「コーヒーが一杯600円…⁉」専門店とコンビニは何が違う?スペシャルティコーヒーって結局なんなの?【プロが解説】

2026.07.16 LIFE

「専門店のコーヒーって、結局何が違うの?」と思ったことはありませんか?コンビニやチェーン店でもおいしいコーヒーが飲めるのに、専門店の一杯は少し高め。豆の種類もたくさんあって、なんとなく敷居が高く感じる人もいるかもしれません。

本記事では、スペシャルティコーヒーブランド『Beans. Coffee&Roasters』を創業した坂本翔氏の著書から、コーヒーの「グレード」についてご紹介します。

※本記事は書籍『毎日がちょっと楽しくなる コーヒーのはじめ方』(坂本 翔:著/ Gakken)から一部抜粋・編集したものです。
※イラスト:山本あゆみ

 

専門店のコーヒーって何が違うの?

店内を見渡すと、カウンターにはいくつものコーヒー豆が並んでいた。そばには産地の名前やフレーバーの説明が書かれている。コーヒーの価格もいつも飲んでいるものより高い。自分の知っているコーヒーとは、明らかに違う世界に、戸惑いを感じてしまう。

Kaoruは、都内でSEとして働く会社員。出社の日の朝は、駅前のコンビニでコーヒーを買うのが日課。ある日、家の近所にコーヒースタンドがオープンした。これまで入ったことはなかったが、この日はふと足が止まり、店のドアを開けた。

Kaoru

Sakamoto(コーヒースタンドの店主)

Kaoru:コーヒーの種類も、本当にたくさんあるんですね。あの……専門店は初めてで、どう頼めばいいのかよく分からなくて。

Sakamoto:普段どのようなコーヒーを飲まれているか教えていただければ、おすすめをご提案いたしますよ。

Kaoru:すみません、こんなこと聞いていいのかわからないんですけど……。

Sakamoto:もちろんです。なんでも聞いてください。

Kaoru:僕は普段、150円くらいのコンビニのコーヒーを飲むことが多いんです。チェーンのカフェでも飲むのは500円くらいまでなんですが……。こちらのコーヒーは600円〜と少し値段が高いですよね。どこで飲むかによって、どうしてこんなに値段が変わるんでしょう?

Sakamoto:ご質問ありがとうございます。たしかに、そう思われますよね。実は、その価格の違いには、コーヒーの「グレード」が関係しているんです。

Kaoru:グレード……ですか?

Sakamoto:ええ。コーヒーにも品質の基準があり、それによって価格も変わってくるんです。一般的に流通しているコーヒーと、専門店で扱われているコーヒーとでは、その基準が少し違うんですよ。

Kaoru:そんな違いがあったんですね。

Sakamoto:もしよろしければ、コーヒーの基本から少しお話ししましょうか。

 

スペシャルティコーヒーとは

朝に自動販売機で買う缶コーヒー、休日に専門店でゆっくり味わう一杯――。同じ「コーヒー」でも、その品質には大きな幅がある。コーヒーは、品質や流通量によって、大きく4つのグレードに分けられることが多く、ピラミッドの形に例えて表現される。

ピラミッドの一番下にあるのは、缶コーヒーやインスタントコーヒーなどに使われる「ローグレードコーヒー」。風味より価格の安さが重視される。深めに焙煎されているものが多く、豆本来の個性を感じにくい。

その上に位置するのが、スーパーのレギュラーコーヒーやドリップバッグ、コンビニコーヒーなどに多く用いられる「コマーシャルコーヒー」。安定した供給が重視されており、生産量が多く、私たちが日常でもっとも目にする機会の多いグレードといえる。

そのさらに上が「プレミアムコーヒー」。産地や農園の情報が一定程度明らかにされており、品質が高く、味わいにも個性が感じられるコーヒー。

そして頂点にあるのが「スペシャルティコーヒー」。どこで、誰が、どのように手がけた豆なのかを明確にたどることができ、香りや味わいの質も非常に高いのが特徴。

 

スペシャルティコーヒー
生産者や農園の情報が分かるだけでなく、品質管理が徹底され、香りや味わいが優れている。

プレミアムコーヒー
生産者や農園の情報が分かり、品質が高い。

コマーシャルコーヒー
大量生産されて、もっとも流通量が多い。スーパーやコンビニなどで販売される。

ローグレードコーヒー
価格の安さ重視で風味が劣る。缶コーヒーなどの原料として使われる。

 

有名チェーンのコーヒーは、どのグレード?

有名なコーヒーチェーンでも、スペシャルティグレードの豆が使われていることは珍しくない。

ただし、世界中で同じ味を安定して提供するため、焙煎をやや深めにおこない、豆の水分を飛ばして賞味期限を長く保てるように仕上げている場合が多い。その分、豆本来の繊細な香りや風味は感じにくくなることもあるが「世界規模でコーヒーを届ける」ためには必要な選択。

一方、スペシャルティコーヒー専門店では「その豆がもっともおいしく感じられる状態」を優先して提供しており、この点が両者の大きな違いとなっている。

 

スペシャルティコーヒーの定義

近年、「スペシャルティコーヒー」という言葉を目にする機会は増えているが、その意味を正確に説明するのは意外と難しい。スペシャルティコーヒーの基準は国や地域によって少しずつ異なり、世界でひとつに統一された定義が存在するわけではない。

ただし、どの国においても「風味のおいしさ」「生産や流通の透明性(トレイサビリティ)」「持続可能性(サステナビリティ)」という3つの要素が重視されている。

日本でスペシャルティコーヒーの普及やコーヒー文化の発展を目的に活動している日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)では、スペシャルティコーヒーの定義を以下のように示している。

 

スペシャルティコーヒーの定義

消費者(コーヒーを飲む人)の手に持つカップの中のコーヒーの液体の風味が素晴らしい美味しさであり、消費者が美味しいと評価して満足するコーヒーであること。

風味の素晴らしいコーヒーの美味しさとは、際立つ印象的な風味特性があり、爽やかな明るい酸味特性があり、持続するコーヒー感が甘さの感覚で消えていくこと。

カップの中の風味が素晴らしい美味しさであるためには、コーヒーの豆(種子)からカップまでの総ての段階において一貫した体制・工程・品質管理が徹底していることが必須である。(From seed to cup)

具体的には、生産国においての栽培管理、収穫、生産処理、選別そして品質管理が適正になされ、欠点豆の混入が極めて少ない生豆であること。そして、適切な輸送と保管により、劣化のない状態で焙煎されて、欠点豆の混入が見られない焙煎豆であること。さらに、適切な抽出がなされ、カップに生産地の特徴的な素晴らしい風味特性が表現されることが求められる。

日本スペシャルティコーヒー協会は、生産国から消費国にいたるコーヒー産業全体の永続的発展に寄与するものとし、スペシャルティコーヒーの要件として、サステナビリティとトレイサビリティの観念は重要なものと考える。

引用:日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)「スペシャルティコーヒーの定義」

 

スペシャルティコーヒーの3つの要素

まず重視されるのは、飲み手がはっきりとおいしいと感じられる「カップのクオリティ」。コーヒーのおいしさとは、香りや酸味、甘み、後味のバランスがよく、雑味や欠点が少ないことを指す。

専門家によるテイスティング(カッピング)で評価され、一定の基準を満たしたものだけがスペシャルティと認められる。

味わいと同時に、コーヒーの背景を説明できることも大切な要素。どの国の、どの地域で、誰が育てた豆なのか。そうした情報が把握できることを「トレイサビリティ」と呼ぶ。

さらに、無理なく続けていける仕組みの中でつくられていること「サステナビリティ」も、スペシャルティコーヒーの大きな特徴。自然環境や生産に関わる人々にも配慮することで品質が保たれ、農園を長く続けながら、その地域のコーヒー産業を次の世代へと受け継いでいくことができる。

また、品質が正しく評価されることで、生産者は価格競争に巻き込まれにくくなり、適正な報酬を得やすくなる。スペシャルティコーヒーの基準は、生産から消費までの関係を健全に保つことにもつながっている。

 

カップのクオリティ(おいしさ)
カップの中のコーヒーの味わいが、はっきりと優れている。香り・酸味・甘み・後味のバランスがよく、雑味や欠点が少ない。

トレイサビリティ(生産・流通の透明性)
どこで、誰が、どのようにつくったかが分かる。農園や生産者などの情報が開示され、背景を説明できる。

サステナビリティ(持続可能性)
高い品質での生産を無理なく続けていける仕組みがある。環境や生産者に配慮されており、生産者に適正な報酬が届く。

 

ここまでの記事では、コーヒーの「グレード」についてご紹介しました。関連記事では、教養として知っておきたい「コーヒーの2050年問題」についてお届けします。
>>「2050年問題」そのうち、コーヒーが飲めなくなる!? 今、私たちが知らない裏側で何が起きているのか。原因とこれから訪れる影響は?

 

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著者:坂本 翔(さかもと・しょう)
1990年生まれ、神戸市出身。行政書士を経て、SNSマーケティング事業を創業。SNS専門書を中心に商業出版を重ね、著書は累計20万部を突破。SNS戦略の第一線で活躍する傍ら、全国のコーヒー店を巡り独学でその理論と技術を確立。起業10周年の節目に、スペシャルティコーヒーブランド『Beans. Coffee&Roasters』を創業。オンラインショップから開始し、5ヶ月後には神戸に実店舗を、1年4ヶ月後には2店舗目をオープン。著書に『SNSマーケティングは7日間でわかります。』(Gakken)、『SNSで宣伝するな』(KADOKAWA)などがある。

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