「2040年、教育格差により日本は階級社会になる」そのとき必要な能力とは【池上彰の未来予測・後編】

2024.07.13 WORK

2040年、教育格差により日本は階級社会になる

都市部では、中学受験が過熱しているというニュースをよく見かけます。

ただ私立中学の受験が過熱しているのは、全国的な現象ではなく、首都圏や関西圏、および広島県くらいで、それ以外の地域では基本的に公立志向なのだそうです。

 

「中学受験のために小学生の頃から塾に通う都市部の子どもたちと、公立志向のために地元公立小・中学校に通い、高校受験で公立高校を目指し、大学受験で地元国立大学を目指すという地方の子どもたちとでは、見ている世界が大きく違ってくることになります。

 

公立であれ私立であれ、質の高い教育を受けられるのならば、問題にはなりません。ただ2040年に向けて、教員不足がこのまま続き、公立小・中学校の教育の質の低下が起きてしまうとすれば問題です。高い教育費をかけられて私立の学校に通い高度な教育を受ける都市部の子どもたちと、地方の子どもたちとの間で、教育格差が大きくなってしまうことになるのです」

 

教育の質に差が出てきしまうなら、より質が高いところに行かせたいと親がのぞむのは当然。ただ、それには私立中学に通わせる学費だけでなく、高額な塾の費用も必要になってくる。

 

「つまり親の経済力の格差が、子どもの教育格差に直結する。日本が格差社会、階級社会になってしまいます。
しかし教育に『課金』すれば必ず東大に行けるというわけではありませんから、「親の所得が高い子どもが東大に入る」現象には別の理由も隠れています。

 

高所得層の親の多くは規則正しい生活習慣をしていて、朝ご飯を子どもにしっかりと食べさせ、親自身が家で読書をしていたり、政治経済や社会問題に関するニュースに日頃から触れていたり、仕事や趣味に関する勉強をしたりしています。子どもが親のそうした文化的習慣を見て『自ら学ぶ力』を得、東大に入れるレベルの学力に行きつく、というわけなのです」

 

冒頭でもお伝えした通り、これから未来を生きていく子供たちにとって、「詰め込み学習で得た知識」だけでは足りない。変化のはやい時代においては、幅広い教養と、変化する社会に対応するために学び続けることが大事になってくる。

 

そのためには、自分の意思が伴わない強制的な学習だけではなく、好奇心や興味から生まれる主体的な学習をできるか子供に育てることが重要だ。

 

そう考えると、遊びの中で育まれる観察力や好奇心を育てることもポイントであり、かつ一方で教育格差が生まれていることも事実なので、遊びと勉強のバランスを意識することが親としてできる最良のことなのかもしれない。

 

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『池上彰の未来予測 After 2040』(池上彰著/主婦の友社刊)

<著者プロフィール>

1950年、⻑野県松本市⽣まれ。慶應義塾⼤学卒業後、1973年にNHK⼊局。報道記者としてさまざまな事件、災害、消費者・教育問題などを担当。1994年からは11年にわたりニュース番組のキャスターとして「週刊こどもニュース」に出演。2005年よりフリーのジャーナリストとして執筆活動を続けながらテレビ番組などでニュースをわかりやすく解説し、幅広い⼈気を得ている。また、5つの⼤学で教鞭をとる。『池上彰が⼤切にしているタテの想像⼒とヨコの想像⼒』(講談社)『池上彰のこれからの⼩学⽣に必要な教養』(主婦の友社)など著書多数。

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