あまりに難しい…不登校の子を持つ親が「できるといい」努力、「期待をしない」という究極の達観

2026.08.29 LIFE

オトナサローネでエッセイ『シングルファーザー小説家の子育てと社会日記』を連載中の作家・仙田学さんと、オトナサローネ編集部井一が、8月21日にインスタライブで「不登校ラジオ#3」を配信しました。

9月1日は子どもの自殺が多いと言われます。この日を前に、親が何をどう考えておくとよさそうか、ヒントになるお話を伺えました。

前編『9月1日を前に、不登校の子を持つ親が「今すぐ始めたほうがいい」訓練とは?不登校親2人が出した「意外な結論」の全経緯【不登校ラジオ・ダイジェスト】』に続く後編です。

【不登校ラジオ・ダイジェスト】#3後編

子どもが自分で選ぶ力を後押ししてあげるということ

井一:夏休み、お子さんたちはいかがでしたか?

 

仙田:次女は普通に学校に行っているので、7月末から8月末まで1ヶ月、2人とも毎日家にいます。僕も大学は休みでも教員には休みがないので、家で事務仕事をしながら、小学校最後の夏だから色々連れて行ってあげたいという気持ちと、罪悪感の間で揺れていました。ただ、次女は夏休みだから家にいますが、長女はもともと一年中家にいるんですよね。その負荷にもう慣れてしまって、負荷がかかっているとすら感じなくなっていたことに、改めて気づきました。

 

井一:夏はどこか行かれたんですか?

 

仙田:海に行ったり、映画も見に行きました。長女が見たいと言って、マイケル・ジャクソンの伝記映画を見たんですが、めちゃくちゃ良かったです。

 

井一:子どもと一緒に楽しめることを大事にしよう、というのは連載にも書いていらっしゃいますね。今この子供と楽しめるうちに、一つ一つの出来事を大事にして楽しもう、という姿勢がすごく伝わってきます。

 

仙田:とはいえ、家にいる子どもが増えると家事がとても大変です。

 

井一:うちの子どもは中高一貫校に通っているんですが、スクールカウンセラーさんに全日制以外の高校の出願方法は早めに調べておいた方がいいと言われ、今日は都立のチャレンジスクールという、不登校を経験した子どもを積極的に受け入れている単位制高校の説明会に出席してきました。74単位を4年あるいは3年で取る仕組みで、朝・昼・夕方のコースから一つを選ぶという学校でした。ただ複雑な気持ちになったのが、みんな親子で来ているのに、娘は誘っても「めんどくさい」と行ってくれず、私一人で行くことになったこと。また、中学受験をなさったお家だと学校説明会が争奪戦で大難関だったことを覚えていらっしゃると思うんですが、似たような大変さなのも印象的でした。先生は学校見学にお嬢さんと一緒に行かれているんですか?

 

仙田:今のところ3校見学して、「ここ」というところが1つ見つかったので、今後はその学校のオープンキャンパスに通い続けようと思っています。長女はやりたいことが具体的にあるので、そちらに全振りした専門学校運営の高等学校を選びました。その学校は2年生から専門学校の授業も受けられるかわり、5教科の勉強は自分で自習するという、専門的な分野にかなり手厚い学校です。

 

井一:今日出席した単位制高校では、説明会のいちばん最初に校長先生が「高校は義務教育ではありません。教えてもらいたいから来るのであって、無理やり来させるわけではない。自発的に学びたい人たちが来る場所です」とおっしゃったんです。子どもの行きたいという意思がない限り、これまでのように親がお膳立てをすることは不登校の子どもにとって意味がないんだな、と受け止めながら聞いていました。

 

仙田:不登校という言葉の意味も、中学生と高校生とで大きく変わる気がします。中学までは義務教育だから行かせるか行かせないかという選択肢がありましたが、高校の場合、本人が行きたくないならもう行かない選択肢しかない気がします。

 

井一:結局、本人の意思と行動が伴わないと卒業までたどり着けないんですよね。中学は勝手に卒業できますが。私が最初にスクールカウンセラーさんに全日制高校のことを相談した時、「全日制中学に行けなかった子が、高校からいきなり全日制に行けるかというと、体力的についていけずドロップアウトしてしまう例が多く、傷になるかもしれない」と言われ、ショックを受けました。仙田先生の連載5回目の後編にも「周りの子たちはすごいスピードで前に進んでいるのに、長女だけが真っ暗なトンネルの中で膝を抱えて座っているように思えて焦った」とありましたが、当初は先生もそう感じていたんですね。

 

仙田:最初の頃ですね。小6の2月頃から中1の夏頃まではそんな感じでした。「生きててくれるだけでいい」とスクールカウンセラーさんの前で発言したのが、去年の7月頃だったと思います。それまでの4ヶ月間は、うちの子どもがどうなってしまうんだろうという恐怖がすごく強かったです。生きててくれるだけで嬉しいと思えるようになったのは、裏返すと期待をしないということなんですよね。

 

これがいちばん難しいのかもしれない。「期待しない」ということを訓練する私たち

井一:期待しない。

 

仙田:期待をすると、裏切られた時にショックじゃないですか。何も期待しなければ裏切られることがないから、ショックを受けない。周りの人間関係全てがそういう感じになってきて、誰にも何も期待しなくなりました。そうすると腹も立たなくなる。薄情な言い方に聞こえるかもしれませんが、ポジティブな意味で、向こうが何かしてくれたことが純粋にありがたく思えるようになった、ということかなと思います。

 

井一:いわゆる課題の分離ですね。あなたの問題と私の問題は全く違うんだ、あなたの気持ちと私の気持ちは全くリンクしない、という。いま「期待しない、沁みました」というコメントもいただきましたが、本当にそうですよね。

 

仙田:夏休み、洗濯物を干すのを娘2人に手伝わせているんですが、次女はいつも遅れて来て、最後だけちょろっと手伝う。それに腹を立てていたんですが、「洗濯物干しは僕と長女、2人でやる仕事だ」と思うようにしたら、何も腹が立たなくなりました。たまに次女が手伝いに来たら、ありがたいと思えるようにもなって。その方が自分のストレスにもなりません。

 

井一:私はやっぱり、私家政婦じゃないんですが!と腹が立ってしまいます。

 

仙田:その腹を立てること自体がストレスになるので、僕は本人が手伝わないなら、期待しない。ちょっと冷たい感じにはなりますけどね。

 

井一:なるほど、期待しない。

 

仙田:自分のために、期待しない。

 

井一:うーん、つまり、子どもが赤ちゃんの頃は全部してあげなければならなかったけれど、ある程度自分のことが自分でできる年になった子どもに対しては、期待をしない、これはこういうものなんだ、あなたの人生ですよね、と思う練習を親がしていくべきなんだな、というのが今日の結論になりそうですね。

 

仙田:そうですね。

 

井一:今日の最初の話に戻ると、私は心理師さんが私のつらい気持ちを助けてくれると期待していたから、期待した結果が得られなかったと思ってしまっていたんですよね。心理師さんは同じ治療構造の中で、きっと仙田さんが受け取ったのと同様の何かを返してくれていたはずなのに、私は期待していたせいで「まーた分かってくれない」と思ってしまっていた。聞いてくれてありがとう、という気持ちで接していたら、また違う受け止め方ができたのかもしれません。

 

仙田:子どもはいつか手を離れて、一人の大人として生きていきます。その時に期待も何もなくなればいいけれど、例えば子どもが30歳になった時に「いつ結婚するの?」なんて言いたくないな、と思っていて。僕は少しずつ、子どもが大人になって手元を離れていくのを手放す練習をしているのかもしれません。洗濯物のことも、僕と長女がいるところから地面がメリメリと下がって、次女だけが離れていくようなイメージをすると、腹が立たなくなるんです。ちょうど子どもが思春期になっているこの時期に、そういう練習をしているのかもしれませんね。

 

井一:「子どもに期待していた時期は苦しかったです。親の苦しさが子どもにも伝わっているかもしれません」というコメントもいただきました。洗濯物を畳んでくれない、何度言ってもご飯を下げてくれない、そういうことに期待をしないことで、私の気持ちも穏やかになるんだと思います。期待をやめた方が苦しくなくなるというのは、今日の結論です。期待をしないということを、私たちは練習していく必要があるのではないか。この1ヶ月、期待をしない練習をしてみようと思います。

 

仙田:(笑)

 

井一:次回は仙田さんの連載が9月15日ごろの配信、不登校ラジオはその次の金曜で、9月18日金曜日でいかがでしょうか。9月1日を過ぎて「学校行けた?」と聞きたくなる、地獄の9月ですが、行けても行けなくても子どものことだから、登校を期待しない、そこを唱えるところから9月を迎えましょう。

 

仙田:今日もありがとうございました。また来月よろしくお願いいたします。

 

つづき>>>9月1日を前に、不登校の子を持つ親が「今すぐ始めたほうがいい」訓練とは?不登校親2人が出した「意外な結論」の全経緯【不登校ラジオ・ダイジェスト】

 

編集部より◆不登校ラジオvol.4は9月18日(金)19時~ オトナサローネのインスタアカウントで配信します。お楽しみに!