鬱々とした世の中だからこそ、江戸の“家族”観を超えていく。蔦重とてい、そして母との再会が描く「本当の絆」とは?【NHK大河『べらぼう』第26回】

2025.07.08 LIFE

*TOP画像/蔦重(横浜流星) てい(橋本愛) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」26話(7月6日放送)より(C)NHK

 

吉原で生まれ育ち、江戸のメディア王に成り上がった蔦重の人生を描いた、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合)の第26話が7月6日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

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視聴者と同じく、米の値“倍”に頭を抱える蔦重

江戸の町 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」26話(7月6日放送)より(C)NHK

 

米の不足により価格が昨年比で約2倍に高騰していますが、備蓄米の放出により、米不足や価格高騰が少しずつ落ち着いてきているようです。そうはいっても、従来のように、おいしいお米をお財布にやさしい値で購入するのはまだまだむずかしそうですね…。

 

本放送はまるで現代の世の中を映し出しているかのように、現在の世相と共通していました。米不作の中で米の値が上がることを期待し、売り惜しむ人たちがいる状況は現在ウワサされている米不足の原因の1つにも共通しています。また、老中・忠友(小松和重)の「次が豊作になれば米の値は戻るわけですし」という台詞、南畝(桐谷健太)の「ほんとは米なんて余りまくってんだろうな」という台詞は筆者にとっても耳慣れたものでした。

 

蔦重は人びとが米に困るような世の中では本を買ってもらえないことをよく分かっています。このことは私たちが生きる現代社会にも通じています。多くの人にとって米は必需品ですから、米は高くても購入するしかありません。給与が増えるわけではないので、本や洋服、美容などの支出項目を削って調整します。そうなれば、他の産業も乏しくなる。“自分は米を食べない” “農家とは関係ない”と思っていても、めぐりめぐってそうはいかないものです。

 

南畝は米屋の前で米を購入できずに疲弊した人たちの姿を見て、現状の厳しさを感じ、「米! 来~い!」と言霊を天に向かって投げつけ、めでてえ世にすることを思いつきます。蔦重は南畝の姿に感化され、正月にめでてえ、めでてえという狂歌集を出版し、“本当にめでてえ世の中”を目指そうと決めました。

 

現代社会においても、多くの人たちも厭世的で、口にする言葉といえば“日本はもうだめだ” “なにもかもが値上がりし、生活が苦しい。つかれた”といったマイナス的なものばかりだと思います。私たちの社会でも“江戸一のお祭り男”である蔦重のような人がめでてえ世の中にするために盛り上げてくれたら、私たちの気持ちも少しは晴れる気がします。

 

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