円形脱毛症の治療法は?「頭皮に注射」⁉特定の免疫を抑える新薬も!(後編)【ヘアロス】

誤解や偏見の多い疾患のひとつ「円形脱毛症」。髪だけでなく全身の毛が抜けてしまうこともあり、治療が難しい疾患です。円形脱毛症の治療法について、脱毛症外来のある東京医科大学の入澤亮吉先生に伺いました。

 

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ヘアロス #5

 

円形脱毛症の治療法は? 特定の免疫の働きを抑える新薬、22年に承認

小さな脱毛斑の場合は自然に改善してしまうこともありますが、徐々に多発化したり、拡大したり、何度も再発する場合は早めに皮膚科を受診しましょう。とくに急激に頭部全体に毛髪が抜けてきたときは、早期のしっかりとした治療が有効なことがあります。

 

日本皮膚科学会が発表している「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」ですすめられている治療として、ステロイド局所注射、局所免疫療法、ステロイド外用療法などがあります。単発型、多発型などの種類によって治療法が異なります。

 

 

●ステロイド内服、ステロイド点滴

ステロイドには免疫抑制作用があります。毛包の周囲に浸潤しているリンパ球の機能を抑える作用によって発毛を促します。ステロイドの全身投与は有効ですが、ステロイドはリンパ球のみならず人のほとんどすべての細胞の機能も抑えてしまう作用があるため、全身的な副作用があります。急速進行型に対して短期間の使用に限られます。点滴での全身投与には通常、入院が必要になります。

 

 

●ステロイド外用薬

副作用が少ないため、最も一般的に行われる治療法です。脱毛が広範囲の場合はほかの治療法と併用されます。

 

 

●ステロイド局所注射

脱毛部位に副腎皮質ステロイドを直接皮内に注射します。効果は非常に高いですが、注射による痛みを伴うのが難点です。また、脱毛部位が広いと注射回数も多くなるため、あまり広範囲なものには向きません。汎発型の場合、まゆ毛のみに打つことは可能です。4~6週に1回の割合で始めていきます。

 

 

●紫外線療法(エキシマライト、エキシマレーザー)

高出力の紫外線を脱毛斑に照射することで、毛包周囲のリンパ球や抗原提示細胞(Langerhans 細胞)の機能を抑制します。週1~2回の照射が必要です。

 

 

●局所免疫療法

自然界には存在しない合成物質SADBE、DPCPは、ほとんどすべての人がかぶれる物質です。これを脱毛部位に外用し、アレルギー性接触皮膚炎(かぶれ)を繰り返し起こすことで免疫バランスを変化させ、円形脱毛症の改善をねらったものです。

局所的なかぶれという副作用はありますが、全身的な副作用はほとんどないので安心して継続できる治療法です。保険適応外で自費診療になりますが高額ではありません。

 

 

●JAK阻害薬(オルミエント®/リットフーロ®)

オルミエント®は、2022年6月に円形脱毛症に対しての適応が承認された新薬。円形脱毛症にかかわる、細胞のJAKという部分を選択的に抑える内服薬です。関節リウマチの治療薬として、アトピー性皮膚炎やSARS-CoV-2(新型コロナウイルス感染症)による肺炎の治療薬としても承認されています。おおむね50%以上の脱毛をきたしていて、難治な場合が適応となります。ステロイド全身投与ほどの副作用がないので、長期使用できるのが特徴です。

また、2023年9月にはJAK/TEC阻害薬であるリットフーロ®が発売になりました。オルミエント®が15才以上に適応があるのに対し、リットフーロ®は12才以上に適応があり、青少年での治療法の選択肢が増えました。

 

 

 

>>どのくらい治療すると、髪が生えてくるの? 予防する方法は?

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