よりによって、会社の駐車場で…同僚に見られてしまった決定的不倫【不倫の精算#44】前編
後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。
不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。
なんでそんなことをしてしまったの…?「手をつないで歩く」なんて
Aさん(39歳)から「すぐに会いたい」と電話がかかってきたのは、土曜日の午後のことだった。
何かあったのかと尋ねると「電話では言えないから」と返され、クルマのキーを掴んで家を飛び出した。
指定されたカフェのテラス席に座るAさんは、マスクをしていてもそびやかした肩が緊張の度合いを伝えていて、こちらの姿を確認するとぎこちない動きで手を挙げた。
「どうしたの?」
挨拶もそこそこに声をかけると、不安定に視線をさまよわせるAさんは
「あのね、会社の人に不倫がバレたかも」
と小さな声で答えた。
「え……」
Aさんは、半年ほど前から会社の上司と不倫している。
お互いに配偶者がいるW不倫だったが、少し前に関係が順調であることはLINEで聞いていた。
薄いメイクにきちんとよそ行きの服とバッグで身を固めているAさんは、「会社の後輩から仕事のことで相談があると誘われて」と夫に断り、家を出てきていた。
左手に光る結婚指輪を視界に入れながら、慎重に関係を進めてきたはずの彼女に何があったのか、メモ帳とボールペンを取り出して椅子に座り直した。
相手に「どこまで見られたのか」わからない。もしかして……
話を聞いてみると、Aさんと既婚男性が会社の駐車場をふたりで歩いているのをたまたま通りがかった同僚に見られたそうで、それだけなら特に焦る必要はないのだが、
「そのときね、私たち手をつないでいたのよ。
暗いし、誰もいないだろうと思って油断していたの」
と、A子さんは暗い顔でつぶやいた。
次の日、休憩のときにその同僚から「昨日、○○さんと駐車場にいた?」と耳打ちされ、見られたことを知り一瞬で背筋が凍ったという。
「ううんって言えば余計にあやしまれるじゃない?
『たまたま出るのが一緒になって』と答えるしかなかったわ。
『そうなのね』って返されたけど……」
同僚がどこから自分たちを見ていたのか、「手をつないでいる状態」まで目に入れたのかはわからない。
「それなら、本当にたまたま見かけたってだけじゃないの?」
そう尋ねると、ちらりとこちらに視線を寄越したAさんはふたたび下を向き、
「それでね、『○○さんとあんなに仲がよかったって知らなかった』って言われたの。
これってもう、見られたと思うべきよね?」
と、苦しそうな声で返した。
普段、会社では周囲に仲を気取られないよう懸命に距離を取っているのだ。
だからこそ、同僚の目にはふたりが並んで歩く姿が意外だったのかもしれない。
「どうしよう」
Aさんは、小さくため息をついた。
危機感が緩んだワケ
「その日に限って、手をつないでいたのね……」
W不倫で「絶対にバレるわけにはいかない」といつも口にするAさんが既婚の彼との接触に常に気をつけていたのは知っているので、“小さな油断“は意外でもあった。
不運、と言っていいのかどうか、そんなときに限って人に見られるのだ。
「あのね」
運ばれてきたアイスカフェオレのストローに指を伸ばしながら、Aさんが口を開いた。
「前の日に、彼と喧嘩しちゃったの。
週末に会う約束をしていたのだけど、奥さんが電気屋に行きたいって言い出したからそっちに付き合うって、彼が。
仕方ないとはわかっているけど、やっぱりモヤモヤしちゃって、ちょっと言い合いになったのね」
彼は会社に愛妻弁当を持参し、休日は家族サービスをしたというアピールを忘れないそうで、そんな姿に複雑な思いを抱きながらも不倫の事実を隠せている状態が、Aさんにとっては安堵になっていた。
それでも、自分との約束より家族との時間を優先されれば、文句を言いたくなる気持ちはわかる。
「それで、次に会うときは○○に行こうねって仲直りはできて。
テンションが上がっていたというか、私がちょっと……。
甘えが出ていたのかも……」
口ごもりながら続く言葉に、Aさんの後悔が滲んでいた。
喧嘩してもすぐに仲直りができる、というふたりの状態は、前から聞いていた。
次の日に会社で顔を合わせることがわかっており、気まずさを抱えたままではその空気が他人の関心を引くかもしれず、そんなことすらAさんは気にしていたのだ。
だから“長続きしない喧嘩”はふたりの愛情を刺激する小さなスパイスにもなっていて、それが今度は油断を誘った。
いつもなら絶対にしない「手をつなぐ」という行為が、それを受け入れてしまうふたりの甘さが、一番恐れていた「他人バレ」の状況を作り出していた。
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