岩井志麻子 なんだか「老後が不安」と感じている40代へ

通院や薬が必要なほどではなかったが、十年くらい前に妙な不安感に常に覆われ、夜眠るのが怖かった時期がある。このまま目が覚めずに死ぬんじゃないか、と。

別に持病もなく、心配事も細かいことをいちいち挙げればきりがないが、仕事も家庭も全般的にはまあまあうまくいってたのに。四十半ばだったから、リアルな老後の心配ってんじゃないにしても、人生の折り返し地点は過ぎたな、とは感じていた。

 

40代半ばにいわれた、ある言葉

そのとき吹っ切れたのが、誰にいわれたか思い出せないんだけど、こんな言葉だった。

「会社や外出先で、ふとドアに鍵かけたかな、ガスの元栓ちゃんと締めたかな、煙草の火を消したかな、と不安になることは誰だってある。それを不安症、神経症といっていえなくはない。すべての人に病名がつけられる。

もし火事になったらどうしようと、いてもたってもいられなくなるようなら、ちょっと病的だけど。逆に、火事になったってへっちゃらですよ、家なんか燃えたって別にどうってことないや、なんてまったく何も不安に感じない人がいたら。それって、健全な精神状態なのかな。病名つかなくても、そっちの人の方がヤバいよ」

 

不安があるからこそ

誰だって、何かの不安を抱えている。今どんなに若くて健康でも、この先も絶対に病気にならない怪我をしない、ってことはない。また、誰だって歳は取る。

今お金持ちで仕事も順調でも、いつ何でそれらを失うかわからない。今は熱烈に愛しあう二人にも、心変わりや別れはある。不安があるからこそ、保険に入ろうとか貯金しようとか健康的な生活を心掛けようとか、堅実な人生設計をするようになるのだ。

勉強しよう、資格を取ろう、土地も買って商売を始めよう、みたいに将来に備えようとすることはつまり、自身も向上させ社会を活性化させ経済も回す。

 

いま、不安を感じているなら

つまり、不安に感じるのはある意味で健全なんだし、良いことにもつながるわけ。家なんか燃えてもいい、なんて何一つ不安に感じず笑い飛ばせる人になりたくもないよね。
そういう私はあれから十年経ち、老後だの死だのは一層、近づいてきたんだけど。

誰だって不安、私も不安、みんな不安。と唱えてみる。息子もいるけど、あんたしか頼れないわ、ではなく、どの他人かは手助けしてくれる、と漠然と考える方が気楽になれる。

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