「誰かのぬくもりを求めていいですか?」アラフォー恋愛事情・40歳夏海の場合2

2016.11.08 LOVE

 

このホストクラブでは、永久指名制度というものがあるのだという。

指名が入ると、その女性客の売り上げの約半額がそのホストのものになるという。

ホスト同士の客の取り合いがないように、一度指名をしたら、他のホストを指名することができないのだそうだ。

 

「指名もなにも、私、今日初めてこういうとこに来ただけで……」

次も行く度胸なんて、全く持ち合わせていない。

今日は初回なので2時間飲み放題で数千円でいいというけれど、次からはきっとお会計も跳ね上がるのだろう。

 

「指名してよ」

曖昧な私に、彼は何度もそう頼み込んだ。

「そしたら、隣に座れるから」

「隣に……?」

 

どきっとした。

女性客の隣に座れるのは、指名ホストだけなのだという。

「ねえ、いいじゃん」

ヒカリくんは、甘え声を出してせがむ。

「指名料がかかるわけでもないんだし」

 

結局、私は彼を指名することにした。

男の人が、隣に座ってくれる。

そのことに心惹かれてしまった。

 

もう、1人の毎日に慣れてしまったから、いつも誰かが隣にいたら、面倒に思うかもしれない。

でもたまには、すぐ隣に男の人がいてくれるのもいい。

たまに、でいい。

わがままかもしれないけれど、そう思うときがある。

 

「今、そっちに行くね」

ヒカリくんは、腰を上げた。

彼の長いグレーのシャツが、ふわっと踊った。

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