家で「監視カメラ」を5台発見。嫉妬深い夫に「愛している」と言われながら支配され続けた日々

2026.04.04 LIFE

モラハラ・夫婦カウンセラーの麻野祐香です。

「誰と行くの?」「何時に帰るの?」結婚前は、そんな言葉を「愛されている証拠」だと思っていました。しかし結婚後、夫の嫉妬は少しずつエスカレートし、やがて妻の行動を細かく管理するようになっていきます。

今回は、夫に部屋へ監視カメラを設置されたSさんのケースをご紹介します。

【実録・カウンセラーから見たモラハラ】#99 前編

 

「嫉妬」と「疑い」の権化のような夫

結婚前から、夫は嫉妬心の強い人でした。

「誰と行くの」「何時ごろ帰ってくるの?」……しかしSさんはそんな質問も、付き合っていた頃は「愛情の深さ」だと思っていました。自分のことを心配してくれているのだと、信じていたのです。しかし結婚した途端、その嫉妬心は狂気のように強まっていきました。

 

「どこへ行くのか」「誰と会うのか」「何時に帰るのか」

それは質問ではなく、まるで尋問でした。友人と食事に行くと言えば、「何のために行くのか」と理由を求められる。
少し帰りが遅くなれば、「何をしていたのか」と詰問される。さらに電話をしていれば、「誰と何を話していたのか」と聞かれるのです。夫の態度はエスカレートし、そのうち、夫の許可がなければ、何もできない状態になっていきました。

 

実はこれも、モラハラの典型的なパターンです。交際中は「心配」を装って相手の心をつかみ、結婚後に支配を強めていく。逃げられない関係になってから支配欲を表に出し、Sさんが「夫の感覚はおかしい」と気づいたときには、すでに夫の手中にはまってしまっているのです。

 

Sさんはいつの間にか、外出する前に「何を言えば怒られないか。どう答えれば疑われないか」そんなことを、頭の中でシミュレーションするようになっていました。言葉を選び、夫の監視から逃れる方法ばかり考える日々。家にいても、気が休まる時間はありませんでした。

 

「夫の機嫌を常に気にしながら、地雷を踏まないように過ごす。怒鳴られないように振る舞う」

それが、Sさんの日常になっていったのです。

 

監視カメラを見つけた時の驚き

そんなある日、夫が出張で、3日間家を空けることになりました。夫はSさんがどこかへ出かけないかを気にしていましたが、仕事である出張を断ることもできず、仕方なく出かけていきました。

 

Sさんは久しぶりに、ゆっくり呼吸ができる気がしました。そして、一人の時間を楽しみながら、リラックスした気持ちで掃除を始めたときのことです。棚に置かれた小物の位置を変えた瞬間、見慣れない箱に気づきました。

 

手に取ってみると、そこには、小型のカメラが隠されていたのです。

「え? 監視カメラ?」Sさんの体は固まり、頭の中が真っ白になりました。「これ、いつから仕掛けられていたの? 何を見られていたの…?」夫に対する恐怖と嫌悪感が、一気に押し寄せてきました。

 

夫に電話でカメラのことを問いただすと、悪びれる様子もなく、「昼間、おまえが何をしているか気になるから」と、平然と答えました。そこにあるのは妻への愛や関心ではなく、深い「疑い」でした。自分の目の届かない時間に、妻が何をしているのか。誰と何を話しているのか。妻のすべてを把握し、監視していたい。それだけだったのです。

 

Sさんはすぐにカメラを取り外しました。夫にも「もう監視カメラは置かないでほしい」と伝え、そのときは承諾してもらえました。

 

リビングの監視カメラを取り外したあとも、Sさんの心から「見られている」という恐怖は消えませんでした。部屋にいるのに、誰かに見られている気がする。着替えるとき、ふと棚の方に目がいく。電気を消して横になっても、暗闇の中にレンズがあるような気がするのです。

 

この状態を心理学では「過覚醒」と呼びます。強い不安や恐怖を経験した心は、危険が去ったあとも「また起きるかもしれない」と警戒を続け、緊張が解けなくなります。それは心が壊れたのではありません。自分を守るために働いている反応なのです。

 

再び監視カメラを見つけてしまって

そして、その不安は、現実のものとなります。夫は、再び監視カメラを設置していたのです。Sさんの恐怖は、間違っていませんでした。2度目にカメラを見つけたとき、Sさんの中には、怒りを通り越した絶望と恐怖、そして強い嫌悪感が広がっていました。「もう監視カメラは置かない」と約束したばかりなのに、夫は平気で、夫婦間の信頼を裏切るような行為に及んだのです。

それでも夫は、「おまえを愛しているからだよ」「昼間に何かあったら、と心配なんだよ」と、自分の行為を正当化するのでした。

 

「心配」と「監視」は、似ているようでまったく別のものです。心配している人は、相手に「大丈夫?」と声をかけます。話を聞き、相手が安心できるように動きます。でも、監視は違います。

相手に知らせずカメラを仕掛ける。
問い詰められても、また繰り返す。

相手の安心よりも、「自分がそうしたい」という気持ちだけが優先されるのです。

5台の監視カメラ

夫がSさんに求めていたのは、支配への服従でした。

「俺の見える範囲にとどまれ」
「俺の知らないことをするんじゃない」

そういう意味だったのです。Sさんが感じてきた「ずっと見張られている」という感覚は、気のせいではありませんでした。後から分かったことですが、家の中には、監視カメラが5箇所も設置されていたのです。

 

人は、誰かに見られていると感じるだけで、指示されていなくても「どう行動すればいいのか」を考えるようになります。緊張し、動きがぎこちなくなることもあります。「見られている」という感覚そのものが、人の行動を制限するのです。Sさんは、「監視カメラを置かないで」と泣いて抗議しました。しかし夫は鬼のような表情で、「俺が決めたんだ!」と怒鳴りました。

 

その声と表情に怯えていると、今度は一転して優しい声で、「愛しているから心配なんだ」と言われ、言葉が出なくなってしまうのです。Sさんは、「大声で怒鳴るのは、私を守りたいからなんだ」「夫は怖い人じゃない」「だって、そのあと優しい声で『愛している』と言ってくれる」そう自分に言い聞かせていました。

本編では、嫉妬心の強い夫が妻の行動を制限し、家の中に監視カメラを設置するまでの経緯についてお伝えしました。

▶▶「それ、愛じゃないよ」友人の一言で気づいた監視生活の異常、妻が支配から抜け出すまで

では、友人の言葉をきっかけに自分を取り戻し、監視と支配から抜け出していったSさんの決断についてお届けします。

 

※本記事は、相談者様への敬意と守秘義務に十分配慮したうえで、モデルケースとして編集・再構成しお届けしています。特定の人物や事例を示すものではありません。

※写真はイメージです

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