不登校児の親が抱える不安はほぼ「子どもの未来の心配」だろう。しかし見るべきは「目の前の子ども」ではないのか

不登校児の親として、体験したことや考えたことをふりかえるこの連載。

今回は、前回に引き続きスクールカウンセラーさんとの関わりについて考えたい。

前編記事▶▶「子どもが不登校になった」。嘆き悲しむ親が最終的に目指したい境地は多々あるけれど、その答えのひとつは

【仙田学・シングルファーザー小説家の子育てと社会日記】#5後編

 

「子どもが学校に行かない」ことのいったい何に、親はそこまで苦しむのか

まわりの子たちはすごいスピードで前に進んでいるのに、長女だけがひとり取り残されて、真っ暗なトンネルのなかで膝を抱えて座っているように思えて焦った。学力も人間関係も、行事やさまざまな取り組みから得られる体験も得られないまま、時間だけが過ぎていくと。

 

だが、逆に考えると、それは先のことだけを見ているがゆえにかられる不安ではないか。先のことだけを見るということは、いまの長女を見ていないということにもなる。今日という日は一生に1回しか体験できない。その今日を、長女はどう過ごしているのだろう。

 

そう思い至ったときに、もう長いあいだ、長女の笑顔を見ていないことに気がついた。

 

夜の10時には布団に入るのに、翌日の午後遅くまで、長いときには16時過ぎまで眠りから醒めない。起きてきても、ソファに座ってぼうっとしている。目に光がなく、顔には表情がない。

 

赤ちゃんだった頃は、笑っただけで嬉しかったのに。生きていてくれるだけで嬉しかったのに……いまはそうではないのか?

 

いや、いまもそうだ。生きていてくれるだけで嬉しい。

 

そう思えた途端に、それまで半年ほどつきまとっていた不安が、霧が晴れるようになくなった。

 

生きていてくれるだけで嬉しい。そうだ。学校に行くか行かないかなんて、どうでもいいと。

 

それよりも、長女が毎日笑って過ごせていないことのほうが遥かに大きな問題だ。やるべきことの優先順位も見えてきた。まずやらなければならないのは、長女を笑わせることだ。

 

親がこの「苦しみ」を手放すと、取るべき態度はおのずと決まる

それ以後は、なるべく長女を外に連れだすことにした。映画、温泉、お祭り、プール、ネットカフェ、旅行……。

 

学校に行っていなくても、堂々としていていいんだよと伝えたかった。生きてくれているだけで、パパは嬉しいんだよと。

 

やがて少しずつ、長女に笑顔が戻ってきた。

 

どうでもいい話に笑い転げている姿を見て、わたしは胸をなでおろした。たとえ学校に戻ったとしても無表情で、あるいは辛そうな顔で通うくらいなら、通っていなくて笑っているほうがいい。

 

思えばわたしも中3の1月期から学校に行かなくなったのだが、我慢して通っていたあいだの記憶はほとんどない。きっと以前の長女のように、無表情でほとんど笑うことのない日々を過ごしていたのだろう。

 

学校に行かなくなってからは、たしかに勉強はしなかったし誰とも会わずにいたが、図書館から借りてきた本を読んだり、文房具屋で道具を買い揃えてマンガを描いたり、映画を観たり、好きなことばかりしていた。ひとりぼっちだったが、楽しかった。その頃の経験は、いまのわたしを形づくる根っこのようなものだと思っている。

 

学校に行くか行かないかではなく、元気で笑って暮らせているかどうかのほうが遥かに大事なこと。

 

その考えは、不登校児の親としての姿勢の根幹となった。それは、わたしひとりでは辿り着くことができなかっただろう考えだ。

 

スクールカウンセラーさんが、長女とわたしの気持ちに寄り添って、言葉にならない思いを言葉にしていく過程を見守っていてくださったからこそ辿り着けた。

 

家族や友達ではなく第三者で、しかも子どもの心理の専門家だからこそ、特別な信頼感を抱くことができた。

 

親の最後の役割とは「波がきても動揺せずに落ち着いて見守れる自分を作ること」かもしれない

丸1年通ううちに、多少の波はあったものの長女は見違えるように元気になっていった。波がくるたびにわたしがいちいち動揺せずにいられたのは、多くのケースをみてこられたベテランのスクールカウンセラーさんが、広い視野のもとに受けとめてくださったからだろう。

 

長女が中2にあがるときに、スクールカウンセラーさんは異動になり、別の学校に移られた。長女は一度もスクールカウンセラーさんと話さないままだったが、わたしがスクールカウンセラーさんのところに通っていなければ、長女への接しかたは違ったものになっていただろうし、そのことによって長女の元気ではない時期は長引いていたかもしれない。

 

わたしは子どもの頃から折りにふれてカウンセリングを受けてきた。資格をもつカウンセラーさんはどなたも一定の知識や経験があるわけだが、相性のいい方とよくない方とでは、得られるものが全く変わる。その意味で、今回のスクールカウンセラーさんとは相性がよかったのだろう。

 

今回は、不登校児の親としてスクールカウンセラーさんに助けていただいたことをふりかえった。子どもの不登校は、親が抱えこむだけでは前に進めないことがたくさんある。スクールカウンセラーさんのほかにも、わたしは多くの方に頼りながら1年半ほどを過ごしてきた。

 

そのなかのひとつである、フリースクールについて、次回の記事ではまとめてみたい。

 

前編記事▶▶「子どもが不登校になった」。嘆き悲しむ親が最終的に目指したい境地は多々あるけれど、その答えのひとつは

■編集部より/8月21日(金)19時~「不登校ラジオ」vol.3インスタライブ!

 

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