
闘いの時代・平安に「権力闘争が苦手な男」が天皇になってしまった。その末路はどうなる?
*TOP画像/花山天皇(本郷奏多)と藤原道兼(玉置玲央) 大河ドラマ「光る君へ」10回(3月10日放送)より(C)NHK
『光る君へ』では権力争いが物語の重要な柱となっているように、平安時代において貴族たちは我が家の勢力拡大に全エネルギーを注いでいたといえます。
しかし、妻を亡くした悲しみから心が空っぽになり、ライバルに隙を突かれてトップの座から葬られた天皇もいます。その人物とは、17歳という若さで即位した花山天皇です。
『光る君へ』において花山天皇は妻に一途で、孤独な人物として描かれている
権力を握る者は世を独断で動かし、自由気ままに生きていたと先入観を抱かれがちな平安時代。しかし実際は、国のトップにある天皇もまた自由が利かず、信じられる人がほとんどいないという状況に不本意ながら置かれることもありました。本作では、花山天皇(本郷奏多)がまさにそうした人物として描かれています。
本作における花山天皇は妻・藤原忯子(井上咲楽)を寵愛する愛妻家。兼家らの企てにより、安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)から忯子のみ霊を成仏するために出家をすすめられると、帝の地位を捨て、出家を決めます。彼にとって忯子を救ってやることが何よりも大切でした。
“将来の帝”である花山天皇は幼い頃から大人たちから蝶よ花よと扱われてきましたが、彼が愛情に飢え、孤独感を抱いていることは道兼(玉置玲央)による父親から暴力を振るわれているという嘘(第8話)にまんまと心揺さぶられることにも明らかです。強がっているものの、心を開ける人はほとんどおらず、まるで暗闇の中にひとり取り残されているよう-信頼できる人は忯子や為時(岸谷五朗)など一部の人に限られていました。
実際のところ、花山天皇はどのような人物だったのでしょうか。
【史実解説】いつの時代も権力争いが苦手な人はいる。花山天皇は政権のトップとしては純粋で、自由奔放すぎる男?
花山天皇は史実においても藤原兼家らの策略にはまって退位します。花山天皇が出家すれば、孫の懐仁親王の即位を早められると思い立った兼家ら。道兼が花山天皇の妻を亡くした悲しみを煽り、彼に自分と一緒に出家しないかと誘います。しかし、道兼には出家する気持ちはなく、彼は花山天皇をひとりで出家させることに思惑どおり成功します。
花山天皇は権力争いがうずまく当時のトップとしてはあまりにもセンシティブで情熱的であり、純粋すぎたのでしょう。個人的な思いや妻への愛を抑えて、帝としての地位を固守しようとする性格ではなかったのかもしれません。
また、花山天皇の退位のはやさは目立つ寄行によるという説もあります。例えば、即位式の直前、性行為を高御座で行ったエピソードや、即位式の途中に冠を暑いからと投げ捨てたエピソードがあります。また、幼い頃から周囲の目に付くような特徴があったため、彼の即位に反対の声があったとかなかったとか。
さらには、出家してからも藤原為光の四女と恋愛関係を結んだり、複数の子どもを授かったりするなど、女性問題が頻発しています。現代においても恋愛体質の男性や女性依存の男性は少なくありませんが、花山天皇は女性が傍にいなければならないタイプなのでしょう。
風流を愛する穏やかな人柄がしのばれる。おそらく「ガラではなかった」だろう
しかし、花山天皇は和歌の才能に恵まれるなど、クリエイティブな人物。出家後は風流をこととし、仏時にも積極的だったといわれています。また、彼が詠んだ33の寺に残る歌は、参拝者に御詠歌として唱え続けられています。
おそらく、花山天皇は兼家らほどには政権の掌握にこだわっていなかったのかもしれません。天皇は序列に従って即位したため、本人の意思が問われることはありませんでした。花山天皇は自分の宿命を受け入れてその座に就き、革新的な政策をすすめるなど活躍もしますが、その地位の重さが彼の枠にはまらない気質を浮彫にしてしまったのです。
本作では花山天皇の風変りな特質ばかりを強調するのではなく、若さゆえのとまどいや孤独についても細やかに描かれています。そして、花山天皇を演じる本郷奏多は花山天皇の複雑な心境や孤独を表情や巧みな演技で見事に表しています。
参考文献
・堀江宏樹 『学校では習わない 愛と夜の日本史スキャンダル』
・砂崎良『平安 もの こと ひと事典』
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