42歳女性「再婚したけど、前夫からの養育費がないと生活が苦しい」現夫と養子縁組してないなら、養育費はもらえる?【行政書士が解説】

今回の相談者・杏里さん(42歳、パートタイマー、年収110万円)は6年前に離婚。夫のDVで足を骨折させられ、そのままの状態で息子さんを出産するという壮絶な過去を経験したのですが、もちろん、結婚生活を続けられるわけがなく、家庭裁判所の調停で離婚が成立。杏里さんが息子さんの親権を持ち、元夫が毎月6万円の養育費を支払うという条件だったのですが、最初の5年間は欠かさず振り込まれていました。

 

しかし、6年目に突然、振込が止まったのです。杏里さんは離婚4年目に再婚したのですが、元夫にそのことを知られてしまったのです。しかし、杏里さんの家庭も決して余裕があるわけではなく、養育費をあきらめきれず、元夫に再請求する道を模索していました。なぜなら、再婚相手と息子さんは養子縁組していなかったからです。どうすれば良いのでしょうか?

 

<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は相談時)>

夫:松本健斗(42歳)会社員(年収500万円)
妻:松本杏里(41歳)パートタイマー(年収110万円) ☆ 今回の相談者
長男:松本翔也(6歳)桔平と杏里との子
元夫:羽田桔平(45歳)会社員(年収500万円)

 

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『酒乱夫に骨折させられたまま出産、勝手に自宅解約。壮絶な離婚後、DV前夫からの養育費6万円の振込が停止! どうしたら支払ってもらえる?【行政書士が解説】』

 

【行政書士がみた、夫婦問題と危機管理 #19 】後編

 

 

再婚したのに養育費をもらうのは悪いような…でも…!

杏里さんは「一人で息子を育てていたとき、元ダンから養育費をもらうのは当然だと思っていました。でも、再婚したとき、今ダン(現夫)には息子のことを『自分の子どもだと思って欲しい』と頼みました。だから元ダンが養育費を払いたくなって言うのも分かるんです」と懺悔します。

 

母子家庭で子どもを育てている場合も再婚して夫婦で育てている場合も養育費が同じ金額なのでしょうか。実際のところ、離婚時と比べ、扶養関係に変化が生じた場合、養育費を変更することは法律(民法880条)で認められています。筆者は「前の旦那さんはは必ずしも身勝手なことを言っているわけではありませんよ」と言い添えました。

 

では再婚相手の存在は子育てに対し、どの程度の影響があるのでしょうか。杏里さんはパートタイマーです。息子さんを扶養に入れても勤務先から扶養手当は支給されないし、扶養控除するほどの所得税を納税していないので、金銭的なメリットはほとんどありません。そのため、再婚相手の扶養に入れていますが、その結果、再婚相手は勤務先から扶養手当が支給され、扶養控除で所得税が安くなっています。

さらに再婚相手が食費や水道光熱費を負担していますが、そのなかには息子さんの三食の食事、息子さんの部屋の電気、息子さんが入る風呂や飲む水の分が含まれています。杏里さんは「それなのに元ダンから養育費をもらうなんて無理でしょうか?」と不安な顔を浮かべます。

再婚の職業はトラックドライバー。2024年の法改正で時間外労働が年960時間(月80時間)に制限されたため、手取り額が3分の2に減少したそう。杏里さんは「それまで主人の手取りは42万円でした。でも今じゃ28万円まで落ち込んでしまって…」と嘆きますが、杏里さんの手取りは8万円程度。一方で直近の支出は以下の通り、40万円なので元夫からの養育費がなくなると毎月4万円の赤字に転落します。

<支出の内訳>
家賃      110,000円
光熱費     30,000円
食費      50,000円
夫の昼食代   50,000円(トラックの運転手はパーキングエリアで割高な食事をとらざるを得ないため)
自動車ローン  30,000円
自動車保険   8,000円
ガソリン代   15,000円
携帯通信費   15,000円
医療保険    15,000円
医療費     7,000円
日用品     20,000円
雑費      25,000円
妻の奨学金返済 30,000円
計 405,000円

 

 

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養育費は、現夫と養子縁組をしているか否かが重要

そこで筆者は杏里さんに尋ねました。「息子さんと今の旦那さんは養子縁組しているのでしょうか?」と。残念ながら縁組をしている場合、養育費はゼロです。なぜなら過去の裁判例(神戸家裁姫路支部審判・平成12年9月4日仙台高裁・昭和37年6月15日など多数)によると、実父(元夫)に養育費の負担義務がないという判断を示しているからです。子の扶養義務は実父(元夫)より養父(再婚相手)の方が優先するというのがその理由です。

しかし、杏里さんは「いや、息子は今ダンの養子にはなっていないです」と答えます。それなら助かる道はあります。筆者は「元妻が再婚し子どもと再婚相手が養子縁組していない場合、養育費は免除(ゼロ)ではなく減額で済まされた判例がありますよ(令和4年5月13日、宇都宮家庭裁判所の決定)」と紹介しましたが、具体的な計算方法は以下の通りです。

 

【杏里さんの場合の養育費額計算方法】
1.再婚相手の年収を0.4倍(基礎年収)した上で再婚相手を100、妻(杏里さん)と連れ子(息子さん)を62とし、連れ子÷再婚相手+妻+連れ子の係数を算出し、再婚相手の基礎年収を掛けます。

2.元夫、元妻の0.4倍し、基礎年収を算出します。

3.元夫を100、子どもを62とし元妻の子÷元夫+元妻の子の係数を算出。元夫の年収に係数を掛けると「子どもの生活費」になります。

4.子どもの生活費×元夫の基礎年収÷元夫の基礎年収+元妻+再婚相手の係数が妥当な養育費の金額です。

 

再婚相手の年収は600万円、杏里さんは扶養の範囲内で働いているので110万円です。一方、元夫の年収ですが、現在の稼ぎは分からないけれど、5年前は500万円だったそう。
これらの数字を上記の計算式に当てはめると養育費は毎月4.2万円が妥当な金額です。

 

そこで杏里さんは「養育費をもらっちゃいけないのは、今ダンと息子が養子縁組している場合だよ。でも縁組していないの。信じられないなら戸籍謄本を見せてもいいよ」と前置きした上で「養子縁組していない場合、あなたにも養育費の支払義務があるの。裁判所の計算式だと毎月4.2万円です。私たちにはあなたからの養育費が必要なんです!今さら離婚のときのことを蒸し返すつもりはないから、4.2万円だけ払ってください、お願いします!!」とLINEを送ったのです。

杏里さんにとって賢明な訴えでしたが、LINEは既読になったものの、返事はありませんでした。しかし、翌月の末日には元夫から4.2万円が振り込まれてきたのです。

 

ここまで、一度は養育費の振込が止まってしまってから振込を復活させるまでの杏里さんの悪戦苦闘を紹介してきました。2024年の再婚率は24%(婚姻全体は485,092組。そのうち再婚は117,518組)。10年前(2014年)は26%(婚姻全体は643,783組。そのうち再婚は169,987組)なので、横ばいで推移しています(厚生労働省の人口動態統計)。このなかには「再婚したんだから今の主人と一緒に何とかしないと」と養育費をあきらめてしまった人もいるかもしれません。

しかし、再婚相手と子どもが養子縁組していなければ養育費の支払を残すことが認められています。再婚相手に十分な収入があり、元夫からの養育費が不要な場合はともかく、あまり生活に余裕がない場合は元夫に請求することを考えてみてはいかがでしょうか。

 

<出典>

令和3年度全国ひとり親世帯等調査
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/f1dc19f2-79dc-49bf-a774-21607026a21d/9ff012a5/20230725_councils_shingikai_hinkon_hitorioya_6TseCaln_05.pdf

内閣府の男女共同参画局(配偶者暴力相談支援センターへの相談件数)
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/data/pdf/dv_data_01.pdf

厚生労働省の人口動態統計(2024年)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei24/dl/03_h1.pdf

厚生労働省の人口動態統計(2014年)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei14/dl/03_h1.pdf

厚生労働省の人口動態統計(2023年)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411838

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