「呪いが呼ぶのは破滅か、それとも救いか」誰袖の悲しみの果てに見えた“江戸の笑い”と蔦重の原点【NHK大河『べらぼう』第29回】

2025.08.05 LIFE

*TOP画像/誰袖(福原遥) 蔦重(横浜流星) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」29話(8月3日放送)より(C)NHK

 

吉原で生まれ育ち、江戸のメディア王に成り上がった蔦重の人生を描いた、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合)の第29話が8月3日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

 

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鶴屋の主人のアイデアで“二代目金々先生”の登場か…

米不足などで暮らしが脅かされると、私たちは声を上げてガハハと笑うことが少なくなります。こうした世の中で、蔦重(横浜流星)は手拭いの男を使い、腹がよじれるほど大笑いできる黄表紙を作ろうと試みました。

蔦重(横浜流星) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」29話(8月3日放送)より(C)NHK

また、蔦重がおもしろい黄表紙を作りたいと考えるのにはもう1つ理由があります。その理由とは、意知(宮沢氷魚)の仇を討ち、誰袖(福原遥)の笑顔を取り戻すことです。

 

春町(岡山天音)や政演(古川雄大)、南畝(桐谷健太)といった当代を代表する作家たちが蔦重の店に集い、どのような作品にするか話し合いを行っていました。テーマのしばりは手拭の男を使うことのみ。政演が「絶世の美女が ひょんなことから こいつの顔になっちまうってのはどうです?」と提案すると、“ひょんなことからこの男が一寸法師になる” “ひょんなことからこの男がまことのことしか言えなくなる”などアイデアが次々と出ます。

 

ひょんなことから〇〇になるシリーズにみんなが拘っていると、鶴屋の主人・喜右衛門(風間俊介)が訪れました。そして、「二代目金々先生っていうのはいかがでしょう?」と提案しました。金々先生は青本を大いに流行らせた立役者であり、本を再び流行らせるには二代目金々先生がよいとのことです。さらに、大流行する作品に仕上げるなら、鶴屋お抱えの政演を蔦重に貸すという太っ腹ぶり。

 

一カ月後、政演の原稿が仕上がると、耕書堂にみんなが再び集まりました。南畝の評価は「上上吉」と高いものの、「極」は付けられないと…。十分に高い評価ではあるものの、出版不況の中で大ヒットを期待するのはむずかしそうです。

 

また、てい(橋本愛)は「このお話の どこが面白いのか分からず…」と感想をストレートに口にしていました。田舎出で、世慣れしない若者が江戸で騙されることをおかしいというよりも、気の毒だと思ったのです。

 

てい(橋本愛) 蔦重(横浜流星) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」29話(8月3日放送)より(C)NHK

さらに、新之助(井之脇海)は「俺は 一旗揚げようと江戸に出てくるのも 引っ掛かる」と口をはさみました。今のご時世、田舎から江戸に出てくるのは飢えた流民ばかりで、成功を求めて渡ってくる人はほとんどいないとのことです。このため、今のご時世には合わないよう…。

 

新之助のこの言葉を聞いて、筆者は現代の東京をふと思い浮かべました。今も東京で一旗揚げるために上京する若者たちがいるものの、地方で仕事がなく、東京に流れてくる人もいます。多くの若者たちが大きな夢を抱いて都会を訪れる背景には、世の中の活気が必要だと改めて感じました。

 

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