないことの現れ。
今日は、この「大丈夫」の対策として、言い換え方、そして強い表現になってしまいがちなハッキリとした言い方をソフトにする方法を伝授します。
トラブルをさけるために
日本語は曖昧な表現をする言語です。小さな島国である日本、外国語を話す人がほとんどいなかった日本には、細かいことや、しっかりした取り決めのようなことをハッキリと言語で交わさない文化がありました。特に家族や親族、村の中など、身内に当たる人たちに対しては、空気を読んで多くを語らないことが当たり前でした。
阿吽の呼吸や、夫婦間で「おい、アレを取ってくれ」で通じる会話など、美しいやりとりもあります。
しかし、ビジネスではそういうわけにはいきません。特にメールの世界では、曖昧な表現は、前述の例のように、誤解を生じさせたり、誤解かもしれないとお互い感じていることを解決するために不必要なメールの往復が生じさせたりすることがあります。
こうした日本の良さを残しつつ、不要なトラブルを減らすためにビジネスでは、曖昧な表現を避けましょう。
実は「大丈夫」とは、立派な男子という意味
大丈夫には、もともと、健康で丈夫でたくましい益荒男(ますらお)という意味があります。
そこから、危なげなく安心できる様子、間違いがなく確かである、という意味が生じました。つまり、もともとは、「健康」「安心」という意味にしか使わなかった言葉です。それが、必要か不必要か、可能か不可能か、そして承諾に関する問いなど、これらの意味を網羅する、とても曖昧な言葉になってしまいました。そして、文面だけではどちらの意味で使っているのか微妙なものが多いです。
必要・不必要の意味の「大丈夫」
資料はこちらで用意しますので、大丈夫です。
可能・不可能の意味の「大丈夫」
その日の午前中に発送する予定ですが、大丈夫でしょうか?
承諾の意味の「大丈夫」
こちらの資料は持ち帰っても大丈夫です。
大丈夫です。その時間にいるようにします。
このように、大丈夫には、様々な意味があります。誤解が生じないようにするためには、自分はどの意味で言っているのかをまずははっきりさせて、他の言葉で言い換えることが大切ですね。
OKの場合
OKで言っている場合は、次のような言葉に言い換えが可能です。
「問題ありません」
その日の午前中に発送する予定ですが、それで問題ありませんか?
「支障ありません」
その日の午前中に発送する予定ですが、それで支障ありませんか?
「差し支えありません」
こちらの資料ですが、持ち帰っても差し支えありません。どうぞ、お持ちください。
「承知しました」
承知しました。その時間にいるようにします。
「わかりました」
わかりました。その時間にいるようにします。
NGの場合
「不要です」
こちらは、メールで登場することはあまりなく、返信や返事の時に使用することが多いと思います。
冒頭の例
「この商品をお買い求めになりますか?」
ですと「大丈夫です」ではなく「その商品は不要です。」と言えば良いというわけです。
「レジ袋ご利用になりますか?」
「大丈夫です」「レシートはいりますか?」
「大丈夫です」「コーヒーのおかわりはいかがでしょう?」
「大丈夫です」
この「大丈夫」は最近市民権を得てきていますが、無表情で言われた時に「どっちなのかな?」と感じることがあるとのこと。
「いりません」と言えば済むのです。
言い換えが強すぎると感じる場合
言い換えが強すぎると感じる場合には、クッション言葉が便利です。とはいえ、特にNGの場合「いりません」だけ返していたのでは、言葉がキツすぎるように感じる人もいるでしょう。
その場合は、理由や感謝の言葉などのクッション言葉を使うと良いでしょう。
「レジ袋ご利用になりますか?」
「マイバッグを持ってきていますので、いりません。」「レシートはいりますか?」
「いいえ、いりません。ありがとうございます。」「コーヒーのおかわりはいかがでしょう?」
「ありがとうございます。もういりません。とても美味しかったです」
シチュエーションにもよりますが、より丁寧な言い回しが必要な場合もあります。その場合は「必要ございません」「今は不要です」のように丁寧な言葉に替えれば問題ありません。
態度や表情などの非言語情報が伝わらない分、言葉ではっきりと、問題や必要があるのかないのか、支障や差し支えがあるのかないのか、承知したのかどうかを伝える必要がありますね。
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