「伺う」と「参る」のどちらを使う?迷ったときのシーン別OK・NGリスト
例えば「行く」という動詞をビジネスシーンで使う場合、尊敬語と謙譲語、丁寧語の使い分けが必須です。「いらっしゃる」「いかれる」「おいでになる」が尊敬語、「伺う」「参る」が謙譲語、「行きます」が丁寧語です。自分が主語の場合、当然謙譲語「伺う」「参る」を使うわけですが、この「伺う」と「参る」には実は差があること、知っていましたか? 現役の中高生はこれができるんです。なぜなら学校で習っているから! さあ、新人類が知っていて私たちが知らないこの「伺う」「参る」の差ってなんでしょう?
例文
- 明日、先生のお宅に伺います。
- 明日、先生のお宅に参ります。
「伺う」は「謙譲語I」
謙譲語Iについて「敬語の指針」文化庁より
「先生のところに伺いたいんですが…… 」と述べる場合 「先生のところに行きた いんですが(先生のところを訪ねたいんですが)…… 」と同じ内容であるが 「行く(訪ねる 」の代わりに「伺う」を使うことで )「先生」を立てる述べ方になる。この ように 「伺う」は <向かう先> に対する敬語として働く。この種の敬語は,一般 に「謙譲語」と呼ばれてきたが,ここでは「謙譲語II」と区別して,特に「謙譲 語I」と呼ぶこととする。
「伺う」は <向かう先> に対する敬語とあります。いったいどういうことかというと、話題に上がっている人や物に対する謙譲表現です。
- 明日、先生のお宅に伺います。
このせりふは、どんなシーンで話していると想像できますか。そうですね。このせりふは、そこに先生がいなくても使えるせりふですよね。話題に上がっているのは先生、その先生に対する謙譲表現なのです。
例えば、友人に対して、
- 明日、先生のお宅に伺うことになっているのよ。
なんてふうにも使えます。つまり話題になっている「先生のお宅」しいては「先生」に対して敬語を使っているのですね。もちろん、先生ご本人に対しても使えます。
「参る」は「謙譲語II」
それに対して
- 明日、先生のお宅に参ります。
この言葉は、話している相手が先生だと分かります。他の人に対しては使いません。
- (誤)明日、先生のお宅に参ることになっているのよ。
謙譲語IIについて「敬語の指針」文化庁より
「明日から海外へ参ります 」と述べる場合 「明日から海外へ行きます 」と同じ内容であるが 「行く」の代わりに「参る」を使うことで,自分の行為を,話や文章 の相手に対して改まった述べ方で述べることになり,これが,丁重さをもたらすことになる。このように 「参る」は<相手>に対する敬語として働く。この種の敬語は 一般に 謙譲語 と呼ばれてきたが ここでは謙譲語Iと区別して,特に「謙譲語II」と呼ぶこととする。
「参る」は<相手>に対する敬語とあります。つまりこのせりふは相手、この場合は「先生」ですが、その人に対して敬語を使っているシーンで登場するのです。もっと言うと、この謙譲語IIは、自分の行為全般に使えますので、「参る」の他、「申す」「いたす」「おる」「小社」「拙宅」なども該当します。
ここで、もう一度整理します。謙譲語には二つあります。
- 尊敬の対象が話題の主の場合、「伺う」を使う。
- 尊敬の対象が聞き手の場合、「参る」を使う。
そして、この二つの条件が重なる場合もありますよね。そう、話題の主がまさに今話している相手だという場合です。この場合は、どちらでも可です。
相手の「どのオフィスに行くか」で伺うか参るかが決まる
アポイントを取るシーンを考えてみましょう。電話、メール、直接、どのシーンでも同じです。
- 明日、オフィスに伺います。
- 明日、オフィスに参ります。
1は謙譲語Iです。 <向かう先> に対する敬語です。
2は謙譲語IIです。<相手>に対する敬語ですね。
この二つの違いは、1のオフィスは先方のオフィスであること、2のオフィスは、どこのオフィスでも良いけど、自分を下げてあなたに敬語を使いますと~という意味です。ですから、アポイントの確認をしている先方のオフィスに行く場合は、1の「伺います」、アポイントの確認をしている先方のオフィスではなく、よそのオフィスの場合は2の「参ります」を使うのが基本です。
さあ、もう「伺う」と「参る」の使い分けができるようになりましたよね。あとは回数!「行きます」なんて言わない限り失礼にはならないので、どんどん使って練習しましょう。
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