もう、故郷に帰っていいですか?-42歳・栄子の場合(2)-【40女の恋愛事情・story5】
「今、実家に来てるから、会えない」
彼のメッセージと同じくらいそっけなく答えると、すぐに返信が来た。
「いつ帰って来る?」
「わからない」
本当にわからないから、そう答えた。
これからどうするか答もまだ、出ていない。
「もしかしたら、田舎に帰るかもしれない」
彼は、私が遠くに行ったら、どうするだろう。
会いに来てくれるだろうか。
きっと来ないだろう、母親と同居していて、2人きりで過ごせないのだから。
わかっているからこそ、言ってみた。
これで終わりだねって言われたら、いさぎよく部屋を引き払えると思ったから。
それなのに彼の返事は、
「そうなんだ」
それだけだった。
その言葉では、彼が何を考えているのか、全然わからない。
適当に聞き流しているのかもしれない。
だから、もっと聞いてみた。
「こっちで暮らすようになったら、会いに来てくれる?」
返事は、何分も戻ってはこなかった。
来るわけがない。
近くで会える別の女性を探すに違いない。
わかっているのに聞いてしまう。
そして彼の返信は予想とは違っていた。
「ここと何時間くらい離れてるの?」
距離を尋ねられてびっくりしたけれど、特急で3時間くらいと答えた。
来てくれる気があるのだろうか。
頭の中をいろいろなことが駆け巡る。
もし来てくれたら、どこに案内しよう。
あのお店の郷土料理も食べてもらいたいし、地酒だったらあの居酒屋だし……。
そして彼は30分以上経ってから、こう書いてきた。
「そっちに帰っても、時々、こっちに出て来ればいいじゃん」
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