恋は盲目。このまま進むべき?冷静になるべき?
ジブリの名作『千と千尋の神隠し』。
公開から何年経っても、主題歌『いつも何度でも』を聴くと、美しい世界や感動が蘇る人も多いはず。
そんな、すてきなテーマ曲の作詞をされた覚 和歌子さん。
このコーナーでは、彼女の手がけたタロットカード「ポエタロ」より、カードのテーマに沿って書かれたエッセイを一話ずつご紹介しています。
今回のカードは「火」
覚さんのエッセイに入る前に少し。
もっか進行中のその恋愛は、あなたの魂の切実な欲求が向かわせている
運命のようです。
あなたの向かう先が特定の人でなく、仕事や場所であるような場合も、
そのひたむきさには肯定的な波動を感じます。
大人になるほど、まっすぐ何かに夢中になるのはとても難しいこと。
そして、とても素敵なことでもあります。
心に従って進むなら、その道は間違ってませんよ、と背中を押してくれるカードです。
それでは、覚さんのエッセイをどうぞ。
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【火】激しくなくてどうする
母が子どもの頃、
町のはずれの低い山の中腹によく狐火を見たそうだ。
オレンジの炎がいくつも連なって移動していたという。
幽霊なんていない、
目に見えないものは信じない、
と言い切る母が言うから、
その分余計にリアリティがある。
今ほど町や村が電燈に照らされていなかった昔、
狐火は日本各地に見られたらしい。
長いときは500メートルも小さな炎が連なって動き、
ひとつが消えたと思ったら別の地点にまた現れる。
「狐の嫁入り」とも呼ばれて、吉事の前ぶれとされている。
自然発火現象だという説明より他に、
まだ科学的な解明がされていないと聞くと、
いきおい心はそそられる。
貧しい戦後の村の子どもたちの目に、
暗闇を行列していく灯火(ともしび)は
どんな風情で動いていたのだろうか。
揺らめく炎の不思議さは何を伝えていたのだろう。
夜は明るいことが当たり前になってしまった今では、
狐火とは、もう出会うことも叶わないだろう。
「火」は激しくもわかりやすいエネルギーのかたち。
はたから見れば「やめればいいのに」というような恋愛にかぎって、
その渦中にある人が引くカードでもある。
いつか炎は消えるかもしれないし、
激しければ激しいほど祭りの後の空虚感も深いだろう。
しかし、のめり込まなくて恋愛と言えるだろうか。
夢中にならなくて好き合う意味があるだろうか。
覚 和歌子
詩人・作詞家
山梨県生れ/千葉県育ち。早大一文卒。平原綾香、smap、新垣勉、夏川りみ、クミコ、ムーンライダーズなどの作詞で、多くの作品をCD化。NHK全国学校音楽コンクール課題曲、校歌、合唱組曲等の作詞なども多く手がける。01年『千と千尋の神隠し』主題歌『いつも何度でも(曲・歌唱/木村弓)』の作詞でレコード大賞金賞。詩集『ゼロになるからだ』(徳間書店)、『はじまりはひとつのことば』(港の人)、『2馬力』(ナナロク社)など。エッセイ、絵本、翻訳など著作多数。映画監督、脚本、舞台演出、朗読、自らのバンドを率いてのソロライブ、米国ミドルベリー大学日本語学特別講師など。詩作を軸足にマルチな活動を展開。
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「ポエタロ」とは?
「ポエムタロットカード」を縮めた名前、『ポエタロ』。
47枚のカードにはそれぞれ、美しくやわらかい日本語の詩と、
かわいらしくも不思議な魅力のあるイラストが描かれています。
使い方はいたって簡単。シャッフルしたカードの中から、
その時の直感で1枚、あなた自身のためにカードを引いてみてください。
1日のはじまりにその日の指針を得てもいいし、なにか大きなチャレンジの前、
なかなか超えられない壁に直面しているときに。
そのときの気持ちや環境にリンクした、やさしい詩とメッセージが、
次の1歩を踏み出す勇気や確信を与えてくれる不思議なカードです。
あなたの心強い味方になってくれるはず。
『ポエタロ いのちの車輪をまわす言葉』
覚 和歌子・著 石川 勇一(相模女子教授)・監修 大野 舞(Denali)・画 カード47枚 ガイドブック付き 3,780円(税込)/地湧社
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