もしもあなたが不倫をするつもりなら、たった一つだけ絶対に覚えておいてほしいこと
コロナ禍で激変したと言われる「不倫」のありかた。
ひとが恋する気持ちは変わらないけれど、出会い方、過ごし方、そして別れ方ははまるで違うといいます。
長年に渡って女性たちの悩みを聞き、書き続ける、恋愛相談家のひろたかおりさんがレポートします。
▶前編記事『「私、いま不倫しているの」秘密の打ち明け話だったのに…友人らにバラされた38歳女性の末路』に続く後編です。
【不倫の精算#60】後編
不倫は、始まってしまったら消火できないんです。どれだけ親しくても友人を止める手段はない
「それで、Bさんは何て言ったの?」
と尋ねると、Qさんはちらりとこちらに視線を投げてから
「私の不倫について?
何も。
それより、A子はおかしいよねって話で」
と肩をすくめてみせた。
Qさんが言うには、彼女と同じく「友人のプライバシーを勝手に人に漏らす姿」への非難が先立ち、Qさんが不倫していることには本当かどうかの確認があった程度で「いいも悪いも言わなかった」そうだ。
QさんはBさんに口止めをお願いし、A子さんに「私の不倫を人に話すのはやめて」とLINEでメッセージを送ったが、既読はついたものの返信がないことにもまた、怒りを覚えていた。
「本当に腹が立つわ」と繰り返すQさんの気持ちはよくわかるが、A子さんの「暴走」もまた、配偶者の不倫による被害を経験した人間としての責任感のようなものも感じられた。
だが、それでも、他人の不倫を止める手段はない。
巻き込まれた周囲の人たちだって「戸惑う」しかない。そんな話は聞きたくなかった
「不倫は人の道から外れた関係」「子どもがかわいそう」、確かにその通りだが、そんな正論こそ後ろめたい関係を手にしている人には反発の材料にしかならない。
「わかっていてやっている」のが不倫する人の実際であり、身近な友人に諭されるような状況は、今のQさんのように屈折が溜まるだけなのだ。
それに加えてほかの人まで巻き込んでしまえば、Qさんとの軋轢が深くなるだけでなく事実を知った人にまで窮屈な思いをさせる。
友人の不倫をバラされた側にも相応の負担をかけることを、A子さんは忘れているなと思った。
そして、友人の不倫を知ったBさんが自分の期待通りに止める行動に出るかどうかなど、A子さんには絶対に決められないのだ。
他人の不倫に横槍を入れても、やめさせるという目的が叶うのはあくまで相手しだいなのが現実だった。
さらに恐ろしい「正義の鉄槌」を下す可能性だってある。最悪の事態とは
Qさんには言わなかったが、こんなケースの恐ろしさはA子さんが誰にでも不倫の事実を漏らせる立場にあることで、「悪い人を懲らしめたい」と思っている人は自分のすることはすべて正義だと信じて正すための行動に出る。
身近なBさんに「止めてほしい」とお願いすることで今は済んでいるが、これがQさんの職場や夫にまで事実を知らせる言動に出れば、彼女の生活は一気に破綻する。
自身が配偶者の不倫によって目の当たりにした家庭の破壊を、今度は自分が他人に起こす側になるのだ。
「不倫は許せない」のは理解できるが、やめさせるために自身が起こす行動については本当に慎重になるべきで、別の友人に話すだけでもその後について責任を取れるのかどうか、覚悟を決めて動かないといけない。
他人の不倫に口を出す、行動に出ることは高いリスクを自身が背負うのだと、A子さんは考える必要があった。
対してQさんのほうは、これから事態がどう動くのか、怯えて過ごす現実を受け止めるしかないのだった。
「もし不倫をするならば、どれだけ親しい相手にでも、絶対誰にも話さないこと」
「A子が旦那の不倫で悩んでいたとき、私ね、一生懸命励ましたし何かあったらすぐ言ってね、助けるからねって何度も伝えたのよ。
それがこんな仕打ちを受けるなんて、人間不信になりそう」
Qさんは何度目かのため息をつく。
「自分が不倫で苦しんだことを知っている人から不倫しているって言われたら、取り乱す気持ちはわかるよ」
静かにそう返すと、Qさんは驚いたように目を見開いてこちらを見た。
「え、昔を思い出すから?」
「……それもあると思うけど。
苦しんだことを知っているはずなのに、どうして不倫している話なんてするのって、逆だったら思わない?」
「……」
意表を突かれたという表情に、自分のしたことが友人にどれだけのショックを与えたか、今まで想像もしなかったことがわかった。
A子さんにとって、自分に不倫を打ち明けるQさんの姿は衝撃だっただろう。
つらい思いをしたと記憶していてなお「不倫する側」の自分を見せてくるQさんに、自分への配慮のなさやもっと言えば軽んじられていると感じた可能性は十分にあった。
だから怒るのだ。
「子どもに恥ずかしいと思わないのか」と口にすればQさんが屈折するのは想像できたと思うが、それでも止められないのは彼女のデリカシーのなさに嫌悪を持ったからじゃないのか。
正直に言えば、配偶者の不倫で苦しんだ経験をした友人に、自身の不倫を打ち明けるQさんのほうが異常だというのがこちらの感想であり、そこは絶対に伝えないが、「夫のせい」をいっさい聞き入れないA子さんの姿は当然だろうと感じた。
Bさんから「何でA子に言ったの」と聞かれたこともQさんは話していたが、それを「仲のいい友達だからつい」で済ませられる自分について、違和感を持たないのであれば危険だ。
不倫を他人に打ち明けることには、実際は多くの心配がつきまとう。
人に知られたらまずい秘密を手渡してしまうことや、それを話せる自分について相手の感情が一気に悪くなる可能性や、話すのが自分の意思ならその後の展開についても自己責任になる。
不倫がそもそも歪んだ関係なら、身を置くことも他人に知られることも、自身の破滅について正面から見据える覚悟がいるのだ。
▶【この話の前編】『「私、いま不倫しているの」秘密の打ち明け話だったのに…友人らにバラされた38歳女性の末路』
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