がん・老衰・突然死…最期はどう訪れる?明日、死んでもいい人は一定数いる⁉ 3000人を看取った医師が教える、意外と知らない「死」のキホン
夜に一人でいるときや眠りに落ちる前、ふと「もし明日、自分がいなくなったら……」なんて考えて、急に足元がふわふわするような不安に襲われることはありませんか。
これまで3000人のお看取りを経験してきた、たんぽぽクリニックの永井康徳医師は、私たちが「死」をこれほどまでに怖く感じるのは、それが「誰も体験したことがない未知のものだから」だと語ります。
本記事では、永井医師の著書から「死とはなにか」という意外と知らない基本情報をご紹介します。
※本記事は書籍『後悔しないお別れのために33の大切なこと』(永井康徳:著/主婦の友社)から一部抜粋・編集したものです
“死”は未知のもの。知らないから怖いと感じる
人の死亡率は100%です。人は必ず死にます。それは自然の摂理であり、避けることはできません。その一方で、実際に自分の〝死〟を体験した人はいません。死の体験者は0%であり、どんなものであるかを語られることは、ほぼありません。
“死”は生きている人間は体験したことがない、未知のものです。だからこそ、怖い、おそろしいと感じる人が多いのかもしれません。
“死”の基本情報を知っておこう
未知のものだから怖いのであれば、まずは〝死〟がどういうものであるか知ることから始めてみましょう。
医師が死亡宣告をするときには、肺、脳、心臓の機能をチェックします。胸部を聴診したり、腕や首の動脈の触診をしたりして、呼吸や脈拍を確認します。
呼吸が確認できず、脈拍がゼロであれば心肺拍動と呼吸が停止しています。テレビや映画などで亡くなった人の目にペンライトの光を当てているのは、光が当たったときの瞳孔の反射や大きさを確認しています。反射が起こらなければ、脳機能が停止しているとみなされます。
状況や年齢で異なる“死”の過程
これらをチェックして、心肺拍動の停止、呼吸の停止、脳機能の停止という死の3兆候が確認されると死亡と認定され、死亡宣告が行われます。
ちなみに、死亡宣告できるのは医師のみです。事故などのニュースで「心肺停止後に医療機関で死亡が確認された」と報道されるのは、現場に医師が不在だと死亡判断ができないためです。
このほかに体の状態から、誰が見ても判断できる“社会死”があります。例えば、白骨化している、体の損傷が激しく蘇生が不可能と判断される場合は、社会死とみなされます。救急隊員が社会死と判断した場合は、病院には搬送されません。
どのように“死”を迎えるのかは、病気や年齢などで大きく異なります。事故や病気などによる突然死は、予期しない死であり、まさしく突然やってきます。心臓や肺、腎臓などの重篤な慢性疾患がある場合は、治療して状態がよくなる状態を繰り返して、徐々に体の機能が低下していきます。
持病ががんの場合は、ほかの病気に比べて死がより身近になります。日本人の一生涯のがん罹患率は、男性で約60%、女性で約50%です。これは日本人の2人に1人が、人生で一度はがんにかかることを意味します。
治療後に再発することなく天寿をまっとうする人もいますが、すべてのがんの5年生存率(5年後に何パーセント生存しているか)は64.1%(国立がん研究センターがん情報サービス)で、ほかの病気に比べて死のリスクが高いことは事実です。
特に、がんが進行してから見つかった場合は、診断されてから死に至るまで、かなり短期間であることが多々あります。
これら以外に最近増えているのが、老衰による死です。充実した医療が受けられるようになり、病気で死ぬ人が減った現代では、加齢とともに心身の機能が徐々に衰えていき(老衰)、死を迎える人が増えています。
ただ、日本では何歳で亡くなると老衰死といった明確な定義がありません。そのため、老衰による身体機能の衰えで病気になり、それが原因で亡くなった場合は老衰死ではなく病死とみなされます。死の迎え方はさまざま。 日本では老衰による死が増えています。
死を怖がらない人もいる
在宅医療の専門家として、たくさんの講演会で話しています。看取りについてのことが多いのですが、会場にいらっしゃっている皆さんに「このなかで、例えば今日、明日、寝ている間に死んでもいいと思ったことがある人はいますか?」と質問して、そう思う人に手を挙げてもらうことがあります。
すると、必ず何人かは手を挙げられます。「もう十分生きました」とか「明日死んでも思い残すことはありません」という人が必ずいるのです。
年齢によるとは思いますが、それまでの人生を自分の思うように、やれるだけ生きて満足している人は、死ぬことが怖くないのでしょう。そう思える人は、想像しているよりたくさんいるのかもしれません。特に、年齢を重ねて老いてくると、死を近く感じるようになってきますから。
では、後悔のない、怖くない死とはどのようなものでしょうか? 天寿をまっとうして安らかな死を迎えることを大往生といいます。沖縄のある離島では、老衰で亡くなると「大往生できた」と赤飯を炊いてお祝いするそうです。
この島では高齢者を自宅で看取ることが多いとのこと。天寿をまっとうした死を肯定的に受け入れる考え方が、脈々と受け継がれているのでしょう。それが文化として根づいていることが、自宅での看取りの多さに関係しているのかもしれません。
ここまでの記事では、「人が死を迎えるまでの過程」についてご紹介しました。続く『関連記事』では、永井医師が「死と向き合うことの大切さ」を感じたエピソードについて解説します。
つづき>>「もっとできることがあったのでは」40代で父親を看取り、自身にも「がん宣告」──3000人を看取った医師が語る「死と向き合う」ことの大切さ
■著者略歴: 永井康徳(ナガイヤスノリ)
医療法人ゆうの森 たんぽぽクリニック 医師 。愛媛県の僻地診療所勤務の後、2000年に愛媛県松山市で、四国で初めての在宅医療専門のたんぽぽクリニックを開業。「理念」と「システム」と「人材」のすべてを高いレベルで維持して在宅医療の質を高めることをめざし、現在は常勤医10人、職員100人の多職種チームで在宅医療を主体に、有床診療所、外来の運営も行っている。平成22年には市町村合併の余波で廃止となった人口約1200人の町の国保へき地診療所を民営化し、開設4ヶ月で黒字化を達成。そのへき地医療への取り組みは平成28年に第1回日本サービス大賞地方創生大臣賞を受賞。全国各地での講演を行い、「全国在宅医療テスト」や「今すぐ役立つ在宅医療未来道場(通称いまみら)」「流石カフェ」など在宅医療の普及のための様々な取り組みを行っている。YouTubeの「たんぽぽ先生の在宅医療チャンネル」も大好評。
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