学びなおしの入り口が見つからない…「どうせ私なんか」と口にしがちな人こそ「最高の能力」を秘めているこれだけのワケ
老後資金は2000万で足りるの? 明らかに足りない場合、もしや80歳近くまで働き続けないとならない? ならばやはり「リスキリング」をしなければならない?
「学習学」を提唱する京都芸術大学客員教授の本間正人先生は「学ばねばならぬというその気持ちそのものに、つらさがありませんか?」と問いかけます。「本来、学びとは楽しいことであり、努力をしなければならないことではないはずなのです」。
前編記事『100年学習時代に「三日坊主な人こそが成功する」深いワケとは?学びのプロが語る「勝手に深まる学び」の見つけ方』に続く後編です。
「三日坊主でいつも続かない」と自己否定する人が「見落としている」最高の能力とは?
――夏休み、子どもが動画ばかり見ていることに腹を立てる必要がないことを前編で理解しました。とはいえ、そんなに動画ばかり見ても何も身につかないのにとやきもきします。
政府はIT分野のリスキリングに予算を集中投下していますが、これらはどんどんAIに代替されていく分野ですから、人間にしかできないことは何なのかを考えることが大事です。
私は、キーワードは身体性だと考えています。たとえば、加齢に伴う五十肩、日本人の半分が苦しむ腰痛、日本人と韓国人が世界でいちばん短い睡眠。学ぶと思うと何でもイヤになるものですが、こうした身体トラブルを認識し、きれいになる、健康になるというポジティブなことがゴールならばどうでしょうか。お金の多寡と幸せは正比例しないと多くの人が感じている時代ですが、その答えがこれらウェルビーイングという言葉にあります。
――子どもばかりでなく親である私も、何かを始めるところにこぎつけたとしても、毎回三日坊主で続かないのが悩みです。継続は力なりと言いますが。
逆に、三日坊主こそが成功の秘訣です。私はいろいろなことにどんどん手を出すことをお勧めしています。だって、お洋服を試着して似合わないなと感じて棚に戻す、その一連の行為はすでに学びですよね。洋服を前にどれが似合うかしらと迷っているだけでは一歩も前に出ませんから、まず試着してみた自分に拍手を送りましょう。
自分らしさを生かす学びをとことん見つめていいのだと思います。「継続は力なり」と学校教育は言うので、何かを始めたら最後までやり続けないとならないと思いこまされていますが、辛くても苦しくても続けることが尊いという価値観は私たちを幸福にしません。そうではなく、自分に合うこと、努力しなくても続けられることを探し出すことに注力すべきなのです。
「私べつに人より得意なこともないし……」自分の長所はどうすれば見つけられる?
――自分にとっての強みが何なのかを、子どもに対しても、自分も、再認識するということですね。
ところが、大谷選手みたいに毎回同じ軌道でバットを振れることが「自分にとって何なのか」と言われても、自分ではなかなか認識できないものです。
たとえば、保育士で子どもが泣き止ませることが天才的にうまい人、清掃で秒で汚れを落として回るため明らかにその人が担当したフロアの美しさが違う人などはよくいらっしゃるものですが、そうした技術の比較基準がありません。ルールを決めてる人たちが言語情報処理能力で評価軸を設定している世界だからです。
江戸時代ならば剣術使いがもっと評価されていましたし、縄文期ならば力持ちな人や魚釣りがうまい人、火をつけるのが早い人が評価されたでしょう。これらはすべて命を支える営みに直結しています。こうした自己評価を適切に行うには、他人の目線も取り入れるといいでしょう。
――客観的アドバイザーに自分の長所を見つけ出してもらう、たとえばコーチングのようなことでしょうか?
その通りです。私は97年に国際コーチング連盟の資格を日本ではじめて取得し、すでに27年コーチをしています。腕のいいコーチと30分話せばだいたい自分の強みが見つかります。ですから、何かを始めたい人は、コーチングに投資してみる価値があります。
たとえば、住んでる住所と「プロのコーチ」で検索してください。また、コーチングスクールはコーチとクライアントのマッチングをやっているので、そのサービスも利用できます。「コーチを探すサイト」と検索してみてもいいでしょう。
価格はピンキリですが、たとえば月2万円のコーチがお試しコーチングを30分無料で行っているケースもあります。最初に予算を決めておき、何人かお試しをして相性を見て、納得がいけばその先に進めるといいでしょう。
予算は、まず「我が子の家庭教師や塾、習い事に月いくらまでかけていいか」を考えてみてください。私はその額をご自身に投資してみてほしいと常日頃から言っています。期間の目安は3か月ほどでしょうか。逆に3か月やってみてもゴールが見えない場合、そのコーチとの相性がよくないので、別のコーチを探してください。
毎日少しずつ振り返り、義務感なく楽しく記録をとる。「せねばならぬ」を手放すことが大事です
――自分が「達成した」という感覚を得て、より学びを深めるために、何ができるのでしょうか。
生きてることとはそのすべてが学びであり、本来私たちは毎日学んでいます。毎日、寝る前1分でいいから振り返ってみてください。今日1日何がありましたか? 今日のアジフライの揚げ加減はよかった。今日の会話でのあの返しはよかった。そんな小さな学びは日常にあふれているのに、流れて忘れてしまう。それだけのことです。
そんな日常のところどころでシャッターを押して静止画にすると、切り取れる場面が必ずあります。できれば記録もしましょう。ただし義務にならないこと。鍵アカのインスタに毎日投稿するのもいいですよね、書きっぱなしでいいです。これを落ち込んだときとかに見返すとすごく励みになるけれど、見なければならないと考えると辛くなるので、とにかく義務感を手放すことです。
日本人はまじめですから、努力を貴び、やらなければならないと感じがちです。でも、努力する能力というものはみんなが持って生まれるわけではありません。桜梅桃李(おうばいとうり)という言葉があります。桜は梅になりませんが、みんな満開の桜として咲けると思い込んで努力を続けている。そうではなく、無理なく続けられる自己ベストの更新だけが、結果的にその人のポテンシャルをフルに開花させるのです。
『100年学習時代』本間正人・著 2,300円+税/BOWS&PARTNERS
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